2011年6月23日木曜日

Vol.348 鈴蘭 -4-25


今からタクシーを頼めば充分電車に間に合うと言われタクシーを頼んだ 
「さあ でますよ 浴室にショーツの忘れ物は無いでしょうね」
「あるわけ無いでしょ ちゃんとしまったから」
「じゃあこれは」
浴室を開けるとショーツが掛かっていた 
「えっ いやだ私忘れていたのかしら ごめんなさい」
二人は笑った
亜矢子は何も確認しないでバッグにしまった
「種明かしは 今朝 穿いていたショーツさ」
「もう 探したの でも無いから諦めたのよ もう 貴方が隠したなんて」
「ちがうよ 隠したのはベッド ベッドの脇にこうやって苦しそうになって
挟まっていたんだ 僕が取上げると亜矢子と一緒 すけべって
だから分りやすい浴室に干しておいたんだ これが真相です
うそだと思うんだったらショーツちゃんに聞いてごらん」
「わかった もう ありがとうございます」
こんどこそ部屋を出た二人はフロントで清算しタクシーを待った

暫くするとタクシーが来た事を告げられ伊豆高原駅まで行ってもらう
金曜日の朝なのに観光客は結構いた 若いカップルは少ないが
お年よりの団体とかが多かった 
熱海まで二人分の乗車券を買ってホームで入線を待った
曇りの天気予報だったがすこしづつ明るくなってきた
今日一日降らないで下さいと改めて天にお願いした
電車が入ってきた ここに来る時と同じ様に伊豆急ロイヤルボックスが
連結されていたので
神山と亜矢子は迷わずその車両に移った
発車すると亜矢子は急に口数が少なくなったので心配したが
神山が何を言ってもしょうがないと思い仕事の確認をした
手持ち無沙汰だったのでテーブルの赤いボタンを押して
女性の車掌を呼んだ
「ウイスキーの水割りセット2つお願いします」
「はい 畏まりました」
と言って準備して直ぐにもってきてくれた
亜矢子は心配そうにこちらを観て
「朝から 大丈夫? お昼までに出来上がってもしりませんよ」
ようやく口を開いたので
「ほら 何事も準備が大切だろう だから」
「もう しらない」
そう言いながら亜矢子は丁寧に氷をかき混ぜ水割りを作ってくれた
「はい 準備です 絶対に」
笑いながら 乾杯した
出発した時は薄い雲の合間から所々太陽が見え隠れしていたが
今は ほとんど雲はなくなった 海に反射する光がまぶしかった
今日も伊豆急ロイヤルボックスは貸し切りであった
神山と亜矢子はときどきキスをしたり残り少ない
二人の時間を楽しんだ

熱海駅に着くと家族連れやカップル お年よりの団体など
観光客がロータリー前に溢れていた
ホテルや旅館ののぼりを持った客引きたちが声を張り上げていた
そんな勧誘を断って熱海のデパートに入った
婦人用品肌着は3階にあって神山と亜矢子は一緒に売場に行ったが
神山は少々照れくさく亜矢子の後ろを歩いていた
「ねぇ 有ったわよ これ同じ物だわ 大丈夫ね」
「うん そうしたら Lサイズがあるから 僕はLサイズがいいかな」
「大丈夫よ 前に穿いた時 Mサイズでしょ
私 本当はLサイズなの だけどこのショーツは
伸縮するからMで大丈夫よ」
「うん では3枚買おう」
「えっ なんで」
「うん 亜矢子が2枚」
そう言われて納得したので神山がお金を出して会計を済ませた
「そうしたら 化粧室で穿き替えましょ」
「うん でないと魔力が通じないからね」
二人は笑って化粧室で赤いショーツに穿き替えた
神山と亜矢子は赤いショーツに穿き替えると不思議と力が湧いてきた
「ねぇ 可笑しくない 穿き替えただけなのに なんかちがうわ」
「そうかな ぼくは感じないけど」

目的の宝くじ売場にやってきて
「まずは小手試しだ スクラッチを買ってみよう」
神山と亜矢子は売場のおばさんにスクラッチ宝くじを出してもらい選んだ
亜矢子が選んだくじを削っていくと 3千円が当った
「ねぇ やっぱり違うわよ」





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