2010年9月24日金曜日

Vol.76 芽吹き -2-6

4月7日 火曜日 晴天

「あなた 起きてください」
神山は何事かと思い起きると 玄関で祥子がドアフォンを使って
お越しに来てくれていた
「やあ おはよう」
「もう 携帯に電話しても出ないし 仕方ないから来たわ」
「ごめんごめん 遅くまで起きていたから ついつい」
「良かったわ 起きてくれて さあ そのまま来て
私の部屋で シャワーを浴びたらいいわ」
「うん そうするよ そうだ祥子さんのところにビールはある?」
「うん 大丈夫よ」
「ちょっとまって カードを忘れると大変だ」
神山は部屋のキーカードを持って祥子の部屋に移った
キッチンからは 焼き魚の匂いが香ばしかった
「わぁ いい匂いだ お腹が空いてきたよ」
「ほんと 嬉しいわ じゃ早くシャワーを浴びてきて
着替えはバスルームに置いてあります」
「うん」
神山は熱いシャワーの湯で体を引き締めると 髪の毛や
体を丁寧に洗い流した
バスタオルで体を良く拭いて 棚にはバスローブが準備され
それを羽織 部屋の戻ると祥子が
「さっぱりしたでしょ さあ腰掛けて」
朝のキスを交わすと 着席をうながした
祥子は冷蔵庫からビールを取り出し 二人のグラスに注ぎ
「じゃ 今日一日頑張りましょう」
「うん ありがとう がんばりましょう 頂きます」
神山は早速干物を口にしたが 丁度いい焼き加減で美味しかった
「祥子さん 美味しいよ 嬉しくなるな」
「ねえ その祥子さんは止めて 祥子でいいわよ」
「うん 分かった」
神山はビールを呑みほすと祥子はもう1本出して
「大丈夫でしょ」
「うん 頂きます」                          
祥子はビールを二人のグラスに注ぎ呑んだ
「あー美味しいわね 朝からビールって」                     
「はは 強いんだね」
「ううん その日の気分よ 今日は天気もいいし 気分も最高」
「なるほど それでビールを呑んでも大丈夫なんだね」
「ふふふ 食前酒ってところですね」
神山は目玉焼きを食べたが 黄卵が甘くて味が濃厚だった
「祥子さん この目玉焼き 美味しいね」
「ほんと 嬉しいわ これは名古屋コーチンの玉子なのよ
褒めてもらって嬉しいわ よかった」
「そうすると 新幹線で持ってきたの?これを」
「ええそうよ パッキンして持ってきたの」
「はぁー 貴重な玉子なんだ 味わって頂きます」
神山は祥子が作ったという煮物も頂いたが美味しかった
朝ごはんが終わると タバコが吸いたくなり 祥子に
「ねえ 祥子さん タバコを1本恵んでください」
祥子はニコニコして 棚からスモールシガーを取り出し
神山に手渡すと
「では ちょっと外で吸って来ます」
「いいわよ ここでも」
「でも いいよ」

神山は東向きのテラスに出ると 朝日を浴びて気持ちよかった
新宿方面を見ていると 自分はのんびりとこうやって
ある部分束縛されない仕事をさせて貰い ありがたいと思った
今 この時間はサラリーマンにしては 会社へ行く戦いが
始まっている時間だ 今日一日の作戦を練ったり ミスの
穴埋めをどうするか考えたり 満員電車のなかから始まっている
「どうしたの 呼んでいるのに」
「ごめんごめん ちょっと考え事をしていたのさ」
「気持ちいいわね ここで吸うのも」
見てみると祥子もスモールシガーをふかしていた
「さあ 支度をしようよ 祥子さん」
「ねえ 祥子さん じゃなくて 祥子だって言っているでしょ」
「ははは そうだね ごめんごめん 祥子 支度をしようよ」
祥子はニコニコしながらシガーを灰皿に捨てると部屋に入って
神山に抱きつくと 熱いキスを交わした





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