「私も失礼するよ 随分と楽しませてもらったよ ありがとう
そうそう 肝心なものを忘れていた」
筒井はカードを出すと神山に手渡し
「これはここのキーカードで 予備なんだ ウラに管理人さんの
連絡先が入っているけれど 紛失しないようにね」
「はい 困ったな こんなにカードが増えると わかりました」
「じゃあ 頼んだよ」
この時 倉元も立ち上がり
「おう 俺も失礼するよ ご馳走様 がんばろうな」
「倉さん ありがとうございます」
「そうですね 私も失礼します 山ちゃん 頑張って
明日9時の事は忘れないでな 頼んだよ」
「はい でも心配だな 目覚ましが無いんですよ」
「大丈夫よ ちゃんと買ってきてあるわ」
「由香里姫 ありがとうございます」
「ねえ 課長 私 ここを片付けてから帰ります」
「うん 悪いな そうしてあげて」
神山は4人を1階のエントランスまで見送り 部屋にもどった
「あーあ 疲れたよ」
「お疲れ様 でも広くて気持ちがいいお部屋ね」
由香里は冷蔵庫から新しいビールを出して神山に注ぐと
自分も呑みながら テラスに出て夜風に当たった
二人でビールを呑み干すと由香里が
「さあ 片づけをしまーす 手伝ってね」
「はーい 了解」
由香里はニコニコして神山に伝えると キッチンに入り食器を洗った
ちょうどその時に神山の携帯電話がなり
「山ちゃん 携帯電話が鳴っているわよ ほら」
水道を止めると確かに自分の携帯電話だった
神山はタオルで手を拭いて携帯を手にすると テラスに出た
「祥子です こんばんわ 今 大丈夫ですか」
「うん ありがとう」
「夕方実家に戻り 先ほどご飯を済ませました それで子供は
TVに釘づけになったから 電話をしたの」
「仕事はうまくいったの?」
「ええ スムーズに運んでOKですよ 横浜から荷物は運べた?」
「うん 順調 明日驚くよ 完全な事務所だよ」
「へぇー そうなんだ」
「それから 筒井さんに言われたけれど 祥子さんがここに
居る事は誰にも話さないから 安心してね」
「そうそう 会社でもごく一部の人間だけなのよ
連絡は携帯電話で済ませるでしょ だからわざわざ教える事無いって」
「なので 僕も知らぬ存ぜぬで通すよ」
「お願いしますね あっ 子供が来たわ それでは又 明日ね」
「うん 会社には何時なの?」
「一応 12時頃と伝えてあります 失礼します」
祥子は子供が直ぐ傍に居るのだろう 最後は丁寧な口調だった
携帯電話を机に置くとキッチンに入った
「誰からだったの」
「うん アルタの現場の人だよ」
「後は 食器の水を切って拭くだけです」
「ありがとう そうそうこのグラス 1万もするんだって」
「翔君ね そうよ 上代はね でもバーゲンで3千円だったわ」
「それでも3千円か 落とせないな」
「ねえ お酒ってなにがあるの?」
「日本酒を呑む?」
「ええ そうしようかな」
神山は先ほど開けた日本酒をグラスに注ぎ由香里に渡した
「ようやく 落ち着いたわね 山ちゃん」
「ははは まあ慣れるまでは 落ち着かないよ」
二人で乾杯をして日本酒を呑んだ
「ねぇ 神山さん ようやく二人っきりになれたわ」
「しかし 由香里さんまずいですよ そんな」
神山は昨年4月に上野店から移動をしてきた時に
銀座店の催事課で歓送迎会が行われた
出席者は催事課だけではなく池上店長はじめ取引先も含めると
壮大な人数になった
池上店長の肝いりということで 取引先は我先に挨拶を求め
神山もそれに答え盃が進んだ
歓送迎会を無事に終えたが 二次会に出る勇気はなかった
少し足がふらつき始めていたところ由香里が
「私 何処かホテル探して介抱してきます」
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