2012年11月3日土曜日

Vol.847 紫陽花 -8-53



神山は二人に見送られ 蒼いBMWで銀座に向かった
次長室には9時ごろ着き コンペの後片付けなどをしていると
直ぐに30分や1時間経ってしまった
次長席の周りが綺麗になり 仕事をしようとした時 電話が鳴った
「こちらは警備室ですが 神山次長さんはいらっしゃいますか」
「はい 私ですが」
「おはようございます 実はお中元が一杯で取りに来て欲しいんですが」
「そうか 分かりました 伺います」
神山は隣の催事課から台車を借りる時 たまたま杉田に捕まり
「先輩 お疲れ様でした 凄いスコアでしたね」
「うん たまたまさ でも早いな」
「ええ 昨夜 美佳から聞きました」
「そうか 上手く行っているみたいだね」
「それで 実は少し相談にのって頂きたいんですよ」
「うん いいよ そうしたら 荷物を持ってきてからにしようか」
「大丈夫ですか」
「うん いいよ」
「では お電話をお待ちしています」
「うん じゃ 借りるね」
神山は杉田と別れると 別棟にある警備室に向かった

「はい 神山次長 これだけあるんですよ」
警備員は段ボール箱に入れて 整理してある中元の山を見せた
「はぁー 凄いなこれは」
元々警備員が待機をしたり 小休憩で使う休憩室が中元のダンボールで
休憩できない状態になっていた
神山は5往復して警備室から運ぶと 今度は次長室がダンボールの
山になり どこに動かしても 邪魔になってしまった
「参ったなぁー しかしこれから本格的なお中元かー」
神山はビールを呑むと 杉田に電話をして
「はい 杉田です」
「うん 今だったらいいよ こっちの部屋に来る?」
「いいんですか 伺っても?」
「うん どうぞ」
電話を切ると 杉田が次長室に入ってきた

「わぁー どうしたんですか」
「ははは お中元さ 困ったよ そうそう内緒だよ いいね」
「ええ それは 内緒ですけれど 凄いですね へぇー」
神山は冷蔵庫から缶ビールを取り出し 杉田に渡すと
「頂きます」
「うん 僕も多少は話を聞いているが」
「ええ 両親も妹も僕が婿になる事に 賛成なんですよ」
「うん いいじゃないか 何が不満なんだ」
「ええ そうすると今度は妹が 婿を取らないといけなくなるでしょ」
「うん そうなるな」
「そうすると 妹の自由を奪うようで なにか後ろめたさがあるんです」
「そうか そこを悩んでいるんだね」
「ええ 美佳さんとも上手く行くと思っているんですが そこだけです」
「翔 美佳さんの場合は お兄さんが亡くなっただろ
でも 翔の妹さんは 話しをしようとしたら 直ぐに話せるじゃないか」
「ええ そこも考えていますよ でも どうなんでしょうか
実際問題 僕が居なくても大丈夫だと思うんですよ
でも なんか妹を一人にするのが 可哀想な気がして、、、」
「翔 妹さんももう子供じゃないよ もう少し大人として見ないと
それに 翔の問題じゃなくて 妹さんの問題だろ
これから未知の事を くよくよ考えても時間の無駄だし
それに 返事を待っている美佳さんに対しても 失礼になるよ」
「そうですね うーん 未知の事をくよくよ考えないか、、、
分かりました 先輩 もう一度妹と話してみます」
「うん 僕は大丈夫だと思うよ かえってスッキリって言われたりして」
「またぁー 先輩 それは無いでしょ もう」
「ははは 結構そうかもしれないぞ まあしっかり相談しなさい」
「はい ありがとうございました」

神山は翔を見送ると お中元の整理に追われた
包装紙に張ってあるお届け伝票を 綺麗に切り取り纏めて 包装紙も
ダンボールに捨てていくと直ぐに一杯になった
商品をギフトボックスからだしダンボールに入れ替えても
それでもダンボールの山は無くならなかった
神山は次長席の上を綺麗にすると 仕事に集中した
11時30分を過ぎた頃に 洋子が出勤してきて
「まぁ どうしたんですか おはようございます」
「ははは お中元さ 困ったもんだよ 朝から一仕事さ





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