5合炊き出来る炊飯器と業務用電子レンジがキッチンに置かれた
「凄いね 5合炊きの炊飯器とは 一人暮らしなのに」
「ええ 今はこの大きさが主流なので これにしました」
「そうだね 少しを炊くより一杯炊いたほうが美味しいもんね」
「そうですね」
田代は最新式の家電製品を一通りダンボールから出し終えると
空になったダンボールを一まとめにし
「では 僕は横浜に帰ります」
「うん ありがとう」
「そのうちに御殿場に行きましょう」
「えっ 御殿場?」
「ええ 御殿場の仕事は 東京と横浜が合同で行うのです」
「そうなんだ」
「勿論 チーフは佐藤部長ですが 高橋と私が分担して行います」
「大変なプロジェクトだね」
「ええ しかし慣れていますから大丈夫ですよ」
田代は神山と一緒に仕事が出来る事に喜びを隠せなかった
「それでは 失礼します」
「うん ありがとう」
神山はマンションの駐車場で田代を見送った
部屋に戻った神山はアルタの佐藤部長へお礼の電話を入れた
もって来たダンボールの開梱作業を終えると1時を廻っていた
造り付けのワードローブにジャケットを掛けたり
下駄箱に靴を並べたりと明日からの生活に備えた
全てが終わり一段楽したので 改めて部屋の中を見渡した
備品類や洗濯機 冷蔵庫など新品の家電製品も直ぐに使える
状態になっていた
取り扱い説明書も 透明ファイルに分かりやすく整理され
テーブルの上に置かれていた
冷蔵庫も大きな400Lタイプで こんなに大きな冷蔵庫に
なにを入れるのか 少し考え扉を開けると缶ビールが入っていた
一番手前の缶ビールにメモが張ってあり読んでみた
【山ちゃん びっくりしたでしょ 一杯呑んでください
それからベッドの脇にある 棚には当分呑めるお酒が
収納してありますので そちらも呑んでください アルタ佐藤】
神山は ベッドの横にあるホリゾントの扉を開くと
当分どころの騒ぎじゃないくらい お酒が入っていた
日本酒から焼酎 ブランデーやウイスキーまであらゆるお酒が
揃えられていた 驚いたのは神山が好きな銘柄ばかり揃えられ
これを考えると 相当期待されているのが分かった
神山は冷蔵庫から良く冷えている缶ビールを出しテラスに出た
(そうか 祥子さんの部屋が東向きだから こちらは西か)
テラスには ガーデンチェアとテーブルが用意されて
これも新品みたいで 足元には転倒防止の重石が置かれていた
神山はテラスのフェンスに立ち部屋を見ると 祥子のところと
テラスの奥行きが狭い事に気が付いた
この部屋はその分 部屋の奥行きが広くなっていた
神山がテラスで寛いでいると 大きなFAKが動き出しロール紙が
印字され 床まで出てきた
部屋に戻り確認すると 上原の平面図ですでに寸法まで記入されていた
早速アルタの高橋に電話をすると
「やあ 山ちゃん お久しぶり これからお願いしますね」
「考ちゃん こちらこそ 凄いね もう出来上がりじゃないか」
「いえいえ それはたたき台ですよ まだまだこれからです
それと この電話じゃなくて もう一つ電話があるでしょ」
「うん もう一台あるよ」
「そう それが業務連絡用の電話です なので業務の時や
鈴やさんにもそちらの 電話番号を教えて置いてください」
「なにかあるの?」
「ええ 電話機には通話内容の録音が出来るようになっていますが
業務用は留守番電話や 通話録音の容量が桁違いに大容量なんです」
「そうか わかった 次回からそうするよ
ほんと なにから何まで ありがとう」
「山ちゃんが手伝ってくれるとなれば たやすい事ですよ
そうそう 今日の予定はどうなっていますか?」
「これから上原でお昼を食べてから 銀座に出ようと思っているよ」
「山ちゃん渡したいものがあるので 駅前寿司で待って貰えますか」
「うん 分かったよ」
神山は電話を切ると カジュアルなファッションに纏め
バスルームのところに備え付けられている 姿見で確認をした
(そうか 秘密が分かると 遊ぶ事も出来るな)
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