2013年12月26日木曜日

Vol.1265 百日紅 -9-70



「あなた 亜矢子さんからです」
「おぉー どうしたんだろ」
神山の席にある受話器をとると
「亜矢子です お忙しい所ごめんなさい」
「いやいや どうしたの?」
「ええ 9月の1日ですが 御殿場の家の棟上式なのよ それでね
あなたにも出資をして頂いているし 是非出席をしてもらいたいの」
「あー 良かったね OK 行きますよ 大丈夫だよ」
「わぁー 良かったわ ふふふ 母も喜ぶわ」
「でも 随分と早いね」
「ええ なんでも アンカーを早めに打ち込んだって言っていたわ」
「ああ 例の固い岩盤に打ち込む杭のことだね へぇー そうか
しかし 凄いスピードだよ ははは」
「ほら 貴方が先に渡したお金が利いているのよ きっと」
「ははは そうかな 亜矢子が美しいからみんな頑張るんだよ」
「まあ 何もでないわよ そうそう それで本当は前日一緒に過ごしたいの
でもね どうしても夜勤が動かせなくて ごめんなさい
その代わり 由紀枝さんは大丈夫よ ふふふ」
「わかった それで出席者は」
「ええ 貴方と由紀枝さん それと椿支配人よ」
神山は出席者が少ないので 少し考えたが
「うん 了解 では又何かあったら連絡をくださいね」
「はーい お願いします」
電話を切って洋子に話すと
「へぇー 折角の棟上式なのに ちょっと寂しいわね」
「だろ どうしようかな」
神山は少し考えてから
「洋子 どう 当日さ 泰子や祐子など 連れて来られる?」
「ええ 別に構わないわよ 人数が多いほうがいいものね ふふふ」
「うん 余り面識がないと亜矢子に失礼だけど 行かれる者だけでも
行くようにして 盛り上げてあげようよ」
「はーい ふふふ なにかゴルフのメンバー集めのようね」
「そうだ そうしたら翌日の2日はゴルフにしようか」
「あっ そうね でも亜矢子さんや由紀枝さんが来られないでしょ」
「そうか そうだよなぁー ははは 上手くいかないものだね」
「それで貴方は31日は由紀枝さんのところでしょ」
「うん」
「そうしたら当日早めに出て 御殿場に向いますよ その方がいいでしょ」
「そうだね 多分10時ごろだと思うよ 御殿場まで1時間だから
充分に間に合うよ 当日でお願いします」
「ねえねえ 包むんでしょ」
「そうだね 包みましょう 一人500万円でどうだろうか?」
「そうね 皆さん大丈夫でしょ」
「うん 大丈夫だよ もしもの時を考えて余分に持って行くよ」
「じゃ私 熨斗紙を用意しておきますね」
「うん お願いします」

8月31日 月曜日 快晴 銀座
神山は普段と同じように出勤し仕事に集中していた
この頃の仕事はアルタの仕事が多くなり 鈴やの仕事には殆ど関わりが無く
自分でもこのままでいいのかと考えていた
御殿場アウトレットの仕事も順調に進み 現場工事も早めに着工でき
オリンピック記念グラスも順調に生産されるようになった
「おはようございます 早いのね」
「やあ おはよう 洋子だって早いじゃないか ははは」
「まあ 年寄りと一緒だと早くなるのよ ふふふ」
「そうか 元気が一番だよな」
「元気すぎるのも考え物よ ほんと ふふふ」
「まあまあ 元気な時に一杯孝行してください」
「そうね 分かりました」
神山は25日の株主総会で 正式に鈴や専務になり これで権田 時田の
次に位置することになった 同日のアルタ株主総会でも正式に
取締役副社長に就任する事になった
「でも あなたが正式にナンバー3でしょ ふふふ 凄いわね」
「まあね タマタマですよ ほんと それより時田さんや権田さん それと
内藤さんにきちんとお礼の挨拶をどこかで設けないといけないかな?」
「大丈夫でしょ 今までだって聞いた事が無いし」
「そうだよな また前代未聞って言われるだけかな ははは」
「そうしたら 社長が上京したときに 三人を上原へご招待はどう?」
「ははは あそこしかないか うん そうすると包みを渡すのも可笑しいね」
「うーん そうよね なにか記念になるものでしょ」
「まあ 頭の隅に置いといてください」
「まぁー 私に振って もう ふふふ」

「先輩 ホールインワンのカップが出来ましたよ」
受話器をとると杉田の声がした
「やあ 早いね」
「そちらに伺っていいですか」
「どうぞ 待っています」