「あのさ 分かった もう なにも出ないよ」
「まあ そんなぁー ねぇー洋子さん」
「ふふふ 褒めているのにねぇー」
「おいおい 分かったよ もう それでこのファッションに合う靴を
探しにきたんだよ どうだろう いいのがあるかな」
この時間帯はお客が少ないのか 若い女性店員が3人もあれだこれだと
神山のところに靴を揃えてきた
「おいおい こんなに迷わせてどうするの 一押しはどれ?」
若い女性社員が真剣な眼差しで
「私は個人的にも 客観的にもこの靴をお勧めします」
そういうと 神山に選んだ理由を分かり易く説明した
「うん そうだね なかなか説得力があって分かりやすい うん あとは?」
明るい雰囲気になったこともあり 他の社員もお勧め理由を説明した
神山は最初に説明してくれた女性店員のお勧めシューズを買った
「専務 ありがとうございます ふふふ 嬉しいです」
「うん わかり易い説明だったよ 頑張りなさい」
神山は更に他の店員が勧めてくれた2足も一緒に買った
「まあ いいわね ねぇー洋子さん」
「ほんと ちやほやされると直ぐに買うのよね もう ふふふ」
「洋子さん この頃凄く綺麗になったわ 羨ましいわ ふふふ」
「そんなぁー でもありがと ふふふ」
「なんか 休みが無いって 本社人事で聞いたのよ 体を休めてね」
「うん ありがとう 神山も休み無しよ ほんとスーパーマンね」
「へぇー 大丈夫なのかしら」
「ええ 私も少し心配はしているけれど まあ本人が元気だから ふふふ」
「そうね 男は元気よね でも あのジャケットって素敵ね」
「ふふふ あれもねお仕事なのよ 今度ねNNでメンズを出すのよ」
「えっ ニーナ・ニーナでメンズ?」
「ええ 来年の4月発表よ その試作品を着ているのよ ジーンズもよ」
「へぇー お似合いね 素敵だわ」
「ほんと 常務や専務ったらスーツなのに ジーンズファッションでしょ」
「そうよね 中身がいいから着ているものも映えるのよ だってさ
いくら高いスーツ着ている部長がいても全然似合わないしね ふふふ」
「そうね ふふふ」
神山が精算を終わると二人に
「帰りますよ もういいですか ははは」
「はーい 分かりました でいくらだったの?」
「うん 3足で38万円もしたよ 参った」
「まあ 高い買い物ね」
「あっ 違う違う 予備が入っているんだ 4足だよ ははは」
「まぁー これだものね」
「じゃ洋子さん 頑張ってね」
「はーい では失礼します」
神山は珍しく紙袋を持って店内を歩いた
「ねえ そうしたら ビトロへいってバッグを見てみる?」
「ううん いい もう駄目だよ 見れば欲しくなるしさ だって
店員の勧め方が上手になってきたから 駄目だ ははは」
「ねぇー 以前は買うのにも大変だったのに この頃はねぇー」
「おいおい 何が欲しいの もう 部屋に戻るよ」
神山は洋子たち女性になにか買おうと婦人カジュアル売場を歩くと
係長や課長 部長までが神山の傍に寄ってきた
「専務 なにかお探しでしょうか?」
神山は客が少ない事を思い
「部長 今日は木曜日でイベントの立ち上がりなのになぜお客様が居ないの」
痛いところを言われた部長は何も答えられずにいると
「ほら 情報課が出来たんだから もっと集客しなければ
これだと店は潰れてしまうよ 僕を相手にしている時間があったら
集客の事を考えなさい いいですね」
部長はそういわれると神山にお辞儀をして退散した
「困ったものだ 情報課の活用がまだ上手に動いていないね」
「でも 出来たばかりだから 効果はもう少し時間が掛かるでしょ」
「うーん そうかな 勿体無い話だね」
次長室に戻ると催事課の奥村課長がやってきた
「どうされましたか?」
「山ちゃん じゃない専務 実は翔の理事昇進祝いと山崎さんの歓迎会を
今夜行いたいのです」
「えっ また急ですね」
「うん ごめん 店長の都合や副社長の都合を聞くと今日しかないんだ
そこで出席をお願いしたいんだよ」
「いいですよ で取引先は何処が出てきますか」
奥村はメモを神山に見せた
「うーん 抜けている会社がありますね」