今後もお時間が空きましたら 是非小田原に遊びに来てください」
そう言うと若者皆で再び深々とお辞儀をしてカフェを出て行った
「赤坂さん 今時珍しく礼儀正しい若者達ですね」
「そうですね 私も驚いています」
「そんな 赤坂さんのご指導の賜物ではないですか」
「私なんかより 課長達がしっかりしているのですよ
私は飾り物です ははは」
二人は顔を見合わせ笑っているところへ
「わ~あ この方が鈴やの神山様ですか」
振り向くと今度は若い女性達がこちらに来ていた
「常務 紹介してくださいよ お願いします」
彼女達は私が最初と言わんばかり 部長にせがんだ
「はいはい 分ったから 整列してちょうだいな」
「は~い」
と言いながら何とか並んだので 赤坂が左から紹介して行った
「ありがとうございます 神山様 また小田原にお越しください
その時は 赤坂ではなく私達をご指名してくださいね
カラオケやテニスも出来ますよ お待ちしていますね」
伝えたい事を言い終えると
先ほどの若者達同様深々とお辞儀をして出て行った
「彼女達もしっかりしていますね 本当に」
「ええ やはり課長達がしっかりと教育しているのでしょう」
先ほどの若者達や彼女達を見ていると若さが羨ましかった
もう一度20代に戻ってみるのもいいかなと感じていた
カフェにはまだ10人位居るが 作業服や事務服の姿がまざり
夢中になって話し合っていた
4月の初夏に向かう陽射しが窓から差込み
若者達を更に元気にしているように見えた
神山はどうしても喫煙をしたくなり赤坂に申し出ると
「それでしたら テーブルのボタンを押してください
そうすると ファンが廻りますよ」
神山は言われた通りすると
テーブルのセンターにある虫かごみたいなネットの中で
ファンが『ゴォーン』と唸り声をあげ回転した
「皆さんは吸われないんですか?」
「そんな事無いですよ
吸うのも居ますがたまたま今は居ないだけでしょう」
「しかし 参りましたね 何故私の事が分ったのですか?」
「それは やはり知名度が高いからですよ
私達の工場でも若い者は皆知っていますよ」
「そうなんですか、、、」
「どうされたんですか?」
「いえね そんなに有名だと
小田原では悪い事出来ないな~と思いまして」
赤坂と神山は顔を見合わせ笑った
ロレックスを覗くと2時を少し廻っていた
「それでは赤坂さん ありがとうございました
そろそろ お邪魔します」
「そうですか もうそんな時間ですか
こちらこそ 田舎までお越し頂きありがとうございました
熱海のお時間は何時でしょうか?」
「えっ 3時ですが、、、」
神山は高橋から連絡を受け知っているのだと確信した
「それでしたら 熱海まで車で行ってください
丁度 田代君がそちらに用件があるものですから」
「はい 分りました お願いします」
赤坂はカフェのカウンターにある電話で連絡をとり席に戻ると
「本当にお忙しい処お越しくださいましてありがとうございます
表玄関に車を用意しましたので行きましょう」
「こちらこそ 色々と勉強しました ありがとうございます
それから ニーナ・ニーナの件ですがお願いします
24日の朝一番には第二貨物が来る予定になっています」
「はい お任せてください 昨日 第二貨物さんと
連絡を取り合い 上原には夕方ごろつきます」
二人はエレベーターを使わずに階段で下る時
「神山様 これは私の携帯番号とメアドです」
赤坂は今回の秘密を共有している声で伝えメモを手渡した
「何かございましたら 遠慮なくご連絡ください」
神山はどう答えていいか分らず
「はい ありがとうございます」
と言い メモを受け取った
「それから これは内藤からの連絡です 車の中でどうぞ」
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