洋子が扉を開けると 屋敷が杉田に
「もう 先輩が居なくなったんで 置いてきりぼりだと思いました」
「もう そんなことする訳無いだろ 大丈夫だってバ ねぇー先輩」
「ははは じゃ 行こうか」
「ほら テツ タクシーを呼んでくるの もう 分かっているの 早く」
神山は部屋を出る前に契約書にサインをして洋子に渡した
「では この書類は食事から戻ったら郵便局に持って行きますね」
「うん お願いします」
銀座築地寿司屋いせ丸の奥座敷では若い声が響いていた
「だから テツも早くいい人を見つければいいでしょ もう」
「でも羨ましいなぁー 美佳さんって 先輩には勿体無いですよ ほんと」
「もう そんな事ないってば 美佳も喜んでいるし ほんと」
「ハハハ もういいだろう 屋敷君 早くいい人を見つけなさい」
「でも 相手にしてくれる女性って 誰も居ないんですよ」
杉田には強気の発言をしていたが 自分の話には俯いた
「まぁ そんな事ないでしょ でも焦ったら駄目よ じっくりと観察して
それからアプローチをすればいいでしょ 今は見えていないだけよ
貴方の事を観察している女性は一杯居るわよ 本当よ」
そう言われた屋敷は洋子のことをまじまじと見つめ
「その根拠は何処にあるんですか?」
「だって 神山常務の古巣でしょ催事課って だから注目度が高いわよ
あなたの評判だって悪くないし 本当よ」
「えっ そんな事なぜ分かるんですか、、、?」
「もう 嫌ねぇー 私は元本社人事よ その位分かるわ」
「ほらテツ 田所先輩に任せておけば大丈夫さ へへへ俺と一緒だ」
「まぁ翔君ったら でも本当は自分で探すのが一番よ まあ翔君の場合は
特例中の特例ね 屋敷君 貴方の事を見ている女の子が居るってほんとよ
ただ女性から言い出せないところがあるし そこは貴方も分かってね」
「へぇー そうなんですか 分かりました なにか雲を掴む話ですが
頑張ってみます」
いつものように女将が気を利かせて 若い二人には一杯ご馳走した
「じゃ そろそろ出ようか お腹も一杯になったし」
神山はそういうと竹の札をもち会計を済ませた
次長室に戻ると洋子が神山に
「しかし翔君も大人になったわね 凄いわね」
「えっ」
「だって クリスタル大和の顧問デザイナーの事など一言も話さなかったし
勿論 貴方の出資の件も話さなかったでしょ 大したものね」
「うん 良く我慢したね 大したものだよ でも言える事は 自慢話を
すると そのあとに色々と話さなければいけなくなり それが
自分の首を絞めてきて 仕事に影響して来るんだ だから出来れば
自慢話はしない方がいいし 普通に振舞っていればいいんだよ
ただ 今回の件は一応奥村課長の耳には入れておきます でないと
何かのときに翔だけ悪者にされてしまうからね」
「そうね お願いしますね ふふふ 私 郵便局に行ってきますね」
「うん お願いします そうしたら奥村課長に話してくるよ」
二人は一緒に部屋を出ると神山は催事課の部屋に入った
「やあ 山ちゃん じゃない失礼しました 常務どうされましたか」
「嫌だなぁー 山ちゃんでいいですよ 課長 少し時間いいですか」
二人は会議室に入ると神山が杉田の顧問デザイナーのことを
掻い摘んで話をした
「うーん 別に問題が無いと思うけれど でもね どうだろう?」
「課長 いいでしょ もう契約書も取り交わしたんだし なので翔が
こちらで勤怠に支障が出るようであれば僕に話してください」
「うーん 分かった 失礼 分かりました常務」
二人は顔を見て大笑いし奥村は
「しかし 凄い話ですね 引き出物のグラスがオリンピックの限定販売の
プレミアムグラスに変身するなんて だれも考えないですよ
ほんと 凄いの一言ですよ」
「そうそう そのグラス 販売権は鈴やとアレックスジャパンだけですよ
凄いでしょ」
「へぇー アレックスジャパンが販売するんですか へぇー」
「ええ まだ本社には話していませんが 私がOKをだせば問題ないし
アレックス氏にもあとでFAXを送り 応援してもらいます」
「しかし 山ちゃんの考える事って凄いの一言だよ
大抵は夢とか希望で終わるけれど 実現しちゃうもんね 凄いよ ほんと」
「ハハハ まあまあ では翔のこと お願いしますね」
「はい 了解しました 常務」
「そうそう それからこれで翔のお祝いをしてくださいよ」
神山は奥村に商品券20万円分を渡した
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