二人の華麗で軽快なステップは見ている者を圧倒し
曲が最後になるとアレックス夫人のように洋子を横にして
ひと回りして終った
会場からは盛大な拍手や指笛が吹かれた
席に戻ると杉田と美佳が
「凄い なにか映画を見ているようでした」
「ええ 私も映画を見ているようでビックリしています」
神山が洋子に
「今日はどうでした 横は?」
「ええ 最初はどきとしたけど 安心していたわ あなたの事だから
大丈夫と思っていたわ」
「うん アレックス夫人と変らなかったよ あれってバランスがあるからね
同じ体重でもね だからきっとほうり投げても大丈夫だよ うん」
杉田がドライマティニーをあっと言う間に呑んだので神山が
「翔 このカクテルはビールと違ってゆっくりと舐めるように呑むんだ
そんな呑みかたをするとあとで大変な事になる わかった?」
「はい 分りました」
「うん 美佳さんを守らなければいけないからな」
「はい 分りました」
神山はドライマティニーを一つ注文した
曲がポップスに変ると 神山が杉田に
「カップルで5曲踊ると楽しいプレゼントがある
さあ 僕も負けないぞ いこう洋子さん」
「ええ 負けないわよ」
「杉田さん 行きましょ 先輩に負けないようにね」
センターにはどんどんと人が出てきたが 神山と洋子の周りは
みな空けて踊っていた 3曲目が終る頃には踊っているカップルは
神山組と杉田組と外人のカップルの3組だけだった
杉田も曲をこなして行くうちにだんだんと美佳とリズムが合って来て
美佳も嬉しそうな顔でニコニコとテンポ良く踊っていた
最後の5曲目に入ると外人カップルはリタイヤして二組だけになった
曲が終ると杉田はあはあ言いながら席に戻ったが神山が呼んでいるので
センターに戻るとアナウンスがあり
正装の紳士が現れ バニーガールがクリームピザを皆に渡し
アナウンスがどうぞ投げてくださいといわれると
神山と洋子は顔をめがけて見事にあたり
杉田と美佳は少しずらしてしまった
4人が席に戻ると杉田が
「済みません 僕はやっぱりビールが良いです」
神山はビールを注文した
「楽しかったわ ねぇ杉田さん 凄く上手よ」
「そうかな 美佳さんが上手だからさ」
美佳は杉田の唇に熱いキスをした
今度は杉田もしっかり抱いていた
洋子は神山に小さい声で
「今度 彼女と話して聞くわ 気になるから」
「うん 頼んだよ」
曲がバラードに変ったので神山が
「翔 キスしたまま踊ってこいよ ほら」
美佳が手を引いてセンターに来ると杉田の首に両手を絡ませ
キスをしたままステップをした
周りの外人たちは杉田のところから離れて踊っていた
1曲が終って戻ってくるかと思ったが続けて踊っていたので
神山と洋子は顔を見合わせて二人を見守った
2曲目が終るとさすがに疲れたのか席に戻ってきた
周りからは拍手がやまなかった
「杉田さん ありがとうございます 美佳はこれできっぱりと
兄の事を忘れる事が出来ました 本当にありがとうございます」
洋子が
「ねぇ美佳さん よかったらもう少し教えて」
「ええ 兄とは丁度10歳離れていて いつも遊んでくれていました
公園で転んで怪我をした時も中学校から帰ったばかりの制服姿で
私を抱きかかえて病院まで連れて行ってくれたり 母に怒られて
気落ちしていると励ましてくれたり 兄が成人式の時に私は
私と兄の結婚式の絵をプレゼントしたんですが そんなプレゼントも
大事に飾ってくれていました
そんな兄は私が中学の時に交通事故でなくなりました
大好きではなくて愛していました 優しくて楽しくて頼もしい兄は
この世にはいないと自分に言い聞かせてもどこかにいて
辛い時はその兄が励ましてくれていたんです
だから 男の人とお付き合いしても兄のような人でないと
長続きしませんでした
だけど今夜杉田さんとキスをして兄と違う優しさや楽しさを
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