ここからの眺めは 山側に新幹線を見ることが出来るが
反対側は山になっていて 海を見ることは出来なかった
それでも 南西の位置に海を望めるが 遠かった
町並みを一望できるので 注意すると人がまばらだった
メインストリートは屋根がありはっきりしないが
歩道が露出している所には 観光客らしき人の姿は見えず
この頃では観光客が少なくなってきていると聞くが事実だった
もっとも まだ3時過ぎなので
夕方 夜になれば観光客などで賑わうだろうと思った
この時期熱海はこれといった観光が無いので客が少ないのか
年が明ければ熱海の梅園で梅が咲き賑わい桜の時期まで
観光客は一杯になり ホテルも旅館もフル回転になる
夏は夏で海水浴客が来るので この時期もリゾートホテルは
満室になる そう考えると 今は春でなく夏でも無いので
一番空いている時期だった
暫く街並みを見たあと 小田原工場の報告をしようと携帯を出した
最初は由香里に電話をした
「神山です」
「はい 私です どうしたの?」
「うん 小田原工場だけど順調です 明日皆に伝えて」
「いいけど どうして?」
「朝一番に電話できなかったら 心配するでしょ だから」
「わかったわ」
「温泉饅頭って 食べる?」
「ええ 好きよ 食べるけど?」
「意味は無いよ お土産さ 買っていくよ 待っててね」
「は~い 待っています 気をつけてね」
神山は電話を切ると筒井に電話した
「神山ですが」
「おお 筒井です こんにちは」
「こんにちは 今 アルタの小田原工場を見学しました
上原の什器類ですが 綺麗に仕上がっています 順調ですよ」
「そうか 山ちゃんが言うのだから大丈夫だな」
「ええ 大丈夫です 24日はこちらから直接上原に行きます」
「確か休みだろ 大変だな」
「大丈夫です 明日はゆっくり静養し鋭気を養いますから」
「ははは、、、 久保君には僕から連絡しておこうか?」
「ええ お願いします 忘れると大変ですから」
「わかった では気をつけて」
神山は大切な電話を終ると安心したが 亜矢子が心配になった
携帯電話をポケットにしまおうとした時にベルが鳴った
「はい 神山です」
「亜矢子です ごめんなさい 遅くなって もう直ぐ熱海です」
「分った では改札口の傍に立っているよ」
「は~い ほんと今 トンネルに入り、、、、、、」
電話が切れてしまった 神山は大急ぎで階段を下り駅まで走った
改札口に着くと入線が終っていて 改札口に向かってくる人が多く
果たして亜矢子は分るだろうか 危惧をしていた
目を凝らし探していると 亜矢子が手を振って小走りに来た
「やあ 久しぶり」
「ええ ごめんなさい 遅くなって」
「いいよ 熱海の街並みを見ていたから」
神山はデパートの屋上を指差し 亜矢子に言った
亜矢子はにこっと笑みを見せほほに軽くキスをした
神山は今夜の宿を決めていなかった
どこかで亜矢子と相談したかった
亜矢子は蒸気機関車が飾ってある所に行き座って神山を手招きした
「そうよね あなた忙しすぎるもの」
「う~ん まあ そうだね ゆっくりとは検討できないしな」
神山はホテルの無料宿泊券を見せた 驚いた亜矢子は
「どうしたの こんなに それに有名なホテルばかり、、、」
「うん 仕事の関係で手に入ったんだ どこに行きたい」
亜矢子はどこのホテルも甲乙つけがたく 迷っていた
「そうしたら 連泊がいいか 日替わりにするか?」
「それは連泊の方が落ち着くわ でもほんと 迷うわ」
「そうしたら 伊豆高原にするか?」
「そうね 私 1回行きたかったの」
「それだったら 早く言えばよかったじゃないか こら」
神山は亜矢子のおでこを 人差し指でちょんと触った
亜矢子は逃げずに受けて くすっと笑った
よく見るとスリムGパンに白のTシャツ 麻のジャケットと
神山と一緒で 神山自身 驚いていた
Gパンの色も形も一緒でリバイスのスリムだった
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