茶封筒に『神山様』と内藤の字で書かれた物を渡された
「はい分りました なんだろう?また仕事かな?」
裏にはしっかりとセロハンテープで止めてあり
「ここで破いて見てはだめなのですね」
「ええ 内藤からもその様に指示されていますので、、、」
神山はカメラバッグの中にしまった
表玄関に着くと社員達が見送りに来ていて
先ほどカフェで挨拶をした若者達も参加していた
「やあ 先ほどはありがとう これからもお願いしますね」
「はい 任せてください だいじょう~ぶです なぁみんな!」
「は~い 任せてください 大丈夫ですよ~」
神山は見送りの人達に深々とお辞儀をし車に乗った
田代が運転する車は小田原駅に向かわず山の中に入っていった
間もなく山を下ると西湘バイパス風祭ICに出た
「そうか 先ほど赤坂さんから地形を説明されたけど
箱根登山鉄道の風祭に近かったんですね」
「そうなんですよ 熱海に行く時はいつも 小田原に出ないで
この道を来るんです 近いし 信号がないし」
「なるほど さすが田代さん」
「神山さん 少しだけ飛ばします」
「はい 分りました」
神山は赤坂から受け取った内藤の茶封筒を破って手紙を出した
【山ちゃん お疲れ様でした 小田原工場は如何でしたか
特に社員達の態度には驚かれたと思います
実はあの工場は職業訓練校も兼ねて運営をしている
関係で礼儀正しさが自然と身に付くのだと思います
現在200名くらい居る社員の40名位はまだ訓練生ですが
しかし技術はどの子をとっても社員と変らない技術力でしょう
今後も、、、、、、、、、、
最後になりましたが 私の気持ちお納めください
今まで休み無しで働いてくださったお礼です
緊急時には赤坂なり私に電話くださいね
それでは気をつけて 楽しい旅行をしてください】
読み終えた神山は(なんだ 全部バレバレか、、、)と思った
茶封筒には現金20万円と何軒かホテルの無料宿泊券が入っていた
今回は予約せずに来てしまったので どこに行こうか迷っていたが
これだけ宿泊候補があると逆に行き先に悩んでしまう
当初 網代の清碧旅館でゆっくりとしようかと考えたが
まだ10日も経っていないのでどうしたものか思案していた
(まあ 熱海で亜矢子と逢ってから決めても良いか)などと
安心すると あくびを出してしまった
一生懸命運転している田代に悪いと思ったが 遅かった
「神山さん どうぞゆっくりしてください
熱海駅につきましたら起こしますから」
「ごめんごめん ではお願いします」
4月17日 金曜日 夜
「ごめんね 返事が遅くなって」
神山は銀座の店を退社する時 祥子に連絡をとった
「大丈夫よ それでバックヤードに置く事OK?」
「うん 大丈夫だよ アルタから先ほど最終的に返事が来た」
「ふぁ~ 嬉しいわ これで準備も本格的に進められるわ」
「良かったね 本当に」
「ええ 貴方のおかげよ 助かったわ」
「しかしオープニングセレモニーの件だけど印刷物は間に合った?」
「ええ なんとか大丈夫よ 本当は見切り発車していたの、、、」
「えっ?」
「実は14日の夜にアルタの高橋さんと食事に行ったの」
「うん」
「その席上で私が筒井に招待状の件を話をしていたの」
「うん」
「そうしたら 高橋さんが25日には引渡しが出来ますと
仰ってくださり4月26日日曜日オープンで筒井も喜んでいたの」
(そうか 14日には話していたんだ
だから16日のうなぎ屋で困っていたんだ だけど全てOKだ)
「ねえ 聞いている ごめんなさい 勝手に走って」
「ううん 違うよ 全て良い方向で進んだから良かったと
考えていた所だ」
「それでね 先ほど届いたDMを皆で宛名書きしているの」
「そうか 手伝いに行こうか うちにも居るよ達筆な人が」
「ううん 大丈夫よ
それより店長さんはご出席してくださるかしら?」
「伝えてある? だれかに?」
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