2012年3月2日金曜日

Vol.601 ゆり -6-39



10年ほど前に交通事故で頭を打ってそれから可笑しくなったんです
隠していて済みませんでした
でも ご安心下さい すぐには出られないので私の家内を付けました
暫くの間は我慢してください 勿論お部屋には行かせません
それでご提案が有るのですが 現在建築中の分譲マンションを
私共で買取りその最上階のお部屋をご利用ください
私にはそれしか出来ません 済みませんでした」
「わかった そのマンションは何時出来る」
「ええ 今 内装工事ですので6月初めには引越しが出来ます
引越し代金は私共で持たせて頂きます」
「家具類は買ったばかりだけど傷が付いたらどうする」
「はい弁償させて頂きます」
神山は家具類の配達伝票控えを持っていたので見せると
「ひぇーこんな高いものばかりですか、、、」
「ええ 嘘では有りませんよどうしますか それにそのマンションだって
中を見ていないし分らないじゃないですか」
「実は 設計管理会社が私の弟がやっているんです
それで今のマンションも造ったんですが今度は分譲タイプで造る事に
なりまして 部屋のレイアウトが同じで広さが二回り以上大きくし
設備も充実しています 勿論 南向きのお部屋で10階建てです」
「家賃や敷金礼金は」
「はい 一切頂きません それと先日お支払い頂いた金額は全額お返し 
致します どうでしょうか」
「わかった それでは 入居日をきちんと明記をして
今 社長が言った事を契約書として制作してください 今 すぐに」
「はい 暫くお時間を下さい」
「どの位待てばいい」
「はい 30分位です」
「わかった その現場まで行ってきます 
中に入れるように手配してください いいですね」
「はい 場所は道路を挟んだすぐ向かい側でわかります 
現場監督に伝えますので中を確認してください」
「では 30分後に戻ってきます いですね そして
その契約書を作る経緯を明記してください良いですね」
「はい 庄司様 神山様にご迷惑をお掛けした事から全て記載します」
「では 現場の手配をお願いします」

神山と由紀枝は駐車場から車を出して乗ると
「ふぁ~よかった 助かりました それに新しいお部屋って良いですね」
「うん 良かった でもごめんね 怖い思いをさせて」
「ううん それより何故分ったの 以前病を患ったって」
「うん 感だよ 後は駐車場かな 女性が好む車が一台も無いでしょう 
そんな所から判断したわけさ 半分賭けだったね」
「ふぁ~凄い そこまで読んで話をしたんだ」
「うん まあね でないと勝てないよ」 
そう話していると由紀枝のマンションに着き車を駐車場に止め
新しいマンションに行った
工事囲いに現場責任者らしき人物がいたので神山が名乗ると
やはり現場監督で神山を待っていたと言った
入り口で安全ヘルメットを着帽して中に入るとやはり造りが良くて
神山も納得した
最上階に行くと部屋は一つしかなくてまさにペントハウスだった
部屋に入るとレイアウトは殆ど同じだったが全然広くて気持ちが良かった
更に驚いたのはバルコニーが倍以上の広さだった
肝心のセキュリティーもしっかりしていてモニターも大きくなっていた
神山は照明器具やクーラーを確認すると部屋の広さに対して
相当の器具しか付けていないのでメモをした
通常分譲マンションは造りつけの家具があるがここはそれを省いた分
安く提供していると言った
神山は現場監督に照明器具の取替えとクーラーの取り替えを伝えて
窓際に天井付きラインモールの増設とライトの取りつけを伝えた
現場監督も社長からの指示で神山に何も言えなかった
キッチンはシステムキッチンで多少不要品が出る事になった
神山は由紀枝に何か質問がないか聞くと無いと言うので
現場監督に御礼を言い 部屋を出て現場から出た
道路わきに女性と管理人が立っていて 女性が神山と由紀枝にお辞儀をした
この時由紀枝は管理人を見て神山の後ろに抱きついた
「神山様 庄司様 この度は本当にご迷惑をお掛けしました
申し訳ございませんでした」
管理人のほうは由紀枝をにやにや見ているだけで気持ちが悪かった
「奥さんもう良いですよ それよりその人を早く病院に入れるのが先でしょ
ここで 彼が謝る事も出来ないなら そうでしょ」
「はい ありがとうございます 先ほど主人から言われ今探しています
本当に 怖い思いをさせてごめんなさい」





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