2011年9月1日木曜日

Vol.418 薔薇 -4-29



「うん 安いよ」
神山は小声で
「あそこは僕の上司の紹介なんだ普通は一人3万を超えるんだ」 
亜矢子も小声で
「そうなの わかったわ」
「また お店のお客様でもあるんだよ そんな訳で多少
優遇してもらっているんだ」
「そうなの」
話していると熱海の駅ロータリーに着き亜矢子が先に下りた
「ここで待っていて そうだ あっちはタクシーが来ないから」
神山はまた歩かなければ行けなかったので タクシーで
フェアレディーZを駐車しているホテルまで行った
早速周りを点検したが異常なかったので乗り込んだ

直ぐに発車して熱海駅ロータリーに入ると亜矢子が寄って来て
「ふぁ~凄い車ね 気を付けてね また電話します」
「うん 橘さんの事何でもいいからメモして教えて
何か 解決策があると思うし 後は椿さんに話す事だ
自分で抱え込んでも解決はしない いいね」
「はい 今日にでも 支配人に話します ありがとうございます」 
「うん では」
神山は昨日来た道を帰った
小田原で有料道路に乗って少しスピードを出せたが さすが雨なので
控えめに走った それでも100を下回る事無く走れた
神山はこの車だったら雪以外なら500km走っても大丈夫だと感じた
公表数字では燃費 リッター8.2kmとなっていて
満タン72リッターなので数字上は500kmを越すが神山の運転だと
半分とみておけば大丈夫だった
気持ちよく走っていると銀座につき地下の駐車場へ入庫した
次長室のビルまで僅かだが濡れてしまった
熱海を9時30分に出たからちょうど一時間かかった
ビルに入ろうとするとしまっているので 定休日と気がつき
カードをスキャンさせ暗証番号を逆さから入力すると開いた
次長室へも同様の操作ではいると洋子が来ていた
「やあ おはようございます 早いね」
「おはようございます ええ 貧乏性ですかね 家でゆっくり出来なくて」
神山は洋子の躰を思い切り抱きしめた
「だめです お見舞いが済んでからです」
「わかった 洋子 傘 どこかにないかな」
「そうしたら 警備室で借りとけば」
「あと 濡れた傘を入れておくビニール袋はある」
「それも警備室で借りたら」
「あの黄色いのを?」
「ええ 仕方ないでしょ」
「わかった 何か飲み物はある?」
「ええ コーヒーがあるわ 仕度しますね」
洋子は冷蔵庫からペットボトルのコーヒーを取り出し
コップに注ぎ神山に渡した
ソファーに座った神山はタバコを吹かしながら
「その後筒井さんやニーナ・ニーナから連絡はあった?」
「いいえ なしです それと確認しましたら 
安田病院の新館で間違いありません」
「そこの病院は新館と本館を間違えると偉い事になるからね
僕は以前見舞いに行ったけど 間違えたので建物でてぐるりと1周
ほんと 分りづらいね」
「ええ 私も間違えて大変でしたよ」
「なんかさ 赤い建物とか蒼い建物とかと表現してくれると助かるな」
洋子は笑いながら聞いていた
「さあ それではいこうか お見舞いの袋は?」
洋子が神山に手渡すと
「ふぁ~ 綺麗な字だね うん見直した 
英語で書かれたらどうしようと思っていたよ」
洋子は笑いながら
「そんな事 するわけ無いでしょ もう」
「わかった ごめん ではいこう 今度は運転してくれる?」
「ええ 嬉しいわ」

二人はビルをでて 駆け足でホテルの地下駐車場へ入った
フェアレディーZに乗り込むと洋子は警備員室で傘を借り
直ぐに文京区にある安田病院の新館へ車を走らせた
車を駐車場に止めると傘をさして病院へ入った
筒井の病室は直ぐに判り入り口で扉をノックすると中から女性の声で
「どうぞお入りください」
と言われ入った






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