2012年11月16日金曜日

Vol.860 紫陽花 -8-53



レポート用紙を眺めてみると どこのブースでも使えるようだった
神山はこれをマニュアルにすれば 今後の仕事にも使えると判断し
明日にでも洋子に修正をしてもらい 完成させようと思った

神山は蒼いBMWをガレージに仕舞うと祐子の出迎えを受けた
「おいおい キスは分かったよ」
「だって 待ちどうしかったんだもの いいでしょ」
「さあ 着替えをするからね」
神山は2階の主賓室に入ると 簡単にシャワーを浴び着替えた
下に行くと祐子が待っていて
「今夜は何処に連れて行ってくれるんですか?」
「うん 上原の駅前寿司に行こうと思っているよ」
「わぁー 嬉しいわ」
神山はタクシーを呼ぶと ソファーで寛いだ
祐子とビールを呑んでいると 門扉にタクシーが着たので部屋を出た
上原で降りニーナ・ニーナブティックの前を通ると由貴と目が合い
神山はご飯を食べる格好して 駅前寿司を指差すと由貴は頷いた
暖簾をくぐると女将がいつもの様に 奥の座敷を案内され
早速 神山は生ビールと注文した
「ねえ 神山さん 私ね今日は午前中にお仕事を済ませて
午後からはスカイハイホテルのプールに行ってきたの ふふふ」
「そうか どう 泳ぎやすかった?」
「ええ それでそこの会員になっちゃった ふふふ」
「へぇー 凄いね」
「ええ だって1時間800円でしょ 3時間泳ぐと2400円ですよ」
「えっ 1時間800円もするのか あそこが」
「だから 子供や家族連れと言った 普段良く見かける光景ではないわ
なので 泳ぎやすいし 気持ちがいいわよ ふふふ」
「で 会員券は幾らだったの」
「ええ 正会員で100万円したけど 入会したわ」
「えっ 100万円 おいおい 凄いなー」
「だって ドリンクや軽食が無料なの 1回いくと5千円掛かるもん
それに同伴者 1名まで正会員と同じ待遇よ だから神山さんも
一緒に行った場合 全て無料なの いいでしょ ふふふ」
神山は一石二鳥の金額にしては まあまあ仕方が無いかと思い
バッグから100万円を取り出し
「じゃ これを渡しておきます 会員権の補充だよ」
「わぁー ありがとうございます」
「でも 会員になるとパスポートをぶら下げてプールに入るの?」
「ううん 受付でパスポートを見せると ICが組み込まれた
ブレスレットかショーツの脇に挟む布を渡されるのよ
それで着替えた時に 渡された物を身につけていればいいの」
「へぇー おしゃれだね」
「ええ ドリンクの時もわざわざ財布を取りに行かなくてもいいし
ロッカーも会員になると 間仕切りされていてシャワー付きなの」
「へぇー 凄く豪華だね」
「それからね 化粧室もあるんです ほらドライヤーなんかがあるわよ」
「へぇー 普通見かけないよね」
「そうでしょ お風呂屋さんより綺麗だったわ」
二人が話しながら食べたり呑んだりしていると
ニーナ・ニーナの浜野由貴と安田桃子が入ってきた
祐子が気が付き 手を振ると由貴と桃子も手を振って答えた
「わぁー 神山さん こんばんわ 誘っていただいてうれしいわ」
桃子と由貴は神山の頬にキスをすると 神山達と反対側に座った
「さあ どんどんと食べてね」
「はーい」

由貴と桃子は神山と一昨日会ったばかりなのに 仕事の事や
ゴルフの事など 話をして盛り上がった
ここでも美佳の話が出たが 神山は決して自分から言わなければ
向こうも変な詮索をしなくなるよと みんなに伝えると
由貴や桃子は頷いて 自分達から話題を変えた
「ねえ 神山さん 先日久保チーフが 棚の飾り付けを変えたんですよ」
「うん いいことだね 最初に話しをしてあるんだ」
「それでね お客様でグラスが凄く気に入られて 銀座を紹介したんです」
「そうすると グラスが良く見えるように工夫したんだね いい事だね」
「ええ それでそのお客様が又来られて ありがとうって 言われました
勿論 ディスプレイのグラスは無かったんですが 1客7千円もする
インポート物を購入されたと 言われてましたよ」
「へぇー そうか うちは良い物があるけれど 訴求力が無いのかな」
「そうですよ お客様はちゃんと見ています だからチーフも喜んでました」
「うん 先ほどは気が付かなかったけれど 帰りにでも見てみるよ」
「ええ この頃チーフも明るくなって 私も元気を貰っています」
「うん 由貴と桃子が頑張っているから 嬉しいんだよ 良かったね」
神山は祥子と会わなければいけないと思いながらも なかなか時間を
作らなかったが いい材料が出てきたので 会いたくなった
もしかしたら どこかに別な男が出来て 明るくなったのか、、、
兎にも角にも時間を作り会おうと思った





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