「おいおい 山ちゃん もっと頑張ってくれよ
来年もその次の年も永遠に ねぇ 久保君」
「そうですよ 毎年 受賞しちゃってください 私も、、、」
「うん?私も、、、 どうした 久保君」
「ええ 私も 凄く嬉しいですよ」
「それはそうですよね 銀座一のデザイナー 神山部長と一緒に
仕事が出来て そして設計を聞かれた時 胸を張れますよね
実は アルタでも山ちゃんの仕事をしていると 一目置かれるんです
その位 凄い人ですよ 山ちゃんは」
「おいおい 誉めすぎだよ そんな事ないから 久保さん」
「いえ 本当の話です 例えば今度の什器搬入の配車にしても
普通考えられないんですよ」
筒井と祥子 神山は高橋の話を聞きながら箸を進めていた
「だって 配車先がライバル会社の専属ですよ
普通考えたって どう転んでも協力はしてくれないでしょ」
筒井も祥子も そこまでの事情は知らなかった
ただ 25日の什器搬入がアルタの手配したトラックだと
夕方になってしまうが 神山が何処かに頼んだ事によって
24日の夕方に搬入され 一日早くなったと
ニーナ・ニーナでは そこまでしか知らなかった
改めて 筒井と祥子が神山を見て
「そう言う事情は知らなかった 恩にきる ありがとう」
「そうでしょ そこを山ちゃんの顔で 出来ちゃんですよ
だから 私は今 会社でも一目置かれていますよ」
「なんだよ 孝ちゃん その事で一目置かれてんの?」
「いやいや ごめん 例えですよ 山ちゃんの仕事の」
「なんだ例えなら 一目置かれていないんだ」
「もう どうしたの 今日は 一目置かれています」
「まあまあ 山ちゃんは そんなに凄いんだ そうすると
これからは 気軽に『山ちゃん』と呼べないな ねぇ 久保君」
「ええ しかし、、、私は神山さんと呼んでいますよ」
「ははは そうだったね ごめんごめん」
「いやだぁ ご自分の事 私にふって~」
笑い声が店中に分るくらい大きな笑い声だった
この駅前寿司屋は最終電車が終っても安くて美味しいと評判で
家路に着く前 軽く呑み直しをする客が居るので
客を見ながら少しの間営業している
逆に給料日前など客足が悪い時は早めに閉めてしまう
今日は給料が出た後で 金曜日と重なりお客は結構多い
雑談を済ませると 筒井が
「そうすると あと1週間で出来上がりですね 楽しみです」
「はい 少し余裕があります 任せてください」
「分りました そうしたら 私はここで失礼するよ」
「えっ まだいいでしょ 筒井さん」
「いや 神山部長のように若くないから」
「そんな ねぇ 久保さん」
「いやいや ほんと帰ります では高橋さん 頑張ってください」
「あっ それでしたら この券 使ってください
内藤から 指示されていますから お疲れ様でした」
筒井はタクシー券を受け取ると 立ち上がる祥子を制して明日の
スケジュールを確認し 神山や高橋に 挨拶をして出て行った
「神山さん そんなご苦労があったなんて知りませんでした」
「いや 今までのお付き合いで お願いしただけさ」
「へぇー お顔が広いんですね」
「そうでしょ 久保さん だから凄いの 山ちゃんは」
「まあ それはそれとして オープンは4月26日で何時?」
「それは11時です 変更はありませんよ」
「そうか そうしたら 少し余裕が出来たんだ」
「ええ 25日の引渡しを先日伺った時
商品陳列などで徹夜の作業を覚悟していました」
「すみませんでした 早くできると言っておきながら、、、」
「いいよ 孝ちゃん 済んだ事だからさ」
神山と祥子は鮮魚のおつまみを食べていたが
高橋が食事をしていない事に 気が付き
「孝ちゃん 何も食べなくていいの?」
「うん もう直ぐ終るし それに夕食が遅かったから 大丈夫です」
「遠慮しないで食べてよ 今夜は僕がごちそうするから」
「そんな 内藤に怒られます だめです」
高橋は内藤から言われているのか ご馳走にならないと言い張った
「わかった そしたら ご馳走になります」
神山が仕事以外の事を話しすると
祥子も時々参加して楽しい時間が過ぎた
高橋がジャケットの袖口に 真奈美からプレゼントされたものと
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