2011年11月24日木曜日

Vol.502 薔薇 -8-33



少し振りかけて待った
東条は先に焼き始めたのにまだ返さなかった
神山は色を見て25枚のステーキを手早く返して反対側の焼きに入った
東条も25枚のステーキを返して反対側の焼きに入った
神山は 表面に集中してしていると肉汁が出てきたので
素早く鉄板の上で一口大の大きさに切ってお皿に持った
切り口を見ると真中がピンクに残っているミディアムに仕上がった
東条も牛肉を切ったがさすがはプロで素早かった
両名のステーキが叔母さんや洋子や人事課の女の子で運ばれた
左側に東条 右側に神山のステーキが並べられて神山が
「お待たせしました 東条さんと私のステーキです
どうぞ味わってください お願いします」
そう言われ参加した面々のフォークとナイフが動き出した
神山や東条もワインを呑みながら食べていた
洋子が小さい声で
「貴方のほうが全然美味しいわよ 良かったわね」
東条本人も神山の方が美味しく感じられ困惑した表情だった
お手伝いのおばさんたちも神山を誉めた
鈴や食品の黒江や多田もワインを呑みながら食べたが
神山のステーキに軍配を上げていた

皆が食べ終わった頃合を見て神山が
「如何でしたでしょうか ご満足いただけたと思います
さて これだけでは料理勝負の漫画になってしまいます
私の意見を最初に言う前にまず 東条さんから 調理の心構えとか
色々とお聞きしたいと思います」
「えっ 何を出すか?」
「ええ 皆さんに食べて頂いたステーキですよ」
「ええ 何時もの通り焼いただけですが」
「お肉がどのような状態でもですか 何時も通りの焼き方ですか」
「ええ そう言われて来ましたから」
「先程 ご自分で食べ比べた時に困惑した表情でしたね どうしてですか」
「ええ 神山様のほうが美味しいからです」
「分りました ありがとうございます さて私から皆様に質問をします
今日の牛肉は仕入れが大変高価だと思う方は挙手をお願いします」
そうすると神山と洋子以外は全員手を挙げた
神山はニコニコしながらはっきりと
「この牛肉は二流の牛肉です そして調理人も二流です
時田社長 この場で申し上げます
牛肉の良し悪しが分らなく仕入れ 調理するとは東都食品を完全な
傘下に出来ません 勉強不足です
そこで提案ですが 東条君に武者修行をして頂く
黒江さんには当分牛肉の味を分って頂くまでやはり武者修行をして頂く
如何でしょうか」
「う~ん 山ちゃんそこまでやらないと勝てないか」
「ええ 私に負けたんでしょ 当たり前だと思いますよ
東都食品を引っ張る人間が何も知らないでは困ります
いいですか このお肉はせいぜい仕入れで10万円がいいところです」
神山は黒江の領収書を時田に渡し
「それを30万円で仕入れたとすれば 東都食品に笑われるだけでなく
足元を救われ御殿場アウトレットから早期撤退となるでしょう」
「うん わかった 処分については考えるが 東条君の
武者修行先はどうなんだ」
「はい 2箇所ほど有ります」
「うん わかった では黒江君 君はもう一度牛肉を一から勉強だ いいね」
「はい 畏まりました」
「それと 出来れば 多田コック長にも東条さんと
一緒にお願いしたいんですが」
「しかし この食堂があるだろう なあ多田君 どうだね」
「ええ 私は次長室で伺った神山様の夢を現実にしたいと思います」
「うん わかった では武者修行の件は山ちゃんに任す 頼んだよ」
「ありがとうございます 社長 それではみなさまありがとうございます
ご自分のお皿やナイフはカウンターまで運んでくださいお願いします」
そばで聞いていた洋子が涙ぐんで
「よかったわ これで又 一歩進んだね」
「うん 良かった ありがとう」
神山と洋子が話している所へ時田が
「山ちゃん 凄いな 上手かったぞ ありがとう どうした洋子」
時田は涙ぐんでいる洋子に聞いた
「だって 神山の仕事がまた一歩前進したんですもの 嬉しくて」
「おお そうだな しかし上手に調理したな」
「ええ 生肉を食べて分ったんですよ 上等の肉じゃないって」
「そうか 分るか」
「ええ おじ様も今度 神山とご一緒されると良いわ 楽しいですよ




.