「それから このチェックしてあるところ 売場係長より
メーカーの営業さんが口うるさいところだ」
「へぇー でもこの図面には書いてないですよ」
「それは覚えるんだよ 売場に行った時や 会場で覚えるさ」
「そうすると 営業さんを抑えるんですね」
「うん 自分で可笑しいなと思ったら 先に手を打つんだよ」
杉田は言われた事を 図面に書き込んでいると倉元が
「おう 翔頼んだぞ 山ちゃんはたった一回で覚え 秋には
誰からも苦情が出なかったって言っていたぞ」
「そうですよね 昨年の5月と10月のバーゲンですよね
はぁー 凄いな 見習います」
そこへ由香里がコーヒーを持ってきて
「そうよ 5月の時だって 凄かったのよ 知っている」
「あの先輩が怒った事件ですか」
「そう あれだってみんなに聞けば メーカーさんが悪いわ
山ちゃんに全然非がないわよ」
「ははは 由香里姫 もういいよ 終わった事だから」
由香里は神山の行動を掻い摘んで話した
昨年5月のホテルバーゲン会場 開催日当日朝の出来事
商品陳列が終わった什器に不具合が無いか 点検していると
ある売場の什器の配置変えをしている メーカーの営業マンがいて
見ていると 扱いがぞんざいで商品を積んだまま動かしていた
神山が手伝う事を申し出て 商品を什器からおろすと
メーカーの人間が怒り出したが 神山も什器が壊されるので
同じタイプの什器に積まれている 商品を全て卸し始めた
「なんで 時間が無いのに 商品をおろすんだ 陳列するのに
時間がかかるんだぞ」
「商品を積んだまま動かすと 什器が壊れるんですよ」
「うるさい 早く商品を元通りにしろ」
「嫌です 早く什器を動かしましょう 陳列はそれからです」
二人が言い合っていると 売場係長が止めに入ったが メーカーの
営業マンは ふてくされて 何処かに消えたという事実
「へぇー そうだったんですか 先輩が悪い処って無いですよね」
「そうでしょ それで その営業マンが居なかったその一日は
今までの1.5倍の売り上げがあったんですって」
「へぇー 初めて聞きました 僕も気をつけます」
「おう 翔 さっき言っていた ホテルの図面が間違っているの
あれ なぜだか分かるか?」
「ぜんぜん まさか測ったんですか」
「おう そうだよ ご丁寧に測ったんだ それも5回かな なあ」
「ははは そうです 30m巻尺で5回位測ったよ 哲ちゃんと一緒に」
「へぇー 凄いですね」
「うん 5月の初日だけどね 寸法どおりに什器が並んでいるのに
導線が取れていないんだよ 280とか300少ないんだ
ほら消防がきた時のことを考えると 大変だろ そこで 少しずつ
つめて 通路は確保したんだ でも撤収をしたあと 哲ちゃんと
巻尺で計ったんだ そうしたらホテルの図面が間違っていたんだ
ホテルでは 壁をふかした後 修正していなかったんだ
だから この図面までは 前の図面を利用して書いていたんだ」
「そうすると ホテルの図面を修正しなければいけないですね」
「うん ただ時間が無くて 手をつけられなかったんだ」
翔は頷き 大きく図面に書き込んだ
神山は暫く仕事に集中したが
「先輩 アルタの高橋さんから電話です」
「うん はい神山です」
「山ちゃん 今 大丈夫ですか」
「うん どうしたの」
「うん ほらスケールモデルの事で今現場に来ているんです」
「ああ ありがとうございます」
「それでさ この床だけれど どうする?」
「っていうと ハツリを入れるかどうかでしょ そうだな僕は
既存のタイルの上にコンパネ入れてフローリングがいいと思うよ」
「やっぱりね そうだよな 実はね柱があるでしょ」
「うん 真ん中の柱でしょ」
「あそこさ 床が10下がっているんだよ ご丁寧に4辺とも」
「あじゃー 分かった これから大至急いくよ 待っていて」
「うん お願いします 助かるよ」
電話を切ると翔と倉元に
「翔 上原に行ってそのまま事務所だ」
「はい 分かりました なにかあったら携帯電話に入れます」
「倉さん 上原がちょっとやっかいな問題がでたんで 失礼します」
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