2011年4月18日月曜日

Vol.282 青葉 -7-21


「お願いします」
二人で 挨拶をし現場を後にした
タクシーを拾うと銀座鈴やと告げた 洋子が
「しかし クーラーBOXで副社長に会いにいく人見たこと無いわ」
洋子は もう笑いが止まらなかった
神山はクーラーBOXの中を確認した
しめ鯖の切り身 がり 冷酒 ビール 氷が入っているので冷たかった
そんな事をしていると銀座に着いた
本社に入ろうとした時 洋子が
「ちょっと まってください 今 確認します」
洋子は秘書室に電話し確認したら 待っていらっしゃいますとの事
それと神山さんのことで 大騒ぎになっているとの事 早く着てと言った
「あなた 何かした? 本社も大変ですって」
「いや なにもしていない」
「そうよね まだ関係ないし」
「えっ」
神山は聞いていたが 耳に入らなかった 
「さあ 行きましょう」
エレベーターに乗ると7階のボタンを押した
元気の無い神山に 
「大丈夫よ なんでもないわよ 心配する事ないわ」
そう言われても心配だった 上原のお酒が飛んだ
7階に着き 事務室に入ると
「ふぁ 神山さんだ」
と誰かが叫んだ そうすると事務員が一斉に拍手した
神山は何がなんだか訳が分らず クーラーBOXをさげ
秘書室に逃げ込んだ 洋子が理由を聞いてみた
「アルタさんから先ほど連絡があって 驚かないで 神山さん 常務よ」
「えっ 常務?」
神山はなんだか分らず 立っていると 洋子が背中を押して
「さあ 入りましょ」
「うん」
「良かったじゃない きっとさっきの件でしょ」
「そうかな」
神山はドアを丁寧にあけると 副社長に一礼し  
「催事課 担当部長 神山 龍巳 です」
挨拶すると お辞儀をした
「おお 君か 有名な神山君は」
「はい 有名税も払っています」
神山は言ってからしまったと思ったが遅かった
「そうだな 有名税は大変だよな ところでなんだ」
「はい 本日お伺いましたのは 30日の命課に対しての御礼を
申し上げたく 伺いました ありがとうございます」
「うん わかった ところでそこに置いた クーラーBOXはなんだ
ここは 釣り道具屋ではないぞ」
「はい 田所秘書に聞いた所 お食事をされないで 
お待ちいただいてると聞きましたので お昼をお持ち致しました」
「うん 分った それでは頂こう」
「はい 分りました」
神山は洋子から包み貰い クーラーBOXを開け 
しめ鯖の切り身 ビール 冷酒を差し出した
それを見ていた副社長は洋子を見てにやっと笑い洋子も笑みを浮かべたが
神山は見ていなかった 切り身の包みが上手に開かず焦っていた
それを見ていた洋子が手伝いようやく開いた
「手間取って 申し訳ございません こちらが美味しいしめ鯖です
どうぞお召し上がりください」
「うん分った がしかし 神山君 少しいい匂いがするな」
「はい 仕事です 今度におわないビールを探します」
神山はもうどうでもなれと思った
訳の分らない アルタの件があったので 普段の調子が出なかった
「そうだな ワシも欲しいな しかし 度胸があるな
お礼の挨拶の時に 酒を呑んでくるとは 初めてだ君は」
「はい 前代未聞ばかり 驚かせすみません」
又お辞儀した  なかなか頭を上げない神山だった
お許しの言葉が出るまで顔を上げてはまずいと思っていた
「おじさま もう許して 先ほども上原の現場で仕事を纏めたわ
だから もういいでしょ おじさま」
神山は耳がどうかしたのか 自分が可笑しくなったのか
顔を上げて見たかったが 頭を下げていた 暫くすると時田 清三郎が
「神山君 いや神山さん どうぞ頭を上げてください お願いします」
神山はこの言葉も本当の副社長の声なのか耳を疑った
まだ頭を下げていると 洋子が後ろから
「神山さん 時田副社長が頭を上げてくださいって」
下を向いたまま





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