2013年4月14日日曜日

Vol.1009 紫陽花 -15-60



「そうしたら このシーツを片付けて下にきてね」
「はーい」

スタジオで神山がビールを呑んでいるとカトリアーナが先ほどのドレスを
着て 階段を降りてきた
少し腰を意識して振り 膝も内側に入るようステップを繰り返した
見ていた神山はファッションモデルが 階段を下りてくるような錯覚を覚え
「カトリアーナ 綺麗だ 素敵だよ」
カトリアーナは一番下まで来ると 2,3歩前に歩き くるりと廻った
「うーん 素敵だ カトリアーナ 素晴らしい」
「ありがとう 神山さん」
ドレスデザインは先ほどのワンピースを基にして ウエスト部分に
簡単なベルトを付けただけだった
「うーん いいよ このベルトがアクセントになっていて 何とも言えない
そうだな 古代ローマ帝国のファッションって感じかな シンプルで
女性の特徴を引き出しているよ 凄いな」
「ふふふ これも祐子のアイデアよ 凄いわね 私も気に入ったわ」
「祐子 凄いね ファッションデザインって勉強していたの?」
「いいえ でも ほら雑誌や女性誌を見ていれば こんな風にしたらとか
ってあるでしょ その思いの蓄積ですよ」
「そうか しかし 今まで見た事が無い素晴らしいデザインだよ
パリからデザイナーを呼ぶ必要がなくなったね」
「まあ でも カトリアーナも気持ちよく着れるって言ってくれたわ」
「ハハハ そうだ これをそのままデザイナーに見せよう いいよね」
「でも カトリアーナが居ないと、、、」
「ははは モデルは祐子でも大丈夫だよ ちょっと着替えてきてごらん」
祐子とカトリアーナは祐子の部屋で着替えると 祐子が
「どうですか」
神山はカトリアーナと違い こちらはこちらでOKだった
「うん 素敵だ いいよ 凄く素敵だ」
「祐子 ちょっと廻ってくれる」
カトリアーナに言われ その場で廻るとカトリアーナは
「祐子 背筋を真っ直ぐにしてもう一回」
祐子は背筋を意識しながら廻ると神山は
「ハハハ もうりっぱなモデルさんだ 素敵だよ カトリアーナありがとう」
「祐子が着ても 充分に似合うわ お友達の中で 一番日本人らしい
顔つきをしているでしょ 私が似合うのは当たり前として 祐子がこんなに
似合えば お友達全員大丈夫よ 泰子さんが着たら 驚くわよ」
「そうか 泰子はフランス人形のように可愛らしい顔をしているからね
この衣装はどうかと思っていました」
「神山さん 大丈夫よ みんな似合うわよ そうすると生地は
シルクサテンで決まりね ボレロは不要でしょ だってホテルで
着替えるようにすれば 羽織る必要ないもの」
「だったら ここで着替えてタクシーで行けばいいじゃない
入り口で 注目度120%だよ 合同披露宴に華を添えられるし」
「そうね ホテルのメーキャップをここに呼んで支度すればいいわね」
「よーし 決まった しかし綺麗だな ラインが凄く綺麗だ うん」
「ぎゃはぁー 中身が分かっていても?」
「おいおいカトリアーナ それは無いよ もう」
みんなで大笑いをすると ビールで乾杯をした

「神山さん シーツを2枚駄目にしました ごめんなさいね」
「ははは あれは特注品だよ 明日アルタの内藤さんに話しておくよ
しかし 思い切ったことをしたね」
「ごめんなさい 私ってこうと決めた所って 特に普段から気にしている
そんな所が目の前にあると どうしても実行したくなるの ふふふ」
「そうだよね プールの会員もそうだものね でもいい事だ
そうか 祐子 ファッションデザインを勉強しないか どうだね?」
「ふふふ 駄目よ お遊び程度で デッサンが出来ないもの」
聞いていたカトリアーナが
「祐子 勿体無いよ センス抜群にいいよ 勉強したらどうかしら
ほら それにここのお仕事が終われば自分の時間でしょ 出来るよ」
「うん そうだよ 眠っていたら起こしてあげればいいんだ
まずは挑戦だよ NNに聞いてみるよ 驚くよきっと」
「本当にいいんですか ここのお仕事のほかにそこまでして」
「うん ここの仕事がきつくなったら辞めてもいいよ ただし
後継者をちゃんと探してね お願いします」
祐子はその言葉を聞いたとき 俯き
「そうしたら 私 ここを出なければいけないんですか?」
神山は暫く考え
「いや 祐子の自由だ まだ先のことを考えないで 出来るところから
チャレンジだよ 僕はそのデザイン感覚に惚れました ははは」
祐子はほっとしたのか 明るい顔に戻り神山にキスをした
「私 神山さんとずーっと一緒に居たいの 分かってください」
「あーあ 祐子ったら 私だって我慢しているのに もう いいわね」
祐子とカトリアーナはケタケタ笑いながら 神山にキスをした






.