「おう 頼むぞ」
あいにくと奥村課長が居ないので由香里に
「由香里さん 上原現場にはいってそのまま帰ります
っていっても事務所で翔のお仕事をしますがね ははは」
「はい 頑張ってね 林さんの件は大丈夫?」
「うーん だって僕がどうこうできない話でしょ 大丈夫ですよ」
神山は催事課の部屋を出ると 表通りでタクシーで上原に向かった
考えてみると 今日はタクシーに乗るのが これで4回目だった
(よかった 祝儀を貰っていなければ こんなに乗れないよな
近距離だと佐藤さんから貰った タクシー券も使いづらいし)
上原の現場に着くと高橋が待っていて手を挙げた
「やあ山ちゃん ごめんね 忙しいのに」
「なに言っているんですか お互い様ですよ それで」
高橋と神山は問題の柱に行くと神山が
「なるほど 確かに下がっているね そうするとタイルのままだと
コンクリの補修も出てくるものね コンパネにしようよ
床レベル出してさ 柱にアンコすれば問題ないでしょ」
「うん そうするよ うちのデザイナーもその方がベターだって
喜んでいたよ それに経費が減るし」
「うん では ハツリなしで決定 で モデルはどう」
「うん 製作部と誠二らが手伝っているから 明日にでも出来るよ」
「早いね さすがアルタだね」
「山ちゃんが来たんだから のんびりしていたら怒られますよ」
「ははは」
神山は笑うと 外との境にあるのガラスにいくと 手のひらを
ガラスのほうにだして 外光の明るさを調べた
「どう 山ちゃん 軽くいく?」
「あそこ?」
「うん」
神山は時計を見ると17時になっていた
1,2時間くらい呑んでも大丈夫とみて
「行きましょう」
高橋は店舗の鍵を閉めシャッターを下ろした
二人は駅前寿司に入ると 奥の座敷に案内され女将に
「鮮魚のおつまみと生ビール2つ」
「はい 何回もありがとうございます」
「ははは そうだね これからも一杯来るからね」
高橋と神山は顔を見合わせて 笑った
「ねえ 考ちゃん フローリングだと色は決まっている?」
「全然 一応候補は出してあるんだけれど」
「そうしたらさ 300角のサンプルを持ってきて貰えるかな」
「そうだね うん準備して現場に持ってきますよ」
「うん あそこね 照明も難しいよ だから早め早めに
手をうって進めないと オープンが6月になるよ」
「そうだよね さっきもさ 雨が降っているのに明るいでしょ
だから 考えていたんだ」
「うん この時間になると 結構暗くなっているけれどね
店内店舗と違って ちょっと工夫が必要だね」
「うん よかった山ちゃんが一緒で ははは」
「そんな なにも出ないですよ」
二人はお昼にここで食べたばかりなのに 箸が良く動いた
ゆっくり呑んでいると18時になり この時間になると
会社帰りのビジネスマンが多くなってきた
神山は高橋に
「今夜は ちょっと用事があるから もう直ぐ出てもいいかな」
「ごめんごめん そうしたら 事務所で待っているのに
お土産を作ってもらうから ちょっとだけ大丈夫?」
「うん 全然 そのくらいは大丈夫さ ほら店外催事とか
若いのが一人だからさ こちらで進めないとね」
「そうだね まだお中元じゃないでしょ」
「うん あれは5月に入ったら直ぐに始まるでしょ」
「そうか 5月はダブルで大変なんだ」
「うん でもデザインさえ出来れば あとは現場だから
考えようによっては 気が楽だよ」
二人が話していると 女将が
「お客さん お土産できました こちらに置いておきます」
「はーい ありがとう」
「じゃあ 考ちゃん 出ましょうか ご馳走様」
「いいえ 助かりますよ 仕事が速くなるよ ほんと」
神山は先に表に出ると 雨はすっかりあがり気持ちが良かった
高橋が会計を済ませ出てくると
「じゃあ また連絡をください」
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