2013年11月3日日曜日

Vol.1212 百日紅 -8-69



8月11日 火曜日 晴れ
神山は朝早く出勤をして仕事に集中した
祐子が生理の為 ここのところ早く寝る日が多く 朝は早起きをしている
10時の開店時間近くになると3F婦人肌着売場の銀座物語に出向いた
「神山顧問 おはようございます」
ニコニコと迎えてくれたのは 吉永美由紀販売担当専務だった
「やあ 今日からですね 素敵なコーナーが出来てよかった」
昨夜は杉田と屋敷が残業をして柱巻きの飾り付け ポスターやPOPの
飾り付けをし なんとか見られるコーナーになった
杉田と奈々子 屋敷も来ていて神山に挨拶をした
婦人服部長が神山に
「山ちゃん 吉永さん張り切っているよ ほんと頑張りやさんだね」
「ええ 昨日 お父さんにお会いしたんですが そう話していました
でも いいですね 何か活性剤のようで」
「ははは 隣のルコーワやバードが驚いていたよ」
「そうでしょ 隣の三山でも面積効率が良いですからね」
「そうだな これでルコーワやバードも力を入れてくれると思うよ」
「ええ 切磋琢磨しないと そのままですからね」
「そうそう それで紳士服飾部長にNNメンズの話をしたんだ そうしたら
凄い乗り気で 是非とも1等地で展開したいと話していたよ」
「わぁー ありがとうございます でも なぜご存知なんですか」
「ははは それはNNから話は入ってくるよ ほら山ちゃんが素敵な
ジャケットで店内を歩いているだろ たまたまだけどね NNの
久保チーフと話す機会があって その事を本人から聞いたんだ」
「あー なるほど まだ試作品ですから 知っている人はごく一部です」
「いつもお世話になっているからさ 紳士服飾部長に会うといいよ」
「そうですね ありがとうございます」
神山はお辞儀をすると部長が
「山ちゃん 専務が部長にお辞儀をしたら可笑しいよ ははは」
「ははは はい」
神山は婦人肌着の売場なのでなるべく早く脱出し杉田に任せたかったが
開店時の客導線も観察したく残っていた

10時の開店メロディーが流れると 従業員は一斉にお辞儀をして
お客を迎えた
エレベーターやエスカレーターを利用し 婦人肌着売場で最初に
目に入るのが銀座物語コーナーだった
15分ほど見ていたが お客が付いていて売り上げに繋がっていた
よく観察していると 銀座物語お買い物券と現金を払う客が多かった
「部長 快調ですね でも現金だけではなく お買い物券利用が
多いように見受けられますが」
「うん 彼女からの提案で 今月一杯はお買い物券を持参されたお客様は
店頭の商品を1割引にするそうだよ 場合によっては2割まで引くそうだ」
「わぁー そうしたら三山はたまったもんじゃないですね」
「ははは まあね しかし新規オープンだから仕方がないかな」
「しかし凄い勢いですね 1万円札ばかりですよ」
「うん 確かに これだと今日の売り上げが楽しみだね」
「そうですね 確かに 例のNNの事もありますし」
「うん また店長からご褒美かな」
「ははは 分かりました 後ほどビールをお持ちします 今夜は精々
浴びるほど呑んでください」
「ははは お待ちしています」

神山は杉田と売場を離れると 紳士服飾部長に会いに行った
「やあ山ちゃん おはようございます」
「部長 聞きました これがそのNNのジャケットとジーンズです」
「ほぉー 素晴らしい 綺麗な仕上がりですね ラインも美しいよ」
神山は脱いで部長に手渡すと
「わぁー 軽いね なるほど 凄くいい商品です 山ちゃん是非これを
1等地で展開させてください お願いします」
「はい そうそう この他にシャツやシューズ バッグなどトータルで
展開する事になりますよ 大丈夫ですか」
「勿論だよ 大丈夫さ」
「仕入れの時に類番を一緒にして頂かないと 取り扱い売場がバラバラで
訴求力が落ちます そこをお願いします」
「うん 約束するよ 大丈夫です しかし上品な輝きですね もしかして
この軽さや輝きですが シルクですか」
「さすがですね ええ シルクが入っています」
「綺麗だ うーん で幾らなの」
「正式ではないですが45万円です」
「うーん さすがNNの商品ですね 勿論パリでしょ」
「ええ 先日空輸されてきたばかりです ははは」
「羨ましい ほんと それで場所はあそこの角地 いい場所だよ」
「そうですね 中央階段の目の前だしエレベーターからも見えるし」