2011年11月23日水曜日

Vol.501 薔薇 -8-33



これは料理人として最高の勲章です」
これに対して若い調理師の東条は
「私は この案は案として やはり先程説明が有ったターゲット層の
30代女性を満足させる事が先決だと思います」
二人の料理人は意見が違っていても神山案は分って貰えた様だった
神山が
「黒江さん 牛肉代は幾ら掛かりましたか」
暫くして
「50人分のブロックで30万円掛かりました」
神山は自分の引出しから30万円を抜いて黒江に
「はい では30万円です お確かめ下さい」
黒江は30万円有る事を確認すると
「では 済みませんが ここにサインをお願いします」
神山は洋子が用意した領収書にサインを記入して
「これで 宜しいでしょうか」
神山は領収書を受け取って時計を見ると14時30分になっていたので
「さあ では厨房でステーキを焼いてください お願いします」
二人は事前に知らされていたのか 頷いた

5人が従業員食堂にいくと殆ど社員の姿はいなかった
厨房に入ると若い調理師の東条の着替えが始まり準備が出来た
神山が
「私もステーキを焼きます」
そう言うと鈴や食品の皆は驚いたが調理師の東条は
「神山様 幾らなんでも無茶でしょう 僕のほうが美味しいのが
分っているのに何故ですか」
「うん それはあとで話す」
神山はエプロンを借り調理器具も一式借りた
美味しい牛肉が運ばれて来たが神山は捌けないので調理師の東条に任せた
神山は小さく切って洋子と二人で食べると
「これは 人気のお肉だね」
「ええ そうね そうすると若いワインかしら」
「う~ん この肉味がどこまで出るかだな そうだ
がんがん呑む訳ではないから 口直しとするとミディアムで良いかもね」
「そうね」
洋子は調理のおばさんにも手伝ってもらいグラスをテーブルに並べた
黒江が
「神山様 ワインまで用意されたんですか」
「ええ そうですよ」
「私どもは何も用意してきませんでした なあ東条」
「ええ 大丈夫ですよ ご安心下さい ワインが無くても」
そろそろ3時になり神山に呼ばれた面々が従業員食堂に入ってきた
時田副社長 池上店長 秘書が6人 人事課が3人 催事課が6人
販促部長 人事部長 合計19名がテーブルに座った
神山が簡単な挨拶をして 東条の紹介と御殿場アウトレットで
東都食品のベテラン勢に勝たなければ傘下にした意味が無い事や
神山がこれまで覚えてきたノウハウが活かせるかどうかなど説明した
理由を知っている時田だけだニコニコしていた
「え~ 今から15分後に皆様のテーブルにステーキとワインが
出されます しかしワインは私 神山が用意した物ですが
どうぞ 東条さんの時にも呑んで頂いて結構です それでは
出来上がるまで暫くお待ちください」
神山はそう言うと厨房に戻り
先に牛肉を出しトレーに乗せ塩コショウを済ませそのまま放置した
一方の東条は牛肉を冷蔵庫に閉まったままニンニクのミジン切りをして
少し手を休めていた
神山はニンニクをミジン切りではなく短冊切りをし鉄板の
温度調節をしていた 洋子が何処から仕入れてきたのか
「はい オリーブオイルよ 頑張ってね」
神山は 牛肉を触るとまだひんやりしていたので焼かなかった
東条は鉄板の温度も考えずに焼こうとしたが出来上がりの時間が余るので
時間調整をしていたが鉄板にオイルを落として見ると直ぐに伸びるので
牛肉を冷蔵庫から出して塩コショウをして一旦トレーにおいて
ニンニクを少し炒めたあとに牛肉を焼き始めた
試食をする面々はニンニクの香りがしてきたので
「何ともいえないいい香りだね なあ池上君」
「社長 これは結局どちらが美味しかったと判断をするんでしょうか」
「まあそう焦らないで 山ちゃんに任せなさい」
池上店長を初めなぜ神山がステーキを焼く意味が分らなかった
神山は牛肉を触ると人肌になってきたので オリーブオイルをたらし
よく伸ばしてニンニクの香りをオイルに移すと牛肉を焼き始めた
勿論神山は勝負に勝てるとは思っていなかったが
何とか美味しく調理された牛肉をみなに食べて欲しかった
鉄板の方が色が変ってきているがもう少し待ちブラックペッパーを





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