2011年11月18日金曜日

Vol.496 薔薇 -8-33



「アレックス夫人の大ファンだ 現役のモデルでは最高に綺麗だし
頭も良かった ほんと残念だ見られなくなって」
「まあ 時々来日するからその時に会えばいいじゃないか」
「う~ん でもモデルではない 私はモデルが見たいのだよ」
「そうか 夫人では違うという事か 難しいね」
洋子が
「そうよね モデルの彼女が好きで夫人の彼女は普通の女性になる訳でしょ」
「う~ん そうですね」
3人はアレックス夫人の話で盛り上がって20時になっていた
神山はそろそろ巻物が欲しくなり女将に注文をした
運ばれたネギとろ巻きを食べたジョン ブラームスは
「これは美味しい 赤坂の寿司屋では無いよ こんなに美味しいのは」
神山と洋子はこの寿司屋を選んで良かったと頷いていた
ジョン ブラームスはお酒のせいか顔が赤くなり神山に指摘されると
「神山さん 美味しかった ありがとうございます 
今夜はこれ以上呑めない 楽しかった 又 会いたいですね」
「ええ 是非お会いしましょう 今夜はありがとうございます」
神山と洋子は玄関を出てタクシーをつかまえ彼を乗せた
席に着いて残った物を食べると
「さあ 我々もそろそろ帰ろうか」
「ええ では清算をしてきますね」
「お願いします」
洋子が清算をすると
「本当に安いわね 潰れるんじゃないかと心配するわ」
「幾らだったの」
「ええ 1万5千円ですって」
「うん 安いよなほんと さて それではお疲れ様でした それは?」
「ええ 母のお土産よ いつも私ばかりだから巻いてもらったの」
「いいね これから僕もそうしよう 夜食にちょっとってね では」
「ええ お疲れ様でした」

洋子は神山にお辞儀をして別れタクシーで自宅に戻った
神山は歩いてニーナ・ニーナを覗くとすでに閉店していた
夜になるとさすがに人通りが少なくなって 静かな町になっていた
部屋に戻るとFAXも来ていなかったのでシャワーを浴び
冷蔵庫からビールを出しテーブルで呑んでいた
神山はアレックスジャパンのブースと鈴や食品のブースは
なんとかたたき台を作ったがニーナ・ニーナのラフスケッチはまだ
ぜんぜん手をつけていなかった
エリアゾーンで展開すると決まった箱の中でしか展開できず
かといってフリーゾーンだとそれだけの商品量が無いし困っていた
エリアゾーンで箱物を造るだけの価値があるか考えた
選択肢として 予算に余裕があればフリーゾーンの箱ものの建設
予算が無ければ既存の箱もので内装勝負と二案を考えた
まだ21時だったので筒井に電話をした
「神山ですが 夜分申し訳ございません」
「いや 山ちゃんどうされましたか」 
「ええ 先日御殿場アウトレットの件で静岡県庁の国土開発へ出向いて
御殿場アウトレットの基本的なコンセプトを聞いてきました」
神山は筒井に分りやすくその日の内容を伝えた上で
「ニーナ・ニーナのブースの規模をどうするかで悩んでいます」
「うん 結局 本社のパリがOKを出さない限り予算内で仕事を
進めていかなくては駄目になります いまの山ちゃんの話だと
箱を造る気持ちはよく分りますが そこまで考えていないでしょう
これから予算を貰う事は可能としても50%アップがせいぜいでしょう
ですから 既存の箱に入るしかないと思いますよ」
「予算は 幾らくらい有るのですか」
「ええ 3千万円位ですね」
「そうですか そうすると箱は無理ですね」 
「うん 難しいね」
神山は箱を造る事を諦め 既存の箱の中での展開を考えた
「筒井さん 既存の箱が何処まで出来ているかは6月になると分ります
そこで その予算内で出来る事やいろいろとシュミレーションします」
「うん お願いします」 
電話を切ってニーナ・ニーナのデザインが一番難しいと考えた
神山はテーブルで色々とデザインを出していったが
これと思ったものは出てこなかった
どれも既存のニーナ・ニーナのイメージが強かった

いいアイディアが出ないでタバコを吹かしていると携帯がなった
「はい 神山ですが」
「わたし 亜矢子です こんばんわ いま大丈夫ですか?」
「ええ 一人ですよ 遅くにどうしたの?」
「ええ 当ったわ みごとにダブルで1等賞よ」




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