不動産屋社長の勝間田が女将に挨拶をしていた
しかし神山はこの程度の打ち合わせで わざわざここを利用しなくても
会社などで出来ると思っていた
部下は早速スケールモデルをテーブルに置くと 勝又の説明が始まった
A案B案と二つ用意されたスケールモデルはどちらも良く考えられていて
亜矢子も迷っていた
A案の基本コンセプトは お互いの生活プライバシーを得る所にあり
B案はその逆で 直ぐに母親の生活空間に入れるところだった
具体的にはA案は 平屋で亜矢子が生活する棟と母親が住む棟が 渡り廊下
の空間で繋がっていて その渡り廊下の外側には日本庭園が設けられる
設計になっていた 一方B案は見える所は2階建の造りで傾斜を利用し
3階建ての構造になっていた 傾斜に対し細長く突き出た箱が
高いところでは1階しか見えず 先端に行くと3階が現れる 丁度
山の中に埋まっている 箱の家って感じになっていた
こちらは 南側斜面は各階全面ガラスになっていて 採光も充分だった
しかし 1階から上層階 或いは上層階から1階に移動するのに 部屋の
奥にあるスロープを使わなければならず そこがネックだった
神山は全てを聞いて考えていると亜矢子が
「どうなのかしら 私はA案の方がいいと思っていますが」
「うん B案のスロープで移動って いいと思うけれど 勿論
車椅子になったら 凄く重宝だよ でも平屋のA案のほうが 使い勝手が
いいし これをたたき台にして発展させる事が出来ます」
「そうね」
神山は勝又と亜矢子にスケールモデルで提案をしていった
「まず 北側以外は全面ガラスにすると どうですか?」
「ええ そうすると鉄骨が入らないんですよ」
神山は暫く考え
「なら この寝室部分の部屋を大きくして 鉄骨をいれ 北側のコンクリの
鉄筋で持ちませんか」
勝又は暫く考え 部下と話すと
「それなら 大丈夫ですね」
凹字の下部が北側で その部分を鉄筋コンクリートで仕上げ 出っ張った
処に真ん中に部屋を造る事を考えていた
「それなら 真ん中の部屋も鉄筋コンクリートで仕上げれば 耐震性など
充分でしょうか」
「うーん 耐震性より 天井に梁を一杯入れられるので 天井の安定は
良くなります 耐震はくい打ち本数です 勿論家全体の重量もあります」
神山は簡単なスケッチを書くと 勝又は頷きながらデザインを見ていた
「いいですね 神山さん この渡り廊下をダイニングとリビングに
するなんて うーん なかなか良いです そうすれば ゆっくりと
寛ぐ事が出来ますね」
「ええ どうでしょう 北側と真ん中の四角い所はコンクリート仕上げで
あとは全面ガラス でもメンテナンスが大変かな どう 亜矢子さん」
「ええ そうね でもお掃除を頼むように考えているので大丈夫ですよ」
「そうか 僕の所も入っているよ 正直高いところまで掃除出来ないしね」
「そうしましたら神山様 桜川様 これをたたき台にして 神山様の
アイデアを頂き 再度スケールモデルを製作します そこで神山様
あと 何かございますか」
神山は暫く考え
「このコアになる四角い部屋だけど 例えば寝室を5mx7mの大きさにし
4つ分だから 10mx14mと大きくなります 大丈夫ですか?」
「ええ 全然大丈夫ですよ かえってその方が杭が一杯入りますし」
「それから その4つの部屋の中は使い勝手がいいように 壁をふかして
柱を出さないようにしてください」
「そうですね 柱が出ると 無駄な空間が出来ますからね しかし真ん中の
太い杭のところでは 壁厚が50cmから70cm位になりますよ、、、」
「うん そうしたら 影響ないところでコンクリを薄くして その空間に
棚を設ければ良いでしょ ほらホリゾントにしてもいいし」
「そうですね その方が経済的です はい」
「ちょっと気になっているんですが いいですか」
「はい」
「この平らな所に建てると 玄関前の奥行きが狭くなると思うんですよ」
「ええ そうですね 大体ですが 15m位ですかね」
「そうしたら 家自体を斜面が始まる所まで持って行けば 奥行きが
30m以上になりますね」
「ええ 大体そのくらいです」
「それで 南側斜面の突き出た所は高床式のように杭が見えるようになり
どうでしょうか?」
「ええ 大丈夫ですよ 杭に化粧しますから でもこの傾斜なら そうだな
先端で 20cmか30cmの浮きになります なのでご心配ないですよ」
「そうしたら その部分をコンクリで隠した方が丈夫になりませんか」
「そうですね そうしましょう それで行きましょう」