そのとき亜矢子が伝票を持ってきた
以前も使った事のあるお届け伝票だった
「ねぇ桜川さん 手紙を一箇所だけど入れたいんだが出来るかな」
「ええ 出来ますよ 宜しかったらワープロで制作しましょうか」
「うん お願いします」
神山は先ほどのメモを渡し頼んだ 亜矢子は目を通し笑顔になった
何か言いたそうだったが洋子の手前頷くだけだった
「畏まりました 白い封筒で 神山様のお名前を入れて宜しいですね」
「ええ 宛名は伝票の部長名でお願いします」
「はい 畏まりました
伝票にお手紙つきと記しておきます」
「ありがとうございます 助かります」
「では失礼致します」
亜矢子は深々とお辞儀をして部屋から出て行った
「次長全部判りました」
「なんだよ 次長って いいよ普段通りで」
洋子は両手を上げて神山に抱きつきキスをしながら
「私が初めてでしょ こうやって呼ばれたの」
「うん そう言えばそうだね」
「これで互角よ」
「なにが」
「だって 貴方が最初」
「えっ 最初、、、ああ 最初ね」
「もう ばか 知らない 私にとってとっても大切なもんだからね」
「わかった では伝票の件は後回しにして」
神山は冷蔵庫からビールを出して洋子と呑んだ
一方 高橋と内野の部屋では
「高橋さん田所さんて 見かけによらぬドライバーですね」
「うん こっちも怖かったよ」
「しかしあんなに綺麗でおしとやかで あんな運転をするなんて
女って判らないですね ほんとうに」
「女だけじゃないよ 山ちゃんだって 人間じゃないよ
彼は現代のスーパーマンです」
高橋と内野は地ビールを呑み終わると
「さて準備しよう 車から降ろし準備しないと山ちゃんの雷が落ちるぞ」
「えっ 山ちゃんが雷をですか」
高橋は今朝上原で起こった事を内野に説明した
内野の顔から笑顔が消え真剣な口調で
「よほど見かねて 怒ったんでしょうね」
「うん ぼくも初めて見たよ あんなに怒っている所」
「やっぱ 人間じゃないですか」
「だね さあいくぞ」
「はい 早くすませて美味しいもの食べましょう」
高橋と内野はまだ時間に充分間に合ったが部屋を出て準備に取り掛かった
「さて洋子 時間は充分だけど下に行って下見をしよう」
「ええ 化粧室に行きます ちょっと待って」
洋子が浴室に消えたので椿から貰った封筒を開けると
達筆な毛筆の手紙と現金100万円が入っていた
【この度は大変嬉しいご提案を頂き家内ともども喜んでいる
次第でございます 今後もご提案ご指導を承りたいと存じ上げます
同封致しましたのは気持ちでございます お納めください
ゴテンバ グランド イン 総支配人 椿 秀介】
神山はこれからも地ビールを拡張しようと考えた
洋子が
「お待たせしました さあ行きましょうか」
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