2011年6月4日土曜日

Vol.329 鈴蘭 -2-23


「はいありがとうございます」
ここ鈴やの向かいにある『ホテル禅 地下 日本料理 四季』では
さきほど夕方6時から副社長の時田と催事課の奥村課長が話をしていた
奥村は時田に先日の神山の一件で注意があると思って覚悟を決めて
部屋に入った 時田が先に来ていて ビールを呑んでいた
奥村は普通じゃないと感じたが 内容が判らないので 先に謝ると
時田は『人は要らない』と謝ってきたと思い 怒った
そこで奥村がきちんと話をするとずれていた事が判った
時田は催事課の将来を考えた時 このまま杉田君に上司をつけるより
部下を付けたほうが いいと判断し午前中に池上店長と美術部長の
3人で話した結果だ
この話は一方的な内容なので 奥村を呼んだと説明された
「私も杉田君が実力を発揮するのは山ちゃんが抜けた後だと
思っていました 実力があるのに山ちゃんに頼っていましたから」
「おお そうだろう 昨日も呑んでいて上司か部下かって聞いたんだ
そうしたら 上司ですって言うもんだから はてと思っていた」
「えっ 一緒だったんですか 翔め 嘘ついたな」
「まあ 怒るな ワシが口止めをした ばれると左遷だってな ははは
いい子じゃな 少し大人になったな 頼もしい うん」
「副社長の口止めですか わかりました 注意しません」
「うん 頼んだよ」
「それで美術もOKを出してくれたんですね」
「うん 最初は拒んださ 彼も売場で実力を出してきているし
そんな良い人材を手放したくは無いよな」
「ええ 私も山ちゃんが抜けるとどうしたものかと考えていました
しかし 屋敷君が来てくれたら大丈夫ですね まあ3年くらいは
大変でしょうけど あと催事課が規模を縮小されなければ
どんどん成長しますね 上野を抜くと思います」
「大丈夫さ 山ちゃんはもう動いている お昼にパレルに行って
ソムリエを負かせたそうだ 何かしようと動いている
催事に仕事が来るんじゃないか その時はワシも応援するよ」
「はい ありがとうございます ソムリエとワインの勝負 凄いですね」
「うん まああちらでは山ちゃんがここに在席をしているかの確認だと
思うが わざわざする事もなかろう そうだろ だからそれだけ
やりあったんだよ 矢野君が悔しがっていたもんな」
「はあ 山ちゃんって催事課の器で無いですね もっと大きいですね」
「そうだろ だから女にもてるんだな 知っているか判らんが
アルタの連中も山ちゃんだぞ それも若いのに 慕われているんだな」
「ええ 2週間ほど前御殿場の件でアルタの皆さんがこられた時も
若いのが山ちゃんと言ってましたので羨ましかったです」
「うん 山ちゃんは裏が無いから 好かれるんだろうな」
時田は仲居を呼んで 簡単な料理とビールや酒を用意させた
奥村はまだ仕事がありますからと断ったが 山ちゃんは呑んでから
仕事をしたと言われ 付き合った
時田からもう直ぐ池上店長が来るから待って居るように言われた
飲み物が来て簡単なおつまみが用意され 時田と奥村は話していた
暫くすると池上 店長が
「遅くなって 申し訳ございません」
お辞儀をしながら入ってきて 2人に挨拶をした
時田が仲居に料理を持ってくるよう伝えた
池上が時田に
「如何だったでしょうか 屋敷君は?」
午前中美術部長を口説いた経緯もあり心配していた
「池上店長 ありがとうございます 催事課で働いて貰います」
「うん そうか良かった なあ奥村君」
「副社長そうすると内示は23日の木曜日 人事命課は30日木曜日
9時30分銀座店で宜しいですか?」
「うん 美術も知っているから 内示は23日で良いんじゃないか」
「はい ありがとうございます」
池上はそう言って携帯電話で秘書課長に電話をし用件を伝えた
「うん そうだ 美術の 屋敷徹君 職級はそのままだ
それと準備があるから 夕方に渡そう 手配を頼んだよ
美術部長に23日は夕方内示を出すと伝えてくれ 頼んだよ」
3人揃って出てくる話は神山の事だった いい評価ばかりだった
時田が杉田翔の事も期待していると池上に言った
杉田の株が上がった事に奥村は喜んだが 35歳になるのにまだ独身で
貫いている事に不安があった 
「大丈夫だ 奥村君 彼は居るみたいだ」
「えっ どうしてそれを副社長がご存知なんですか」
「いやな 昨夜一緒だったと言っただろ」
「ええ」
「その席上で分ったんじゃ 山ちゃんが上手だったははは
今思い出しても 杉田君の慌てた様子が目に浮かぶよ ははは」
「副社長うちの子ですか 相手は?」





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