2010年9月18日土曜日

Vol.70 芽吹き -2-6

このような状況だけれど どうでしょうって聞きにきたのよ」
「そうか しかし3ヶ月って言っていたよ」
「えっ4ヶ月よ もう直ぐ5ヶ月だわ」
「えっ 4ヶ月、、、」
「だから中絶するとしたら4ヶ月がぎりぎりで それ以降に
おろすと 母体が危ないし 将来的なことを考えるなら今よって
でも 私は実際に産んでいないから それ以上は分からないのよ」
「まあ そうだね しかしゆっくりしているな 
課長と話したと思っていたんだけどな」
「うん 課長からも相当きつく言われ 反省していたわ」
「それで どうするって」
「うん 今はまだ分からないみたいで 悩んでいたわ」
「なに言っているんだよ 本気かよ」
「それで 貴方からも 話してもらえる?」
「だって 先日も話したし それ以上話せっても、、、」
「冷たいわね 同期でしょ ちゃんと別れさせてよ」
神山は由香里がなぜここまで市川のことで熱くなっているのか
よく判らなかったが 昨年のこともあるので
「じゃあ由香里から 話せばいいでしょ 相談されたんだから」
「まぁ 本当に冷たいわね いいわ」
由香里はぷりっとして 席を立ち喫茶レイを出て行った
一人になった神山は少し言いすぎたかと思ったが
市川に相談されたんだから 由香里も自分なりに考えて欲しかった

催事課の部屋に戻ると由香里の姿が見えなかったので
少し心配したが 自分の席に戻り仕事に集中した
「先輩 ニーナ・ニーナの林さんからメモです」
神山は翔からメモを貰うと
【ご相談したい事があります 至急連絡をください】
神山はこの内容に 上原の件が絡んでいると思ったが
デスクの電話機を握り 林の所へ架電した
「はい こちらはニーナ・ニーナです」
「私は催事課の神山ですが 林さんは在席されていますか」
「はい 少々お待ちくださいね 先日はご馳走様でした」
軽やかな口調の若々しい浜野由貴の声が電話口から聞こえた
「いや こちらこそ 何も出来なくて申し訳ない」
「今度はもう少し時間を考えて ゆっくりと呑みに行きましょう」
「はい ありがとうございます 待っていますね 
あっ 林に変わりますね」
「もしもし 神山さん 少しご相談があるのですが、、、」
「えっ 僕に相談なんて言われても 
出来る事と出来ない事がありますよ」
「ええ その上で お願いしたいのですが 
今 そちらにお邪魔しても構いませんか?」
「ええ どうぞ 僕のほうは大丈夫ですよ 空いていますから」
「分りました 直ぐに伺います」
神山は部屋に戻ってきた由香里にニーナ・ニーナの林が来る事を告げ
会議室に人を通さないよう注意した
メモ用紙などを準備し待っていると林が会議室に入ってきた
「申し訳ございません お忙しいところ 
それから 先日はご馳走様でした」
「いやいや 慌しい呑み会でしたね次回はゆっくりと呑みましょう」
挨拶を交わしているときに斉藤由香里がコーヒーを運んできた
由香里は林には作り笑顔でコーヒーを置き 
神山に対しては覚めたキツイ目付きでコーヒーを置いていった
(きっと この間呑みにいったときに何かあったんだわ 
いやらしい神山さんて 最低ね)
「すみません お忙しいところ」
「いえ 月曜日はそんなに忙しくないですよ 留守番ですよ」
「こちらが何時も無理をお願いしていますものね」
「まあ 出来るときは充分に飾りつけなどをさせて頂いていますが」
林が本題に入らないので少し重たい空気が流れたが
「ところでですね 私 昨日筒井から転勤を命ぜられました」
林が関を切ったように言い出した
先日 筒井が銀座店にきて林に内示を伝えたとの事だった
しかしその人事にまつわる事については一切 他言は無用であった
「はあ どう言うことですか?だって 林さんは
この銀座にはなくては成らない存在でしょ どうして?」
「まだはっきりとした時期は決まってはいないのですが 
御殿場の準備室に決まりました」
(えっ なんて早いんだ だってまだ上原が開店していないのに 
筒井さん何考えているのだろう)
神山は悟られないよう
「だけど 御殿場はまだ1年か2年も先の話しですよね」





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