「ええ このような小さな面積では使われていないんですが 今回初めて
この工法を取り入れます 消防や建築基準でも大丈夫です
それと天井の不燃材も取り付けやすくなり 天井裏部分が随分と余裕が
出来るんです 一石三鳥ですかね ははは」
「それは良かった ありがとうございます」
「それから神山さん その工法なので 地下真ん中の広場ですが
光窓を設けることも出来る様になりました どうしますか?」
「あっ そうか でも地上部分の処理が難しいでしょ」
「ええ なので なにかオブジェでもあれば大丈夫ですが」
「でも 予算オーバーは大丈夫なの」
「ええ そこの設計を暫定で入れても余ります 何しろ安いです」
「わかった 考ちゃんと話してみます それからでも大丈夫?」
「ええ 逆に天井部分はその工法なので 自由が利きますよ」
「わかった でも楽しいね 採光が出来るっていいね」
「では 失礼します」
神山は電話を切ると地下部分採光のスケッチを始めた
「考ちゃん 良い知らせだよ」
「山ちゃん 昨日はご迷惑をお掛けしました お恥ずかしい」
「まあまあ これから気をつけましょうね ところで良いかな」
「はい」
神山はGプロの部屋に行くと 田中や内野らと挨拶をした
昨日 スコアが悪かったので 少し元気が無かった
「おいおい どうしたの ゴルフぐらいで 元気出して
で 今朝一番で なべちゃんから電話があって 工期が早まったよ」
神山は渡辺から聞いたことを皆に伝えると 顔付きが明るくなった
「そうしたら神山さん 実は寝かせておいた案ですが」
高橋孝一は神山にスケッチを描きながら説明した
採光ガラス上部(地上部分)に水槽を作り 水を流すと言う案だった
「こうする事によって 普通の光ではなくて 水の模様が見えるんです
雨が降ればそのはねる瞬間の模様 普段はユラユラと揺れている
水の紋様が見えるんですよ」
「そうすると 地上部分はどうする 囲わないと難しいね」
「ええ 真ん中にFRPの小便小僧のような水を出すオブジェを置き
その周りを池のようにすれば 大丈夫だと思います
景観の事を考えると 高さ1mの強化プラスチックで囲えば 真夏の
暑い時でも飛び込む人は居ないと思いますよ」
「ははは 水遊びをされては困るからね もう少し高くて良いね その
強化プラスチックの上にステンのパイプを廻せば格好良くなるね」
「そうですね そうだ オブジェですが 池の周りに放水口を何箇所か
設けて コンピューターで水の強弱をつければ オブジェは不要で
結構 噴水で面白いものが出来ますよ」
高橋孝一は同じように スケッチを描いた
水が最大に出る時は 3mの噴水アーチになるようにしたり 中ぐらいの
強さのときはその半分のアーチにしたりと説明した
「面白いね で出来るかな?」
「大丈夫ですよ 横浜で成功しています 水深20cmの池で噴水は5m
黒御影石で敷きつめてあるんです 綺麗ですよ」
「よし その方向でいこう そうすると水深の問題は天井との兼ね合いが
絡んでいるから 気を付けてデザインをしてね 大きさだけど
大きいほうが見た目綺麗だね」
「そうですね 半径2mだと面白くないので 5m位は欲しいですね」
「そうだね 地下も明るくなるし 5mなら地上部分でも邪魔にならない
うん そうしよう じゃお願いしますね」
次長室に戻ると洋子が
「ねえ 来週の株主総会だけど 大変なのよ」
「えっ どうしたの」
「ええ 行われる日がアルタと同じ時間なの こちらはそのままの開催時間
で アルタさんが1時間あとに開催をしてくれるんだって」
「あっ そうか 参ったなァー」
「ふふふ 仕方ないでしょ 株主の皆様にご挨拶よ」
神山はなんとも苦手な儀式に出席をする羽目になった
「だから こちらが終わったら 私が運転しますから 直ぐに移動です」
「大丈夫かな?」
「なにが?」
「だって 儀式のあとさ 挨拶があるんじゃないかなってね」
「それは仕方がないでしょ ちゃんと話せばいいじゃない
貴方らしくないわね ふふふ」
「まあ そうだな うん ありがとう」
神山は苦手意識が在ると どうも上手く歯車がかみ合わない事を
この頃実感してきているので 少し不安材料もあった
次長席で仕事に集中していると電話が鳴り洋子が取り