海風と陸風が交互に優しく吹き寄せ神山と亜矢子は暫く風の余韻を楽しんだ
神山が
「ビールを買ってくる」
と言い売店で買い求め戻ると亜矢子は写真を撮っていた
「あそこの夫婦岩が凄く素敵ね 片方は貴方のように
しっかりがっしりしていて もう一つは寄り添っているわ
あっ ごめんなさい 変な意味じゃないのよ ごめんなさい」
「うん 気にしていないよ 大丈夫だよ そう見ると見えるね」
神山は亜矢子にビールを渡し仲良く呑んだ
「ねぇ あそこに人が居るわ あそこよ」
「本当だ どこからか下に降りられるんだ 探そう」
「ええ 行きたいわ」
神山と亜矢子は海に出る坂を探したが直ぐに見つかった
「与謝野晶子の石碑があるわ」
そこには与謝野晶子の詩がエッチングされていた
亜矢子がこの石碑をバックに写真を撮ってほしいと言って来た
「うん そう 少し笑って」
神山は胸から上と 全身が入る構図で2枚撮影した
「光線の関係で石碑が綺麗に写っているかどうか心配ですが」
「じゃあ 私は」
「うん 大丈夫だよ 綺麗に撮れているよ」
「ふぁ~ 嬉しい」
二人は手を繋いで細い坂道を下るとごろごろとした岩場にでた
降り注ぐ光がまぶしく亜矢子は
「こんなに陽射しが強いと日焼けするわ だけど気持ちいいわ」
時折海風がつよく吹き付けると亜矢子の髪がなびいた
神山は横顔を見ていると 母親が早く良くなってくれる事を祈った
「ねぇ もう少し沖に行きましょ 引き潮だから大丈夫よ」
亜矢子の言う通り潮が満ちた時はこの岩場の半分以上が海になる
岩に貝や海藻が一杯付いている所に来ると
海藻で足元を取られそうだった
「亜矢子だめだ 危ないから 戻ろう」
神山は亜矢子がこちらに進んで来ているので戻るように言った
「分ったわ 戻りまーす」
亜矢子はそう言われると足元を良く見て戻った
二人が安全ところに戻ると 周りにはほとんど観光客が居なかった
二人だけの世界に亜矢子は酔っていた
軽くキスをするだけで 昨日の公園のように悪戯をしなかったので
「二人っきりなのに どうして触らないの?」
「そんな事したら 今日帰れないでしょ おばかさん」
「えっ」
「だって 貴方だって大きくなったら欲しくなるでしょ」
「うんまあね」
「だから 中途半端は自重しているの だからお願いだから触らないでね」
「分りました 触りません」
二人はキスをして我慢した
ゆっくりとした時間とこの場所が二人の幸せな空間を作っていた
突然神山の携帯電話が鳴ったので見てみると小田原工場の赤坂からだった
「はい 神山ですが」
「アルタ小田原工場の赤坂です お休みの処すみません
実は第二貨物さんですが 積み込みが順調に進み 今お昼ご飯を
食べているんですが この後直ぐに東京に行きたいそうなんですよ
で 上原の高橋に確認したら 床が乾いたらニーナ・ニーナさんが
商品搬入があるのでずらした方がいいと言っているんです」
「うん その通りですよ」
「そこで 何時に上原が良いか最終判断は神山部長に確認してくれと
いう事なんです」
「そうか 出られる状態ならば 早くても良いかな
分りました 一回現場と相談して 直ぐに連絡します」
「はい 待っています」
亜矢子に
「ごめんね 直ぐに終るから」
「は~い 分りました」
神山はアルタの高橋に電話した
「神山です お疲れ様です」
「やあ 山ちゃん 聞いてくれた」
「うん それで現場はどう?」
「ええ 床はもう乾いてきているけど もう少しかな 扇風機を入れたよ」
「ありがとう それでニーナ・ニーナは」
「うん さっき商品のダンボールは来たけど久保さんたちはまだですね」
「そうしたら そこまで行っているなら 当初どおり15時ですね」
「ええ 段ボールの数は驚くほどは無いけど 整理しながら
.