「お願いね 私寂しいから」
「うん 分りました」
神山と亜矢子は持ってきたワインとビールを呑んだ
時間は早かったが 貸切露天風呂をでて部屋に戻った
亜矢子が
「昨夜はカラオケしたでしょ 今夜は卓球しない ねぇ
私 以前卓球をしていたの だからやろう」
神山と亜矢子はフロントに卓球の予約状況を聞いてみると
空いているのでいつでも使えますと返事が返ってきた
神山と亜矢子はフロントで手続きをすると卓球室に入った
二人はかわるがわるサーブを打って楽しんでいた
神山が大袈裟に打ち損じたり大笑いの連発だった
少しからだが温まってきたのでビールを呑みながら亜矢子と
話をしていると 部屋の外で葉山と高柳がこちらを観ていた
神山は相手にしなかったが 亜矢子は2人より4人のほうが
楽しいからと言って彼女達に近づき誘った
葉山と高柳が
「先ほどはありがとうございます ご馳走様でした」
「うん 寂しそうだったかね 独身最後の旅行が」
「はい 楽しくなりました ワインまでありがとうございます
実は 卓球をしたいと思っていたんですが 満室と断られ
しかし 見てみようって 着たんです」
「そうか 僕らは休んでいるから どうぞ」
葉山と高柳は お辞儀をして卓球をはじめた
最初は簡単にラリーをしていたが そのうち本格的に打ち合いをした時に
亜矢子は はっと気が付いた もしや高校3年の時インターハイで3位に
なったペアではないかと 面影が少し残っていたもう20年くらい前の
記憶だ 間違っていたら失礼だし確かめるのは止めようと思っていた
見ているとあの頃の自分が思い出された 父親を無くし
気分を紛らわせるには卓球しかなかった
その努力が実って3年生の時はシングルで1位に輝いた
3年の時彼女達が2年生でダブルスで3位とはっきりと思い出した
目の前に自分の青春時代が戻ってきた 喜んだ亜矢子は
2対1で打ち合った 最初はラリーで肩慣らしをした
葉山と高柳たちはまだ気が付いていなかった 亜矢子は葉山に
「ねぇ 1対1でやらない」
「ええ お上手のようなので 楽しいです 21ポイントでサーブは3回で」
最初のサーブは亜矢子がした 葉山は返せなかった次のサーブは打ち返し
ラリーが続いたがやはり亜矢子がかった 次のサーブは葉山は上手に
返したが入らなかった 今度は葉山がサーブの番だった
上手な変化球を出しても打ち返された 亜矢子はポイントを落とす事無く
順調だった 15対0で亜矢子が勝っている時に高柳が
「ちょっと待ってください あの間違っていたら申し訳ないのですが
桜川さんは高校3年の時にインターハイで優勝された桜川さん?」
「ええ そうよ」
葉山と高柳はやっぱりと言って
「お手合わせ ありがとうございました」
神山は何を言っているのか分らなかったが 亜矢子が葉山や高柳と
同じ様に卓球をしていた事を知った 高柳が
「私たちは東京三校で出ていました 桜川先輩は県立静岡でしたよね」
「ええ 私も先ほど座っている時思い出しましたよ
残念だったわね 第3ゲーム 最後サービスミスだったでしょ」
高柳はよく覚えていると感心し
「よく覚えていらっしゃいますね ええ あのサービスミスは残念でした」
亜矢子は今度は高柳とプレーを楽しんだ 二人とも青春時代を
思い出し ゲームは楽しく進み終わった
葉山と高柳は神山と亜矢子に
「ありがとうございました いい記念が一杯です
先輩 ありがとうございました 楽しい記念が出来ました」
「良かったわね 今日の出来事は胸の中にしまって置きましょうね」
「はい 分りました ありがとうございます 失礼します」
そういって葉山や高柳は卓球室を後にした
二人が帰った後 亜矢子は笑いながらプレーをし
ワインやビールを呑んだ
少しプレーをすると亜矢子は少し休みたいと言って部屋に戻った
「少し呑みすぎたかしら ごめんなさい」
「うん いいよ 青春時代を思い出せたんだから」
亜矢子は突然泣き出した 神山は はっと思ったが遅かった
「ごめんよ お父さんの事思い出させて ごめん」
「亜矢子は大丈夫よ ありがとう なぜかあの頃の自分が思い出されて」
神山は亜矢子をしっかりと抱きしめベッドに横にした
(参った 反省だ 高校時代はお父さんの事で辛かったんだよな)
神山は冷蔵庫からビールを出してテラスで一人で呑んだ
亜矢子は起きてきそうに無いので寝る事にした
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