2010年9月5日日曜日

Vol.57 芽吹き -1-5

「お客さん 起きてください お客さん」
「うーん うん ああ ごめんなさい」
「よっぽど疲れているんですね 着きましたよ 上原です」
「どうもありがとう」
神山は料金を払い降りると 傍にあるコンビニで
紙コップや紙皿 おつまみなどを買い込み 部屋に戻った
(しかし このタイミングで 筒井さんや佐藤さんが
なんで事務所の開設お祝いなんだろう? 分からないな)
神山は催事課から持って来た デザイン用具をお菓子の空き缶に
入れたまま テーブルのところに置いた
(机が無いと言うことは 机も欲しいな)
神山はそんな事を考えながら FAXや留守電をチェックし
冷蔵庫から缶ビールを出して呑み始めた
テラスで風に涼みながら呑んでいると気持ちが良かった
横浜と違い 小高い丘の上にあるので 天気がよければ
遠くに富士山が見えるかもしれないと思った
(見晴らしがいいと こんなにも気分が良くなるんだ)
チェアーに座り景色を見ていると ドアフォンがなった
神山は時計を見て17時を確認し 扉脇にあるモニターを見ると
筒井の顔が大きく映し出されていた
「はーい 今開けます」
1階のガラスドアを開け暫くすると ドアフォンが鳴ったので
扉を開けた
「やあ 山ちゃん 事務所開設 おめでとう」
筒井と佐藤が日本酒を差し出し 挨拶した
「ありがとうございます 早速 頂いています」
神山は缶ビールを見せ みんなで大笑いをした

「どうだい 山ちゃん なにか足りないものは出てきた?」
「ええ 仕事机がないので どうしようか考えていたんですよ」
「ああ もう直ぐ届くよ 格好いいのが」
「そうですか 良かった 実はPCや電話台のところでは
ちょっとメモを取ったりするには充分ですが ちょっと狭いかな
って そう考えていたんです」
「うん ごめんね 間に合わなかったんだ ははは
そうそう これね 事務所開設お祝いで 足りないものがあったら
これで買ってください」
佐藤は封筒を出すと 神山に手渡した
「実は内藤さんからも頂いているんですよ なので、、、」
「ははは あれは社長のポケットマネーです これは会社のお金
それに お金なんて いくらあっても不自由はないでしょ」
神山は佐藤に言われ 封筒を自分のバックにしまった
「山ちゃん 私からも お祝い金だよ もっとも佐藤さんより
全然少ないけれど 使ってください」
神山は筒井の封筒も丁寧にお辞儀をしてもらい バックに仕舞った

冷蔵庫からおつまみや缶ビールを出し キッチンの作り付け棚から
紙コップや紙皿を取り出し 大きなテーブルにセットした
佐藤が折りたたみの椅子を 用意すると筒井はおつまみを紙皿に
出して 一応準備が出来ると 椅子に座りビールを紙コップに注ぎ
「それでは 事務所開設 おめでとう かんぱーい」
みなで紙コップを上にあげて乾杯した
このテーブルは2.4m x 0.9mと非常に大きな作業テーブルで
乾杯するのには適していなかった  
表面は上質の化粧版で仕上げら 小口処理も細かいところまで
きちんと仕上げられていた
「なんか 落ち着かないですね これからここで寝泊りするって」
「まあ 我慢してください 最初だけだと思いますよ
そうそう 呑んで忘れる前に これを渡して起きますよ」
佐藤は立ち上がり小さな白い封筒を 神山に手渡すと
「タクシー券が入っています どんどん使ってください」
「すんません ありがとうございます」
「ほら 急遽横浜に行くとか 色々と大変でしょ 気にしないで
使ってくださいね」
神山はタクシー券もバッグに仕舞い 上原の話を進めた

「そうすると 上原の現場は月曜日から動くんですね」
「うん 昨日賃貸借契約をしたから 月曜日から現場に入れるよ
もっとも 現場実測で2,3回入っているけれどね ははは」
神山は高橋から送られてきた図面や 昼に渡された図面を見せた
その図面を覗き込んでいたニーナ・ニーナの筒井が
「山ちゃん この図面はあくまでたたき台なんだよ
それで これから山ちゃんの仕事なんだ まったく新しい
デザインにしても構わないし ここから派生しても構わない」





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