「やあ亜矢子ちゃん お久しぶりです 覚えていますか
以前 沼津のあばさんのところでお世話になっていた
大竹健次郎です 大きくなられましたね」
「あっ あの大竹さん そうですねもう20年位経つでしょ」
「相変わらずお綺麗ですよ それでしたら由紀枝を安心して
預けられます 今回はありがとうございます」
「おじさん 知っているの 亜矢子さんの事」
「うん 亜矢子ちゃんが小さい時から知っているよ よかった
では亜矢子ちゃん 由紀枝をお願いします 今夜は彼女が恥をかかないよう
腕によりを掛けて頑張ります では 由紀枝頼んだよ」
「はい 分りました」
神山と亜矢子は席に座り由紀枝にビールを注文した
ニコニコして昨夜と変らない動作だった
ビールが運ばれると由紀枝が最後ですからと言って神山と亜矢子の
グラスビールをに注ぐと丁寧にお辞儀をして厨房に戻った
すぐに先付けが運ばれて由紀枝が説明をしてくれた
神山は特別な感情を持たないで平常心で対応し美味しいと言って食べた
亜矢子が
「ほら 覚えている 一番最初に来た時に切り身のお刺身が美味しくて
ここの板さん良い腕ねって 言ったの」
「うん 覚えているよ」
「やっぱりおじさんの仕込みが良かったのね 美味しかったもん」
「あの 大竹さんは何時ごろから居たの」
「始めは定かじゃないけど 小学校の頃も居たわよ 父が亡くなって
暫くして居なくなったのかな やはり辛かったみたい
父と仲が良くて良くおじさんと3人で呑んでいたわ
今度行ったら教えてあげようっと おじさんも心配していたから」
「そうか 繋がりがあるんだ 狭いなほんと」
話していると由紀枝が食べるタイミングを見ながら運んできた
神山は刺身を食べる時に亜矢子に
「では 頂きます」
誰にとは言わずに味わって食べた 亜矢子も捌きが上手だと思っていた
神山は由紀枝にワインを注文した 由紀枝は何時注文されてもいいように
ワインクーラーを用意して待機をしていた
グラスを亜矢子と神山の前に置いて神山のグラスに少し入れて
味見をしてもらってからグラスの半分くらい注いでくれた
亜矢子は神山に
「由紀枝さん 緊張しているけど間違いは無いわ 大した物ね
だって これが試験だと分っているわよきっと」
「えっ テストをしているの」
「えっ 今ごろ何を言っているの 当たり前でしょ これでお給料が
決まるのよ わざわざ向こうで行わないわよ 私が決めたから
責任は全て私にあるので 当然でしょ」
「そうか なるほどね」
「もう なによ しっかりしてください」
「うん わかった でも大竹さんて亜矢子の辛さを見て由紀枝ちゃんの
辛さ見て なんか凄いね 本人さっき少し涙ぐんでいたね
亜矢子が成長したのをみて安心したんだろう」
「そうね 20年ぶりだもの 前に話したけど卓球の部活を
終ると良く叔母さんの処でおやつ代わりにお刺身を食べていたでしょ
だからきっとその時を思い出したんでしょ 懐かしいわね」
神山は少し遅いペースだがリズム良く食べていた
亜矢子も大竹に気を使ってリズムを崩さないよう食べていた
温度が難しい煮物も熱くなく運ばれ二人は美味しく食べられた
焼き物は一夜干しの焼き魚とサイコロステーキが運ばれて
これも美味しかった 神山は牛肉のナマを少し食べたくなったので
由紀枝を呼んで
「すみません この牛肉を生で少しでいいんだが頂けますか」
「はい 少々お待ちくださいませ 只今確認をさせて頂きます」
由紀枝は厨房で確認するとニコニコして神山に
「神山さま 確認をしましたところ ご用意が出来ますが
たれは 如何致しましょうか」
「うん ニンニクおろしとしょうがおろし それを小皿にちょこんと
のせてください しょうゆで頂きます」
「はい 畏まりました 少々お待ちくださいませ」
由紀枝は言われた事を厨房にしっかりと伝えていた
亜矢子は
「凄いわね 貴方の言った事を正確に伝えているわ 凄いわ
でも 本当は注文を聞いたら復唱して確認するんだけど そこかしら
あのニコニコで注文をしていたらよほどじゃないと怒らないわね」
亜矢子のチェックは厳しかったが人間性や総合的にも押さえていた
由紀枝が出来たのでテーブルに置くと
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