「洋子です すみません この電話番号が私の携帯です 登録お願いします
それと 遅くまでありがとうございます おやすみなさい」
「うん お休み こちらこそありがとう では明日お願いします」
「は~い 分りました」
電話の声は明るかった 少し安心したが考えていた
「お客さん 着きましたよ」
神山はチケットではなく千円札を出しおつりを受け取った
自分の部屋に入る前に祥子のドアホンを鳴らした
祥子は直ぐに出てきて 抱きついて来た
「あなた 凄いじゃない 理事ですってね 凄いわ~」
祥子は風呂には行った後でもうガウンになっていた
「うん 今日突然で もう地球がひっくり返ったみたいだった
それで 部屋に行って戻ってくる 30分くらい掛かります
至急しなければいけない事が有るので ごめんね 待っていて」
祥子は嬉しいのか30分を全然気にしていなかった
神山は部屋に戻ると お祝いのFAXが何通か着ていた
ニーナ・ニーナの筒井 アルタの内藤社長 内藤夫人
ゴテンバ グランド インの椿支配人 椿夫人
まあ 内示だからこんなものかと思い 先にシャワーを浴びた
中元の資料と店外催事の資料 上原の明日使う資料
あと明日持っていく取引先銀行のカードと印鑑を用意し袋に詰めた
忘れ物がないか 確認をして部屋を出て祥子の部屋に入った
「凄いわ おめでとうございます」
そう言うと 祥子は珍しく お辞儀をして喜んでくれた
神山は今日一日の出来事をかいつまんで話をした
「そうすると 日経新聞に明日出るかしら?」
「分らないけど プロジェクトが大きいでしょ 影響力を考えると
朝刊に出るんじゃないかな それともあさってだね 裏をとってからさ
なにしろ たまたま記事を見つけたって処なんだよね」
「その記事を見なければ 理事は無かったんでしょ」
「うん だけど遅かれ早かれあったでしょう 多分ね」
「うん アルタの内藤さんが僕を欲しがっているからさ」
「そうか しかしこの若さで理事は居ないでしょ」
「うん 東京本社次長職も初めてだし 何から何まで前代未聞の出来事です
身内でも驚いている だから店長が僕の事を買ってくれているのと
副社長が前向きに考えてくれたおかげさ」
祥子はソファーに座りビールを呑んだ
「ねぇここに座って お願いだから」
神山もソファーに座ると キスをした 祥子は改めて
「ねぇ上原の現場だけどいい」
「うん いいよ そのつもりだから」
「造花とか用意して飾付けたいんだけど やはりプロの方がいいかしら」
「そういう事か だって予算ないでしょ どうにも動けないな
例え自分達でデコレーションしても ランニングがあるし
造花は季節で変化をつけていかないと汚くなるし 保管も大変だよ」
「そうよね 何かいい方法ないかとスタッフとも話したの
それで出てきた案が造花だったわけ ほら銀座でも造花で飾り付けている
売場が一杯あるでしょ それでいいアイデアだと思ったの、、、」
二人はアイデアを出す為色々と考えていた
神山がスケッチをして色々とアイデアを出すが予算の関係で
難しく壁に突き当たってしまった
神山はビールが無くなり冷蔵庫から取り出しグラスに注いだ
祥子のグラスに注ぐ時 照明の関係かグラスから綺麗な虹が
テーブルに模様を描いていた
「ねえ今 気が付いたけど 造花は買ったの?」
「ううん まだよ」
「だったら こうしよう 僕はあそこで造花を使うのはあまり感心しない
限られた空間だから余計だ そこでね グラスとビー球を用意して
それを飾付けるんだ」
手元にあるグラスの効果を見せながら 角度を変えたりし
神山はメモ用紙に簡単なスケッチを書いた
見える効果など分りやすく説明すると祥子の顔が明るくなり
頷きも多くなり喜んだ
「分ったわ そうね 銀座のように店内にある処は入り口にポイントを
おかなければ何のメッセージも伝わらないけど 上原の場合 客導線を
考えてもそれは無理ね 私も分っていたけど どうして良いか
その方法が分らなかったの しかし ビー球ってどこに売っているの?」
「うん 当日まで僕が用意する ただ敷物が必要だね」
神山はそれについても分りやすく絵に描き教えた
「うん 自分で出来ないわ 困ったわね」
しかし祥子はにこにこして困っていなかった
「うん こうしよう 少し粗い白い砂を用意する そこに配置する」
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