2010年9月15日水曜日

Vol.67 芽吹き -2-6

「でもいいじゃない いろいろな面で優遇されているから」
「倉さんと一緒だ 大変だね」
「ねっ 大変でしょ」
神山の勤務する鈴やでは出向社員 派遣社員の場合
通常 現在の職級に2階級足した役職で勤務する事になる
職級は係長が6級7級で課長が8級9級となっている
例えば6級の係長が出向なり派遣なりされると その勤務先では
課長で勤務する事になる 本給は係長のままで手当てが僅かに上がる
今回 神山は8級課長なので通常は部長職で本給は8級のままになる
ところが9級課長を飛び越え本当の部長に命課されたのだ
いままで例が無く神山自身も聞いた事がない出来事だった
「じゃあ 誰か帰ってきた?」
「ちょっとお待ちください 部長」
由香里がかしこまった言い方をしたので誰かなと考えていたが
「奥村です 部長おめでとうございます」
「いやですよ そんな言い方 課長」
「しかし 驚いたよ そんな大切な命課を忘れるなんて」
「だけど 店長から頂いたのは1枚でしたよ」
「先ほど確認したが 秘書課長が店長に渡すのを忘れてそうだ」
「やっぱり だけどその場で頂いていたら ひっくり返っていますよ」
「そうだよな 俺を飛び越したんだもんな 凄いよ ほんと」
「そんないじめないで下さいよ」
「ちょっと待ってな 倉さんと変わるから」
「山ちゃん 凄いな みなびっくりしているよ」
「ありがとうございます」
「おう 俺も店長に確認したんだよ 9級の間違いじゃないのってね」
「ええ」
「そしたら 部長だ 倉さんの後釜 今のうちに作るって言われた」
「そんなに仕事していないのにな~」
「おう 兎に角良かった 頑張ってな」

神山は突然の出来事で驚いていると 高橋も誰かと話している
様子でこちらを伺いながら 頷いていた
「神山部長 内藤からです」
「はい 神山です」
「山ちゃん おめでとう 正真正銘の部長だね」
「はぁ 早いですね」
「うん 上原の件 頼みましたよ 部長」
「はい 了解しました」
電話を高橋に戻すと 高橋はまた頷きながら話をして終わった
神山は横の祥子を見ると やはり携帯電話で頷きながら
話していて 神山に電話を渡し
「筒井からです おめでとうございます」
「はい 神山です」
「山ちゃん 凄いな おめでとう 正真正銘の部長だね」
「ええ でも課長で残業で稼いだほうが いいと思っていますよ」
「なに言っているんだ 待遇が違うよ 待遇が
まあ 久保君と仲良くし 厳しく指導してくださいね」
「はい 了解しました」
神山は携帯電話を祥子に返すとみんなが
「部長昇進 おめでとうございます 良かったですね」
「ははは でもね本音は課長職で 残業や徹夜をすると
給料が凄い額になるんだよ そっちが良かったけどね」
高橋孝一が
「でもさ 待遇が違うでしょ やっぱり発言力も違うし
社内では出向肩書きが通用しないから 良かったじゃない」
「そうだね いくら部長でも社内では課長だもん うん」
祥子が嬉しそうな笑顔で神山に
「ご昇進 おめでとうございます お願いしますね部長」
「ははは そんなぁ 改まって言われるとお尻がムズムズする」
「まぁ」
みんなは大笑いしていると 女将が鮮魚のおつまみを運び
「昇進祝いです おめでとうございます
どうぞ召し上がってくださいね」
神山は突然の事だったが 
「はい ありがとうございます 
これからもちょくちょく来ますので お願いしますね」
「山ちゃん 美味しそうだよ まずは山ちゃんからどうぞ」
神山は高橋に薦められ 一番最初に箸をつけた
「うん 美味しいよ さあ食べようよ 久保さんも食べて」
みんなが鮮魚のおつまみを食べていると
神山の携帯電話がまた鳴った 出てみると熱海の金子亜紀だった
「神山さん おめでとうございます 凄いですね」
「やあ ありがとう でもなんで亜紀ちゃんのところまで」





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