神山は何も答えずに次長室に戻った
「ありがとうございます 素敵ね 私気に入ったわ
でも 母に見つかると煩いから家では出来ないわね」
「良いじゃないか そんな赤いショーツと違うよ それは」
「そうね でも良く覚えているわね 赤いショーツには参ったもんね」
「まあ 美しくなる指輪だったら大丈夫だよ」
「ねえ カトリアーナに何かしてあげなくて良いの
だってアレックスジャパンの面接 受かったんでしょ」
「う~ん 何にしようか」
「あのね さっき見ていたんだけど ポワモールの
ネックレスはどうかしら ペンダントトップがPの字で
ダイヤが入っているわ 値段も300万円だから丁度良いと思うわ
普段 つけていられるわよ」
「そうしたら 洋子買って来てくれるかな お願いします」
そう言うと神山は商品券を300万円分出し洋子に渡した
洋子は受け取ると早速店内へ買いに行った
神山は次長席で書類を纏めていると内線電話が掛かってきた
「はい 神山ですが」
「大熊工務店の加藤です」
「こんにちわ お久しぶりです」
「や~山ちゃん 偉くなられましたね」
「いえいえ たまたまですよ それでなにか」
「ええ お祝いに気持ちをお届けするのですがお時間は」
「ええ 空いていますが6時には出ますよ」
「では これから伺います」
大熊工務店は日本でも5本の指に入る建設会社で鈴やの工事は
全てここで建てられている
電話の相手 加藤は東京の東地区を担当している東京 東支社の
支社長を務めている
現在も改装工事や増床工事などを行っている上野店の傍に事務所を構え
加藤も時々顔を出している
神山が上野店の在席時 営繕課の仕事をしている時に加藤に構築物の事を
色々と教えられ勉強をした
催事課に移動してからは加藤と殆ど会うことが無かった
暫くすると洋子が店内から戻り神山にプレゼント包装した小箱を渡し
「このブティックの袋に入れていけばいいわよ」
神山はポワモールの袋を受け取ると小箱を仕舞いバッグに入れた
「洋子 これから大熊工務店の人が来る」
神山は事情を説明して わざわざ協会で会うのも
失礼なのでここで会う事を伝えた
「ええ 大丈夫よ 何時頃いらっしゃいますの?」
「うん もう直だと思うよ」
話していると次長室のドアフォンが鳴りドアを開けると
加藤を始めとしてそうそうたるメンバーが次長室に訪れた
「加藤さん 本当にご無沙汰をしています お元気ですか」
「やあ 山ちゃん 元気そうで」
神山はソファーを勧めると支社長の加藤武雄と副支社長の田端治朗が
座り支社長秘書 常磐恵子や副支社長秘書 千曲ルミら6人は
座らなかったので神山が折り畳み椅子を出して座って貰った
加藤の後ろに経理部長の和久井秀三 総務部長の石井栄蔵
現場監督の青木省二 もう一人現場監督の保川哲平の4名が座り
秘書は加藤と田端の脇に座った
洋子は直ぐに冷茶を用意しみなに配った
「いや~ 神山理事 ご就任おめでとうございます 素晴らしい事ですよ」
「でも 決裁権が無いんですよ」
「ははは しかし理事は理事 これから仕事が増えますよ
と 言っても接待される方ですがね」
「そうですか 困りますね」
「大体 今まで年寄りが多かったから控えていましたが 山ちゃんだと
大変でしょう まあ 充分楽しんだら辞めればいいのですよ」
「でも 今のところお誘いは無いですよ」
「これからですよ それから これだけは気を付けて下さいよ
一人で現場に入らない事 これは絶対に止めて下さい
まあ 山ちゃんは事務所で指示を出されている方が無難ですよ
結構 これが居るんですよ
そうそう 大竹組の麻生太郎が逮捕され懲戒免職ですよ」
「まだ 新聞には載っていないですよね」
「ええ 情報は早いですよ 警察は
あれは山ちゃんが捕まえたそうですね 凄いですね
でも もう無茶は止めたほうが良いですよ 今度は人数が違いますから」
神山が頷くと支社長秘書 常磐恵子や副支社長秘書 千曲ルミが
「本当に お体に何かあると私たち悲しくなりますよ
絶対にもう無茶はしないで下さいね」
.