2011年2月28日月曜日

Vol.233 青葉 -4-18


ここからの眺めは 山側に新幹線を見ることが出来るが
反対側は山になっていて 海を見ることは出来なかった
それでも 南西の位置に海を望めるが 遠かった
町並みを一望できるので 注意すると人がまばらだった
メインストリートは屋根がありはっきりしないが
歩道が露出している所には 観光客らしき人の姿は見えず
この頃では観光客が少なくなってきていると聞くが事実だった
もっとも まだ3時過ぎなので
夕方 夜になれば観光客などで賑わうだろうと思った
この時期熱海はこれといった観光が無いので客が少ないのか
年が明ければ熱海の梅園で梅が咲き賑わい桜の時期まで
観光客は一杯になり ホテルも旅館もフル回転になる
夏は夏で海水浴客が来るので この時期もリゾートホテルは
満室になる そう考えると 今は春でなく夏でも無いので
一番空いている時期だった

暫く街並みを見たあと 小田原工場の報告をしようと携帯を出した
最初は由香里に電話をした
「神山です」
「はい 私です どうしたの?」
「うん 小田原工場だけど順調です 明日皆に伝えて」
「いいけど どうして?」
「朝一番に電話できなかったら 心配するでしょ だから」
「わかったわ」 
「温泉饅頭って 食べる?」
「ええ 好きよ 食べるけど?」
「意味は無いよ お土産さ 買っていくよ 待っててね」
「は~い 待っています 気をつけてね」
神山は電話を切ると筒井に電話した
「神山ですが」
「おお 筒井です こんにちは」
「こんにちは 今 アルタの小田原工場を見学しました
上原の什器類ですが 綺麗に仕上がっています 順調ですよ」
「そうか 山ちゃんが言うのだから大丈夫だな」
「ええ 大丈夫です 24日はこちらから直接上原に行きます」
「確か休みだろ 大変だな」
「大丈夫です 明日はゆっくり静養し鋭気を養いますから」
「ははは、、、 久保君には僕から連絡しておこうか?」
「ええ お願いします 忘れると大変ですから」
「わかった では気をつけて」
神山は大切な電話を終ると安心したが 亜矢子が心配になった
携帯電話をポケットにしまおうとした時にベルが鳴った
「はい 神山です」
「亜矢子です ごめんなさい 遅くなって もう直ぐ熱海です」
「分った では改札口の傍に立っているよ」
「は~い ほんと今 トンネルに入り、、、、、、」
電話が切れてしまった 神山は大急ぎで階段を下り駅まで走った
改札口に着くと入線が終っていて 改札口に向かってくる人が多く
果たして亜矢子は分るだろうか 危惧をしていた
目を凝らし探していると 亜矢子が手を振って小走りに来た
「やあ 久しぶり」
「ええ ごめんなさい 遅くなって」
「いいよ 熱海の街並みを見ていたから」
神山はデパートの屋上を指差し 亜矢子に言った  
亜矢子はにこっと笑みを見せほほに軽くキスをした
神山は今夜の宿を決めていなかった
どこかで亜矢子と相談したかった
亜矢子は蒸気機関車が飾ってある所に行き座って神山を手招きした
「そうよね あなた忙しすぎるもの」 
「う~ん まあ そうだね ゆっくりとは検討できないしな」
神山はホテルの無料宿泊券を見せた 驚いた亜矢子は
「どうしたの こんなに それに有名なホテルばかり、、、」
「うん 仕事の関係で手に入ったんだ どこに行きたい」
亜矢子はどこのホテルも甲乙つけがたく 迷っていた
「そうしたら 連泊がいいか 日替わりにするか?」
「それは連泊の方が落ち着くわ でもほんと 迷うわ」
「そうしたら 伊豆高原にするか?」
「そうね 私 1回行きたかったの」
「それだったら 早く言えばよかったじゃないか こら」
神山は亜矢子のおでこを 人差し指でちょんと触った 
亜矢子は逃げずに受けて くすっと笑った
よく見るとスリムGパンに白のTシャツ 麻のジャケットと
神山と一緒で 神山自身 驚いていた
Gパンの色も形も一緒でリバイスのスリムだった





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2011年2月27日日曜日

Vol.232 青葉 -4-18


少量づつ色々種類があると それだけで楽しい気分になれた
神山はなるたけ仕事の話はしないつもりだが
今日は少しだけ違った 杉田の失敗談や
アルタの配車など話していると
「あなた 疲れているのね 普段そんな話しないのに」
「そうか 疲れているのかな~ そんな事無いよ
ところでご夫人のプレゼントだけど なにかあった?」
「ええ 色々と考えたの だけど彼女デザイナーでしょ」
「うん まあファッションではないけどね」
「そうね だから難しいわ ニーナ・ニーナの商品だと」
「なんで?」
「うん もっと レベルの高いブランドよ 
だってロレックス2つよ」
「そうか 例えばシャネルとか 超有名ブランドかぁ~」
「そうね ニーナ・ニーナもパリに行けば大変有名よ
だけど日本では まだまだマイナーだし、、、」
「そうだよね 僕なりに探してみるよ」
「ええ 私も気が付いたら電話するわ」    
神山と祥子は箸が進み おなか一杯にし店を出たら22時だった 
美味しい中華を堪能した二人には まだ時間があった
祥子が
「ねぇ 久しぶりにカラオケ行かない?」
「そうだね 行こう」
二人はホテル近くにある カラオケBOXに入った
若い女の子は丈の短いYシャツでおへそ丸出しで歩いていた
夜になるとまだ肌寒いのに 見ていると自分が寒くなってくる
男の子はさすが半ズボンの格好は居ないが 
それでも真夏と間違える ファッションをしていた
会社帰りの二人連れは少なくないが 
肩を寄せ合い男性がリードして
女性は甘えるように肩に寄りかかって歩いていた


4月22日 水曜日 15時 ◎
「神山さん 着きましたよ 熱海駅ですよ」
神山はどこからか聞こえてくる声で起きた
「やあ すみません 気がつかなかった ありがとうございます」
「いえいえ まだ 3時前ですが大丈夫ですか?」
「ああ ありがとうございます」
「それは良かったです」 
「それより 26日のゴルフはすみませんね」
「いえいえ 全然気にしていませんから ほんとうに
アウトレットが始まれば いつでも出来るでしょう
それより 神山さんは 御殿場までどうやって来ますか?」
「そうだよね 毎回 田代さんとはいかないだろうし、、、」
「そうですよね 私も都合よく上原に行かれれば良いんですけどね」
「まあ その時はその時さ 兎にも角にもありがとうございました
それと24日の什器ですが お願いしますね」
「はい 了解です あっ これ私の携帯番号です」
「はい わかりました では」
神山は田代の車を降りると手を振って見送った
田代は取引先に向かうのでここで別れた
(さて 時間が出来たな さてどうしたものか
余りうろうろしてネコに見つかっても ややこしいし)
亜矢子から1時間位遅れると連絡を受けたものの
待ち時間が中途半端で動けなかった
居酒屋は開いているが 呑みすぎると夕飯の時美味しくないし
色々と考えた末 駅公舎にある喫茶店に入った
外の景色がよく見えるところで コーヒーを啜った
よく見てみると ロータリーになっているタクシー乗り場には
水曜日なのに家族連れとか若いカップルが目に付いた
小さい女の子が父親にぶら下がったり 男の子は母親に
キオスクを指差しなにかねだっている様子だ
もっと年寄りが多いと思っていたので意外な発見だった
魚屋の若者が大声をあげて客引きをしているが
なかなか寄り付かないで 知っている人は
熱海でも別なところで買っていそうだった
コーヒーも2杯飲むと3杯は飲めなかった
窓の外にデパートが正面にあるのでそこに行くことにした
地方のデパートと言っても地域一番店らしく
品揃えもしっかりしていたが 単価は安く設定されていて
結構集客はあり賑わっていた
女性客が殆どで 男性が店内をうろうろしていると変に
思われそうなので エスカレーターで屋上にでた





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2011年2月26日土曜日

Vol.231 青葉 -4-18


奥村は予算を気にしていたが 予算内で収まりそうなので安心した
管理職は予算管理が主なる仕事で あとはおまけみたいなものだった
勿論 課員の動向も気にしなければいけないし管理も必要だが
余程酷い事件を起こしたとかなければ監督責任は問われない

「やあ 孝ちゃん おばんです」
「いらっしゃい 丁度よかった 照明が入りましたよ 今朝のも」
神山は18時過ぎまで催事課で仕事をし 上原の現場に直行した
「いいですね 思った通り柔らかい いい光線ですね」
「ええ 外光と調和して 商品が映えますね」
「あとは実際に陳列した時 どうかだね」
「そうですね 楽しみです」
「それから 孝ちゃん26日のゴルフOKだよ 正式に」
「良かったですね 胸を張って行かれますね」
「田代さんが可哀相だけどね 御殿場が始まったら行かれるしね」
「そうそう 今度はこちらがいかれないかもね」
ゴルフの話をしていると祥子が店内に入ってきた
「こんばんわ お世話になっています」
「やあ」
「いらっしゃい 久保さん」
「ふぁ~ 素敵なひかり やさしいひかりねっ 神山さん」
外光は青がかった色をしていて 商品が死んでしまうので
天井の照明で光の色を調整しなければならなかった
今日の祥子はベージュのパンツに白のTシャツ 
淡い藤色のジャケット姿だった
「久保さん ちょっとこっちに来て」
神山は窓際に居る祥子を壁面のほうに招き 光の色を確認した
「うん 綺麗にでるね このベージュが綺麗に出れば問題なしだね」
祥子も自分のパンツを見て 頷いた
「もしかして お店より明るいかもしれないわ」
「うん 明るさは照度と言うんだけど確かにあるね ねっ孝ちゃん」
「ええ でもほんの少しですよ 店でも光の色を考えてくれれば
もっと 明るく感じるでしょう
ちなみに今流行っているのは ピンスポットですが これは明るく
色もいいので 皆使い始めてきてますよ」
「そうだね 新宿伊勢仁とか高丸とか使っているね」
神山は祥子に気に入ってもらい満足していた
当初は もっと一般的な照明を考えていたが 日中外光を
取り入れる事に変更され 神山が提案した照明の色になった 
「孝ちゃん 晩飯は?」
「うん まだだけど どうします」
「現場は?」
「うん さっき食べたよ」
「出られる?」
「う~ん ちょっと難しいかな たまには2人でゆっくりしたら」
「そうします 明日は日曜日だけど 工程表どうり?」
「うん サインなど来ますよ 工程どおり」
「そうしたら 朝 立ち寄ります」
「朝までに綺麗になっていますよ お楽しみに」
「それでは」
神山は手を振ったが 祥子は深々とお辞儀をし店を出た
「さあ 祥子 どこに行く?」
「渋谷なんだけど 美味しい中華があるの そこでいい?」
「いいけど よく知っているね」
「ううん 貴方が御殿場に行った時 高橋さんにご馳走なったの
筒井も美味しいって 楽しかったけど 私は寂しかったわ」
神山は14日内藤夫妻 田代と4人で御殿場に行き楽しい
思いをしたが 祥子には寂しい思いをさせてしまったと思った

坂を下ると空のタクシーが来たので乗車して行き先を伝えた
二人だけで夕食するのは久しぶりなので 気分が高まった
中華料理店に入ると土曜日で結構賑わっていたが
丁度 夜景が見える窓際が空いたので 案内された
祥子が言うように店内は綺麗なつくりで 
ごてごてした飾りは無かった
神山もここはいいところだと 祥子を誉めた
神山と祥子は何にするか 決めかねていたが祥子が
「ねぇ 単品で少しづつ 頼んで 最後におそばはどう?」
「うん よし決めよう」
神山はウエイトレスを呼び 先にビールを注文した
ビールがくるまで 10品位候補を出し 彼女に注文した
料金も安く 親切なのでますます気に入った 後は味だけだった
ビールが来るとすぐ無くなるのでピッチャーも頼んだ
暫くすると テーブルの上は料理で一杯になった





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2011年2月25日金曜日

Vol.230 青葉 -4-18


祥子はお金を受け取ると包装しようとしたが 神山は
「直ぐに使うからこのままでいいよ」
神山は値札やタッグを取って貰い
ポケットに入れてあったお札を入れた
折りたたんだ時のしわが出ないし シンプルで気に入った
「ご無沙汰しています」
浜野由貴が近寄り話し掛けてきた
「どうですか 仕事は?」
「ええ 先日社長から注意を受け 謙虚に進んでいます」
浜野は神山が全てを知っていると思いあっけらかんと話した
「うん 会社の販売戦略は必要だからね」
あたりさわりないよう 伝えた
「神山部長 久保さん素敵なバンドルされているのご存知?」
「ああ さっきちょっこと見たけど それがなにか」
「私も ほしいな~と思っているの」
浜野は財布にしまったお札を見ていたのか 甘えてきた
「君だって 魅力的だよ 買ってくれる人いるんだろ」
「ぜんぜん だから神山部長に頼もうかなっ~」
「はいはい 浜野さん お仕事お仕事よ」
祥子は浜野が仕事以外の話をしているので注意した
「ねぇ 内藤夫人になにかプレゼントしたいんだけど、、、」
「そうね ロレックスを2つも頂いたしね」
「今すぐでなくて良いけど 一応頭に入れておいて下さい」
「は~い 電話ください」
神山は頷き 店を出てから直ぐに電話した
「久保です」
「ああ 僕だけど」
「昨夜はありがとうございます
今夜お礼がしたいのですがお時間は?」
「ああ 上原の現場で待っています 大体7時には居ます」
「はい かしこまりました では失礼します」
神山は傍に誰かいて私語が話せなかったんだと思った
部屋に戻ると 杉田に買ったばかりの札入れを見せた
「先輩 かっこいいですよ シンプルで柔らかくて」
そう言いながら表側をじろじろと見回したが 
どこのブランドか分らず
「どこのブランドですか?」
「店内で売っているよ」
そう言って 残っている仕事を精力的にこなして
「翔 お中元のデザインはどこまで進んでいる?」
「ええ 一応先輩からFAXしてもらったのと コレです」
神山は自分のデザインを上手に利用してデザインされているので
「よしOK あと残っていないか」
「ええ 制作する物は全てOKです」
「そうすると1階メインのフラッグだけだな」
「そうですね」
「造花のサンプルとか 刷り物の色出しはどうなっている?」
「ええ 垂れ幕やPOP関係はOKです 先日工場で確認しました
あと造花が綺麗な緑が無くて探しています」
「うんそうなんだよ オレも苦労したよ 確か浅草に
1件取り扱っているところが合ったけど 
今も輸入しているかどうか?」
神山は早速電話した
お店は大きいので潰れていないと思ったが 電話は通じた
責任者も覚えていて 当時の輸入品もあることが分った
「翔 『浅草 大正堂』にサンプルを依頼した 責任者は須藤さん
それで 明日届くから 倉さんと相談してくれ いいな
ここはいまでも上野店に口座はある
取引高など詳細は由香里姫にお願いする」
「はい 了解です」
神山は奥村にお中元のデザインを報告した
造花を除いて順調に進んでいる事
造花は大正堂からサンプルを取り寄せること
などなど話し 翔も交えて詰めていった
由香里に浅草 大正堂の口座確認と取引高を確認してもらう
「神山さん 大正堂の件 大丈夫ですよ
毎年 だいたい250万位取引があります 銀座より多いわね」
「うん 正月の飾付けなどは一箇所で買うから ちょっと違うね」
最悪 大正堂で購入することもその時決まった
「そうしたら 倉さんに伝えておいて下さい 
多分ウインドーで使うし ある程度確保しないと、、、
それと倉さんにメモして置きます」
「うん そうだな 翔も気が付いたら 頼んだぞ」
「はい 了解しました」





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2011年2月24日木曜日

Vol.229 青葉 -4-18


しかし 今回のように上野が予算を握っている時は こちらでは
どうにもできませんよ そこは分ってください」
「はい しかし今日のように 予算達成すれば会社も出しますよ」
「そうですね 戻入が絡んだ時は 私のところに直接来て下さい
こじれると ややこしくなるだけですからね」
「はい 分りました お休みのところ済みませんでした」
(休みじゃないぞ さては翔かな それともこのTシャツかな)
「いえいえ では」
お互いにお辞儀をして 部屋を出ると由香里や翔 奥村がいて
「どうもありがとうございました」
「いえ ご迷惑をお掛けしました
杉田さんどうも ありがとうございました では失礼します」
そう言うと矢部は部屋を出て行った

「山ちゃん どうしたの 凄いね」
「そうよ だってあの人お茶を出しても無口で 怖かったわ」
「先輩 ありがとうございます ほんと助かりました」
「ええ それより先に売場に電話します」
神山は雑貨部長に電話をして 事の経緯を話した
部長もホテルオートモの数字は把握していて 神山は誉められた
矢部が相談に伺う件と現状では催事予算で出来ない事を伝えた
「うん 分った しかし神山部長 有名ですね」
「そんな事ないですよ かえって有名税で振り回されています」
神山は雑貨部長に理解してもらい 皆をテーブルに招いた
先ほど会議室での経緯を話すと 
「僕も先輩と同じ話をしたんですけど、、、」
「おばかちゃんね 神山さんは 抜きん出ているの 分る ねぇ」
由香里が嬉しそうな顔をこちらに向けたので 頷いた
「しかし8年前にそんな事があったんだ 大変だったね山ちゃん」
「ええ 取引のある什器屋に全部探させましたからね
僕にとっては死活問題でしたよ 終いに改装工事に該当している
会社に当ったら 矢部さんのところで廃棄処分していた事が
分ったんです」
「しかし ほんと良かったよ 倉さんが居てくれれば 
又別の方法で 帰って貰うことが出来ただろうが 休みだしね」
由香里がうっとりして神山の顔を見ているがその時に
「ねぇ あなっ、、、あの コーヒーでも入れましょうか」
由香里がとちった事を神山以外に気が付かなかった
「うん そうしよう 翔 これで地下に行って美味しいケーキを
買ってきて ただし 1個1000円はなし 
それから1人1個で良いからな」
「どうしたの そんな あな、、、神山さんが出さなくても」
「いいから 早く行って買って来い」
「はい 買ってきます だけど1個1000円なんて無いですよ」
杉田はしぶしぶ地下食料品売場で ショートケーキをかった
部屋に戻ると コーヒーとお皿が用意されていて
みなの機嫌が直った所で 神山が奥村に
「課長 26日の日曜日 私も御殿場に行きます
一応 夕方からの仕事ですが 小田原工場に立ち寄って
行きますのでニーナ・ニーナの 仕事が終ったら 
出かける事にします」
「う~ん そうすると夜 主役が居なくなるな ねぇ由香里姫」
「仕方無いと思いますよ アルタさんに今まで借りがありますし」
「そうだね わかった それで 27日は何時になるの」
「ええ 27日はこっちでお休みにします」
神山は小さい声で ゴルフの格好をして伝えた
「うん わかった 由香里姫 山ちゃん27日は休みだ」
由香里はやっぱりと言う顔で神山をにらんだが くすっと笑った
「だけど山ちゃん 御殿場が本格的になったら こうやって
いちいち報告されても困るな、、、」
「明日 倉本さんが出てきてからでいいでしょ」
「そうだな なんと言ってもこうなる事は分っていた事だしな
それに 遊んでいるわけじゃないしな」
神山はその言葉には引っかかったがあえて反論しなかった
ケーキを食べコーヒーを飲み干すと お辞儀して売場に行った

1階のニーナ・ニーナに行くと祥子が待っていて
「この札入れを用意しておきました」
今朝言っていたように紳士ものは少なく3点しかなかった
色々と触ると一つだけゴルフ手袋の肌触りするのがあった
「コレは子羊で出来ているの だから柔らかくて軽いわ」
「うん決めた これでいい」
神山は値札の18000円を出すと祥子は
「家族割で25%オフの13500円でOKよ」





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2011年2月23日水曜日

Vol.228 青葉 -4-18


「分った 先方には夕方と伝えよう」 
「倉さんは居ますか」
「今日は休みだけど なにかあった?」
「いや 翔をしかってもらおうと思って」
「はは だめだよ 翔は落ち込んでいて どっかに消えた」
「帰ったんですか」
「いや 帰ってはいない 翔のバッグが置いてあるから」
「了解です なるだけ早く帰ります」
「うん たのみます」
奥村との電話を終えると これからの季節に必要な洋服や靴などを
ダンボールに入れ 宅配便を扱っている店に出しに行った
部屋に戻り時計を見てみると15時になっていた
冷蔵庫からビールを取り出して呑み
横になって考えていると寝てしまった

携帯電話がなり 慌てて起きた 杉田翔からだった
「先輩 すみません 怒っていますよね」
神山は時計を見たら16時になっていた
「うん 凄く怒っている 今考えている所だ」
「すみません だけど大げさに言っていないですよ 僕は、、、」
「まあ あとでな ゆっくり聞くから」
神山は電話を切ると周りを片付けて直ぐに着る洋服類を
紙バッグにいれ 部屋の中をもう一度見回した
窓を閉め換気扇を止め部屋を出て 交差点まで来た時に
荷物があるので電車を使わず車で行く事にした
神山は上原のマンション経由で 銀座に行った
部屋に入ると 由香里が近づいてきて
「会議室で待っているわ 翔も一緒よ」
「わかった ありがとう」
いったん席に荷物を置いて会議室に行こうとした時 奥村が
「山ちゃん 頼むよ」
両手を合わせ お願いした
「分りました」
会議室に入ると翔とブティックの部長が無言で向かい合っていた
「あっ 先輩 ありがとうございます」
「どうもお待たせいたしました 神山と申します」
神山は名刺を差し出しながら 礼をした
(あれっ 何処かで会っているな、、、)
先方も名刺を出し 首をさげた 
「さあ どうぞ それから 杉田君 君はいいよ ありがとう」
「大変お待たせいたしました 今回はご迷惑をお掛けしました」
神山が挨拶をしていると 部長が 
「神山さん 上野店に居られませんでしたか?」
「ええ 上野には長く居ましたが なにか?」
「やっぱり ほら8年程前 一階の改装工事 大掛かりな
あの時にお世話になった 矢部ですよ」
「ああ うちのハンドバッグ什器を間違って本社に
もって帰り 廃棄した あの時の ああ 思い出しましたよ」
二人は8年前を思い出し笑った
上野店の改装工事の時 
ハンドバッグ売場の什器を自社持ち込み什器と
間違え 会社に持って行き 廃棄処分をしてしまった
当時 担当だった神山は出てきた什器を補修し 
他店での再利用計画の事務手続きをしていたが員数が合わず
発覚した事件だった
「そうですね あの時はびっくりしましたよ
どうしても10数台足りなくなり うちの取引業者に
間違って持って行っていないか 何度も聞きましたからね
あの時の矢部さんでしたか」
「あの時は 本当にすみませんでした ちゃんとチェックしていた
つもりだったんですがね 済みませんでした」
「それより今回は済みませんでした 間違った什器で」
「でも杉田さんに伺った処 神山部長のアドバイスとの事
コレは売場展開やイベントで使えるなと思いましたので、、、
現在 売場では上野で展開していた方法なんですが
いまいち 今日の陳列のほうが売れる気がするんですよ
現に 130%の出来です 16時〆でですよ」
「うん 分りますが 売場の設計は催事課では出来ないんですよ
勿論イベントの時はうちが担当ですがね 
しかし 矢部さんも分ってくださると思いますが
全て経費予算なんです」
「わかりました 売場に付いては一度 雑貨部長と相談します
イベントの時は 何とかなりませんか」
「はっきり申し上げますが 戻入でできます





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2011年2月22日火曜日

Vol.227 青葉 -4-18


しかし田代が
「しかし 車があっても 内野君一人では出来ませんよ」
高橋は人差し指で 自分の顔を指し
「忘れていませんか 私を ねぇ山ちゃん」
「そうそう 孝ちゃんがいたよね」
「だって 高橋さんは久しぶりの休みじゃないですか」
「うん いいよ 御殿場に行くぞ」
高橋はコブシをつくり手をあげた神山は高橋を見てにこっと笑った
「そうだ 内野君に連絡しよう」
高橋は内野に携帯で事の成り行きを説明し理解してもらった
「高橋さん 大丈夫ですか 内野君と2人で?」
「田代さん 山ちゃんにも行って貰うよ どうですか神山部長?」
「そうですね 車の件もあるし現場も見たいし 行きましょう」
「ねっ だから大丈夫です」
高橋が会計をするので 先に出たが田代だけ呼ばれ残った
現場に置いてある車まで田代は残念がっていたが
高橋に宥められ 
「次もありますからね その時はご一緒しましょう」
そう言って 元気を取り戻した
高橋にお礼を言うと 高橋のほうが深々とお辞儀をした
挨拶を済ませると バンは横浜に向かった

高速を利用して横浜に着くまで 田代は御殿場の話をしなかった
神山もあえてゴルフの話題は避け 若い二人と雑談をした
田代は高速をおり 神山に確認をしながらマンションに着いた
「はい 神山さん 着きました お疲れ様です」
「どうも ありがとうございました」
田代はそう言うと車から降りて来て
「今度 ご一緒お願いします」
ゴルフのグリップを握る仕草をして言った
「はい 今回はすみません 御殿場が進めば行けますよ」
「ええ そうしましょう」
神山と田代は握手をして別れたが 車の中から若い二人が
「ありがとうございました 宜しくお願いします」
神山は皆に手を振り車を見送った
部屋に入ると4月5日に出て行ったままになっていて
窓を開けたり 換気扇を回したりした
郵便物が溢れているので 管理人室まで聞きに行くと
大抵はゴルフ場の勧誘だったり 緊急を要する手紙類は無かったが
一応確認の為 全てを部屋に持ち帰り 整理をした 
26日夜の御殿場工事について奥村に連絡した
「神山です」
「おお 昨日はご苦労様 今少し前内藤社長から電話があったよ」
「えっ 例の車ですか?」
「うんそうだ 大変喜んでいたよ」
「ええ アルタの人手不足などを考慮したり 御殿場の仕事を
考えると あの方法しかなかったのです
出すぎたかもしれませんが すみません」
「う~ん 少し問題はあるがしょうがないな
ところで 今 どこに居るの?」
「ええ 横浜の自宅で整理しています 何しろ10日振り
なので 郵便物が多くて一応全てに目を通している所です」
「そうか 10日振りか 換気扇は回している?」
「ええ 窓を開け 換気扇を回しています」
「うん 大変だな それで何時ごろ来れる?」
「多分 夕方としか言えませんが、、、何か?」
「いや大した事ではないけど
けさ ホテル催事で翔が陳列した オープン棚があるだろ」
「ええ 指示しましたが それが何か?」
「先方が偉く気に入って 売場でもあのような方法で出来ないかとか
イベントの時は あの方法がいいとか うれしい悲鳴さ
そこで 山ちゃんに経費を掛けないで 効率のいい陳列方法を
あの部長さんに 教えてもらいたいんだよ」
「えっ それは良いですが 翔でも出来る事でしょ」
「うん しかし翔はお茶をご馳走された時 山ちゃんの名前を伝え
少し大げさに紹介してしまったんだと ほんとうに困ったよ」
「えっ 大げさに僕を、、、名前までだした、、、
なんで、、、考えられないアホですね」
「うん 喜んでもらうのは良いが 経費は掛けられないし
例え安く済んでも 催事課の予算ではないからな」
「そのように 突っ張れないんですか」
「うん 一回話したが だめだった そこでご本人が登場ですよ」
「はい 了解しました しかしほんと夕方としか答えられませんよ
着る物を整理して 上原に送らなければいけないし、、、」





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2011年2月21日月曜日

Vol.226 青葉 -4-18


早く終ったのでこちらにはすぐに来るそうです」
「ほんと そしたら 早く出て現場で待っていようよ」
「まだ食事をしていないので ここに来ますから大丈夫ですよ」
「えっ ここに来るの じゃあ ゆっくり出来るね」
「ええ 慌てないで良かったです」
「留守番の梅崎クンは?」
「彼は早めしをしてきています 大丈夫ですよ」
「そうか 遅くなると おなか減るしな 若いし」
高橋は梅崎の上司 田中に電話した
内容は先ほど女将さんの新宿の件だった
メモを読み上げ 女将から聞いた事を伝えた 電話を切ると
「すみませんでした」
「いや 気にしていませんよ」
「うちも 山ちゃんが居てくれたら助かるんですが
人が居ないので」
「大変だよね 増やすって言ったって簡単なことじゃないしね」
「そうなんですよ ある程度できないと話しにならないし
もっと大変なのは 御殿場アウトレットがあるでしょ」
「そうだね あそこは大きいもんね 3,4人必要だよね
或いは 1課ごと必要かもね」
「そう ニーナ・ニーナだけなら僕だけで いや山ちゃんとで
出来るけど アレックスグループはちょっと大変ですよ
それに デザインが気に入ったらしく店舗が少し増えたんですよ」
「へぇ 凄いね ますます繁盛だ」
「ほんと 会社の繁栄は喜ばしいんですが、、正直困っています」
現在ニーナ・ニーナでも御殿場アウトレットの話は
進んでいない様子でアルタも設計が出来ない状況で困っていた
話し込んでいると 女将が田代達を案内してきた

「すみません お待たせしました」
「やあ そんなこと無いですよ 早くなって助かります」
先ほど挨拶居た二人が
「神山部長 失礼します」
と 改まって言っているので 高橋達3人は笑った
田代は運転があるので呑めないが 
小塚はまるっきり呑めなかった
木村はいける口だが 田代が呑まないので我慢した
若者2人は運ばれた定食を
味わうではなく腹につめこむ感じだった
田代が一息ついたところで高橋が会議の事を聞いた
「ええ 人員配置ですよ 高橋さんも知っているとおり
4月24、25、26日は横浜が在るでしょ そしてここの現場の
積み込みと降ろしが別れるでしょ そこなんですよ」
通常 積み込みにしろ降ろしにしろ 運転手が全て取り仕切るが
今回は全然知らない運送会社を使うので
その分人を余計に考えなくてはいけなくなった
小田原工場は良いとしても 
上原の現場ではそうも行かないだろうと 人員配置が出てきた
「そうだよね 田代さんのところで調整しているもんな
だけど今回は調整が利かないんだよね 御殿場は?」
「うん 26日の夜決定 だから余計人が居ないんですよ 困った」
「そうすると 御殿場は誰が行くの?」
「ええ 今は私ですが 横浜が居なくて、、、」
「車は?」
「ええ横浜で手配していますよ OKです」
「そうしたら 内野君を御殿場にして 田代さんが横浜はどう?」
「その案も出たんですが 車が無いんです それに彼一人では
作業出来ないでしょ」
「そうか どうにも動けないか、、、」
それを聞いていた神山は
「御殿場に行く車はバンでいいの?」
「ええ 先日使ったバンですね 大きさは」
「ちょっと待って」
神山は携帯を出してみやま運送へ電話した
「うん そう26日と27日で返しは28日の火曜日
うん 勿論 OK」
神山は高橋に OKサインをだした
「上手く行ったよ バンを26日朝から借りられる」
「えっ~ また~ ほんと」
高橋はてばなしで喜んだ 田代も暗かった表情が明るくなった
「でも 大丈夫ですか? どこですかその運送会社さんは」
「うん うちに入っている運送会社だから 大丈夫だよ
ほらお中元とか 外商がお客様に商品を届ける時に使うバンだよ」
「なるほど さすが山ちゃん また借りが出来たね」





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2011年2月20日日曜日

Vol.225 青葉 -4-18


普段は神山の電話が最優先だがよっぽど 嫉妬しているのだろう
神山は貴重な情報を聞けず 困ってしまった
携帯電話が鳴った 杉田からだった
「今 由香里姫に電話して 報告したんですが
先輩の事 伝えたら 自分からすれば済むのにって 
凄くご機嫌斜めでしたが 電話ありましたか?」
「うん そのご機嫌斜めの声を一杯聞いて情報が掴めなかったよ」
「どうしたんですかね? 僕の話しの時は喜んでいたのに、、、」
「まあ あまり気にしないで 部長さんとお茶しなさい」  
「はい ありがとうございます では」

神山はいい部下がいて幸せだと感じた
「山ちゃん もう少しすると 梅崎君が変わりで来ますから
そしたらお昼行きましょう」
「うん そうしよう」
少し元気が無い神山を見て
「どうしたの 元気ないよ」
「う~ん 色々あって、、、」
高橋が中に入って暫くすると駅から梅崎が走ってきて
「こんにちは 神山部長」
きちんとお辞儀をして 中に入っていった
高橋が梅崎に仕事の流れの確認を終ると出てきて
「それでは 行きましょうか どうしますかメニューは」
「そしたらさ あそこの角にある とんかつ でも寿司にしよう」
「いいですよ とんかつでも そうか 寿司にしましょう」
昨夜来たばかりで12時間も経っていないので
女将さんと顔を合わせると なんか自分の家に帰った気になる
今日は土曜日なので家族づれも結構居た
席はいつものように奥座敷に案内され ビールが運ばれた
普段あまりしゃべらない女将さんが
「貴方達 あそこのお店を作っているんでしょ」
「ええ まあ」
「そう いや私は貴方達が働いている所見たこと無いけど
お客さんが そう言っていたものだから 聞いたのよ」
「、、、」
「そうそう それで私の親戚が新宿でお店を出すって言うんで
一応聞くだけ聞いてみる事になったのよ」
「はい すごいですね 新宿に出店なんて」
「それで 一応メモを渡して置きますから後で連絡してください」
「はい 分りました」
高橋は女将さんに名刺を差し出しメモを受け取った
「凄いね 孝ちゃん」
「しかし 概算でほとんど潰れるのが大半ですよ この手は」
「そうだね 素人は相場が分らないからね 
安かろう悪かろうってね」
「そうそう あとメンテも含めてね」
女将も心得たようで海鮮の盛り合わせを持ってきた
神山と高橋は女将を見て笑い 女将も笑った 

二人は御殿場の件が忘れられず話していると 
話題は自然にゴルフに移り26日が開放されるように願った
「孝ちゃんは そうすると大丈夫なんだ」
「ええ そうゆう役は社長ですから
山ちゃんも仕事だし大丈夫でしょ」
「うん そうだよな 仕事だよな、、、う~ん、、、」
「どうしたの そんなに悩んで」
「仕事だけど 翌日はどうしようかと 遅いと理由が、、、」
「いいじゃない はっきり言っちゃえばその方があとあと良いよ」
「そうだね では26日日曜日決定 しちゃおうか?」
「そうですね 僕のほうも大丈夫だし 田代さんだけです
横浜支店は 予定があって無いようなもんですから
特に支店長になると」
「そうだよね 田代さん支店長だもんね」
「ええ、、、」
しかしゴルフをしたい二人は 
あそこのコースはこうでこう攻めると
パーが取れるとかゴルフ談義に花を咲かせながら箸を動かした
今日はお互いビールが良く入るので つまみに巻物を頼んだ
以前高橋に巻物は箸でつまむのではなく 
手で食べると『通』らしいよと助言したら 
この頃は神山のまねをして手で食べるようになった
その巻物を口に持っていく時に高橋の携帯が鳴った
相手とは簡単に話が終った 
「今 田代さんからです





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2011年2月19日土曜日

Vol.224 青葉 -4-18


高橋は送られたものを開梱し一つ一つ丁寧にチェックした
天井埋め込み式の照明でホリゾントになっていて直接照明管が
見えない様 工夫をされている物だった
横浜の田代のところで検査はされているだろうが 現場の検査も
怠らないようしっかりと検査をしていた
「大丈夫ですね 神山さん OKですよ」
「うん いい感じだね 楽しみですよ
この照明はニーナ・ニーナでは初めてでしょ 
だから余計期待するよね」
「そうですね 夜は綺麗ですよ やわらかい光線で」
神山は仕事の邪魔にならないよう 現場の隅々を見て歩いたが
それも何回もしているので 外でタバコを吸っていると
「ファー 素敵なお店ね」
「そうね だけどまだ商品が入っていないから分らないけど」
「だけど こんな感じのお店って 無いわよ ここらでは」
これから出勤するのか 落ち着いた感じの女性の声だった
(そうか 商品が入っていないと 正直な感想はないな)
しかし神山は『こんな感じの お店ってここらでは無いわ』に
自信を持った 勿論アルタの設計だが 
神山も手を加えているからだった
天井塗装も順調に進み 器具類も収まって高橋も暇になり
「山ちゃん いい天気だね 今度ゴルフでもいこうよ」
「そうだね 御殿場だと社長に怒られるかな、、、」
「そんな事無いだろ そうだ 御殿場の工事が終ったら行こうか?」
「そうだね 取り付けに行ってそのままゴルフだ そうしよう」
「そうしよう だけど取り付けって 確か26日日曜日の夜だよ
ここのオープンでしょ 26日って」
「うん 26日の11時って聞いた」
「そうすると 関係者一同 夜まで拘束かな」
「う~ん 可能性はあるね しかし早いね 10日で制作なんて」
「うちとしては 単発は早いよ それに椿さんだし、、、」
「そうだね 内野君も張り切っているしね」
「だけど 田代が言っていた会議はその事だけかな?」
「と言うと」
「だって サイン工事だけだったら 電話で済むでしょ
だから 何か別な事で呼ばれたんじゃないかな」
「サインのデザインは決定して 概算見積りも出したんでしょ」
「ええ 内野君が打ち合わせをしていますが、、、」
「ねぇ 日曜日にさ サインを取り付けで 応援ですって言って」
「うん 内野君も出きるし 田代さんも出きるし 4人揃ったのに」
「まあ 次の機会にしましょうか 一応26日は頭入れておいて」
二人が話していると塗装屋が高橋を呼び 指示を聞いていた

神山は今後のスケジュールを確認していた時携帯が鳴った
「はい 神山ですが」
「お疲れ様です 翔です」
「うん ホテルは上手に行った?」
「ええ ありがとうございます 大成功で喜んでいます」
「それは良かった」
「ええ ブティックの部長さんが来られてこれからコレで
行くよって言って頂き 今からお茶して部屋に戻ります」
「喜んでもらって良かったけど オープン棚のほうが高いよな」
「ええ しかし戻入をちょこっとでも頂ければOKでしょ」
「うん だけど部長さんに直接言うなよ こじれるからな」
「はい 濁す言うか 責任者に聞いてください ですね」
「うん そうしよう」
「はい 了解です 由香里姫に電話しますがなにかありますか?」
「今のところ順調 そうだ携帯に電話くれるよう言ってくれ」
「はい 了解です」
神山はホテルの陳列方法ことは心配していなかったが
ブティックの部長が陳列方法を変えてくれというとなると困る
出店しているのは銀座店のブティックだが会場予算は
上野店管轄なので銀座店は口を挟めなかった
携帯がなったので出てみると由香里からだった
「どうかされましたか?」
「うん26日の日曜日だけど ニーナ・ニーナのオープンでしょ 
そこで店長も出席されるわけだよね?」
「ええ 公のスケジュールに入っていますが それが」
「うん 関係者一同 夜まで拘束されるのかなって事」
「う~ん 分らないけど 神山部長は多分無理でしょう
何考えているの 遊ぶ事ばかり考えていて 絶対無理っよ」
「おいおい 何をそんなに怒っているの? 今朝の事?」
「そうよ あの時は母がそばに居たから 許したけど、、、
はい 分りました、、、  今 忙しいから切りますね」





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2011年2月18日金曜日

Vol.223 青葉 -4-18


「ニーナ・ニーナにも有るわよ ただ男性用は種類が少ないのよ
お店に入ったら 見に来てくれる 全部用意しておくわ」
「うん ありがとう」
神山と祥子はお札入れの事を話題にしながら食事を終え
「では 部屋で待っているよ 出かける時声を掛けて」
「は~い もう出かける準備は出来ているから直ぐ出られるわ」
「わかった まっていま~す」
神山も部屋に戻って 
準備をしていると直ぐに部屋のベルが鳴った
「早いね 食器ちゃんと洗ったの?」
「ええ 気が付かなかった 全自動の食器洗い機が有ったの?」
「うん 気が付かなかった」
「安いのがあったから買っちゃたの」
「それで早く出られたんだ」
「そうよ だから食器洗い機に感謝してね」

マンションを出てみるとテラスで見た風景と違い
いつもの静寂な住宅街に戻っていた
祥子が左腕を神山の前に突き出し 昨日のバンドルを見せながら
嬉しそうな顔をして 組んだ腕に力を入れて駅に向かった
現場に近くなると祥子に
「どうする 寄って行く?」
「ううん あなたに任せるわ」
神山は改札口まで祥子を送って行き 祥子から
「それでは行ってきま~す 夕方待っていますね」
そう言うとほほに軽くキスをし階段を上っていった
「やあ 遅くなってごめんなさい」 
「おはようございます 大丈夫ですよ」
「で 早速で申し訳ないけど」
神山は朝チェックした事を図面を出し説明した
「そうですね 山ちゃんが言う通りだけど ずらせるかな」
高橋は配線図面とここの基本図面をだし 照らし合わせた
「うん 何とかいけるでしょう 大丈夫」
神山が提案したのは棚近くにあるスポットだが移動OKがでた
「山ちゃんの言うと通り 僕自身もどうかなと思っていたんだ」
天井工事は穴あけが進んでいたが 
該当する穴開けはまだだったので 墨の出しなおしを指示した
実際ここまで工事が進むと 神山の出る幕はなく
1日中付いていなくても いい状態だが 
なにか起きた時の判断を自分の目で確認できる事が
最善だと思い現場に居る 
後は監督と雑談しながら情報を集める事もある
天井に丸い穴と四角い穴が全て開くと今度は塗装屋が入ってきた
塗装屋が準備をしている所に 横浜の田代がやってきた
田代が入ってくるなり
「おお 順調ですね」
「やあ 田代さん おはようございます」
「よう 早いじゃないですか」
「うん 本社で打ち合わせが一つ入った そうそう 例の御殿場」
「そうか なに御殿場も田代ちゃんが動くの?内野じゃないの?」
「うん 私になりそうなの」
二人の話を聞いた神山は 所長と言っても大変だなと感じた
「田代さん 大変ですね」
「ええ しかしドライブが好きだから 大丈夫」
高橋と田代が横浜に行く時間を調整していると高橋が
「山ちゃん 2時前後になるけどいい?」
「うん 僕は別に何時でも」
「そうしたら 田代さん こちらに寄ってくれる?」
「了解」
若手が荷物を運んでいたがまだ残っているので 皆で手伝った
作業が終った所で田代が神山に
「こちらの若手が 木村 譲二君 こちらが 小塚 保広君 
共に25歳のばりばりです さあ神山さんにご挨拶して」
「木村です 神山さんの事はよく聞いています 
これからも頑張りますのでお願いします」
「僕は 小塚と申します 木村が言ったように神山部長のことは
良くお耳にします がんばりますので宜しくお願いします」
「ありがとうございます 神山です
アルタさんには日ごろお世話になっています」
挨拶が終ると田代が神山に
「どうも済みません 遅くなって」
「いえいえ 仕事優先ですよ 待っています」

田代達が神山にお辞儀をしてバンをだすと





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2011年2月17日木曜日

Vol.222 青葉 -4-18


冷蔵庫からビールを取り出し呑んだ
久しぶりにテラスに出てみると 気持ちよい風が流れていた
駅に続いている道路に目をやると
今日の事を考えているのかサラリーマンの姿が目立ってきた
(そうか 普通のサラリーマンはこんな早い時間に出勤なんだ
そうだよな 孝ちゃんもこの位の時間には出勤だよな)
神山は恵まれている環境に感謝した
(それにしても ビールを呑んでたばこを吸っていると
仕事を休みたくなちゃうな ああ気持ちいいな~)
自室のテラスでこんなにゆっくりしたのは初めてだった

ビールが空になったので部屋に戻りもう一本出し呑んでいると
携帯電話がなった 神山はもしかしてと思いながら出てみた
「翔です 朝早くからすみません」
「うん どうした?」
「ええ ホテルオートモに来ているんですが」
「そうか 現場監督 ご苦労さん」
「はい しかしバッグのガラスケースが少ないんです」
「しかし 銀座店ブティックの什器手配も上野店だろ」
「ええ 完全に手配ミスでバッグの陳列が出来ない状態です」
神山は暫く考え
「そうしたら残っている什器は何が有る?」
「ええ 棚什器が員数分残っています」
「それでは その棚什器を上手に配置して バッグを陳列する事
棚板は2枚で 下は開けておく 一番下には余った造花を置けば
なんとかならないか」
「そうですね 下は600開ければ問題ないですよね」
「そうだな 造花は余っている?」
「無いので リースのプランターを置きます」
「そうだね 天気もいいから 見た目もOKじゃない」
「ありがとうございます 助かりました」
「そんな 本来は僕の仕事だからな こちらこそ助かっているよ
それで 什器屋の手配ミスか?」
「そうですね 員数はあっていますから」
「わかった 部屋にはこの事をFAXして置く 
朝早くから 大変だ ご苦労様 また何か有ったら携帯まで」
「はい 今日は、、、」
「夕方に部屋に行く」
「了解しました では」
神山はこの出来事を由香里と倉元宛にFAXした時電話が鳴った
出てみると 祥子からだった
「おはよ~ 電話に出るの早いわね」
「うん 仕事するから早めに起きた」
「偉いわ わたし 今起きたばかりだから 30分位したら来て」
「了解です」

神山は上原の天井図面センターテーブルに広げをもう一度眺め
照明など詳細を細かくチェックした
一箇所だけ気になる所が在ったので赤丸を付け図面をバッグに入れ
再びテラスでビールを呑んだ
下を見ると今度は小学生がわいわい言いながら
黄色い帽子があっち向いたり こっち向いたりと朝日に輝く
花のようだった
暫くのんびりしたあと 横浜で何が起きているか分らないので
20万円ほど ジャケットのポケットにしまった
神山は財布を持たない主義で お札はいつもはだかだった
小銭入れを持っているが お札入れは色々入れると太って
厚くなり扱いにくく 入れるものも無いので使っていなかった
カードは何枚も無いので免許書入れに入れておけば問題なかったが
今後 色々と付き合いがあるし お札入れを購入しようか考えた 
時計を見ると8時を少し過ぎたので祥子の部屋に行った
部屋に入るとすでに朝食の準備は出来ていて
「丁度 良かったわ 呼びに行こうと思っていたのよ」
今朝は和食ではなく 簡単な洋食だった
それでも神山はこのように準備してくれる祥子に感謝した
「美味しそうだねベーコンエッグ そうだビールは残っている?」
「ええ 呑もうか だけどあなたは呑んでいたでしょ」
「うん ちょっとだけ 呑もう」
神山はビールを呑みながら 食事をした
「今日は昼に久しぶりに横浜に行って来る」
「会社には、、、」
「うん 夕方かな」
神山と祥子が今日のスケジュールを確認し
お札入れの事を聞いてみると





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2011年2月16日水曜日

Vol.221 青葉 -4-18


4月18日 土曜日 曇り

上原マンション
神山は携帯電話のアラームがけたたましく鳴り起こされた
昨夜は祥子にモテリコのバンドルをプレゼントし
喜んだ顔を見た後 祝賀会の疲れが出てベッドに入った
ご祝儀も確かめないといけないし 祥子より早く起きた
クローゼットのジャケットやパンツのポケットから封筒を出し
テーブルの上に置き 中味を見た
内藤社長10万円 細川社長 田丸社長 店長が各5万円
取引先が合計約60万円 合計85万円もあった
スーパーデコの朝川典子と品川鮎子のメッセージは神山の応援と
会社の宣伝が書かれていて 特に個人的特別な表現はなかった
問題は山崎愛から貰ったコンドーム 佐々木艶子の無料招待券と
メッセージをどうするか考えた
無料招待券は免許書入れにしまえば良い事だが
コンドームは普段から 持ち歩かないので困り果てた
考えた末にカメラバックにある 小さな隠しポケットにしまった
(しかし 彼女も大胆だな みんなにこんな事をしているんだろうか
少し 様子を見てみよう)
神山は貰ったご祝儀の使い道を考えたが
今のところ不自由はしていないので銀行に預ける事にした
真奈美から貰ったロレックスは神山も気に入り 皮を慣らすために
普段からはめるよう心がけた
昨日の整理が一通り終ると7時になったので 高橋に電話した
「神山です おはようです」
「高橋です おはようございます 早いですね」
「うん 昨日はありがとうございます」
「いえいえ ところで今朝は、、、」
「うん 8時を少し過ぎるが 現場に行きますよ」
「はい 了解です」
「それで 今日は夕方まで付いていなくて平気かな?」
「ええ 大丈夫ですよ なにか?」
「うん 暫く横浜に帰っていないから 行ってみようかなと」
「はい 了解です それで何時に行かれますか」
「うん 午前中の確認が終ったら行こうかなと思っているんだ」
「そうしたら 横浜の田代が来ますから帰りの車を使ってください」
「そうか そうしたら便乗するか」
「ええ 帰りは電車でお願いします」
「了解 ではあとで」
神山は由香里に電話をした
「神山です 朝早くからごめんね」
「いえ 昨日はお疲れ様でした」
「ありがとう ところで今日のスケジュールだけど」
現場状況 横浜帰宅の件で夕方出社する事を
課長に伝えて欲しいと言った
「了解したわよ それと昨夜はどうでした」
「なにが、、、」
「久保さんと一緒だったでしょ」
「仕事だよ それに筒井さんも一緒だよ 何もないよ 残念ながら」
「なによ 心配して言っているのに 残念ながらって ば~か」
「おいおい 朝から そんなに怒らないで」
「自分が悪いんでしょ」
「はいはい 僕が悪かったです」
「そうしたら 昨夜一杯貰ったご祝儀で 美味しいもの食べよっ」
「はい 了解です」
神山は由香里がまだ言いたそうだったが電話を切った
昨日 祥子と二人だけで帰ったら大変な事になっていただろう
そう思うと内藤社長と筒井の配慮に頭があがらない思いをした
(しかし 女性は嫉妬深いな)
と 思ったがそのように心を仕向けたのは自分だと反省した
FAXを確認してみると 上原の物はなく御殿場グランドイン
サイン工事が順調に進んでいる知らせと
小田原工場の連絡先が書かれた メッセージが届いていた
それを見て アルタの高橋に確認の電話をした 
「神山ですが 孝ちゃん
第二貨物には小田原の連絡先を知らせてある?」
「ええ あの日うなぎ屋から帰った後 教えて頂いた方に
連絡はして有りますが、、、 どうかされましたか?」
「ううん もれていると大変だから」
「大丈夫ですよ」
「うん 了解 では」
神山はまだ時間があるのでお中元や店外催事など
会社の仕事を集中してこなした
一通り出来たので会社にFAXし





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2011年2月15日火曜日

Vol.220 青葉 -3-17


違うロレックスをしているのを発見して
「どうしたの そのロレックス?」
「凄いでしょ 真奈美さんからのご祝儀」
「えっ またロレックス、、、しかしこのファッションにぴったし」
「うん また貰っちゃった」
「う~ん、、、いいな 山ちゃんは 羨ましい」
「そんな事ないよ 後が怖いよ」
神山はロレックスの事を言われ覗いて見ると
あと少しで25時になる時間になっていた
「孝ちゃん もうこんな時間だけど 平気?」
「そうですね そろそろ出ましょうか」
高橋がカウンターで清算している時 神山と祥子は表で待ち
「今夜 どうしても話したい事がある 少しでいいので、、、」
「ええ 着替えたら お部屋に行くわ」
「いや このまま来てください」
「は~い そしたらこのまま行きます」
「お待たせです」
「何時もすみません ご馳走様」
三人歩きながら店舗の飾りつけの話で盛り上がったが
すぐに現場に付き
「それでは 孝ちゃん お先に」
「はい 明日は8時から入っています」
「うん 僕も早めにくるよ では」
祥子は高橋に対し 深々とお辞儀をして別れた

「まいったー 今日は」
部屋に入るなり ジャケットを脱ぎ椅子に腰掛けた
「そうね お疲れ様でした」
祥子は神山の脇に来て おでこに軽くキスをした
離れると ジャケットを片付けようとしたので 慌てて立ち上がり
自分でクローゼットにしまいこんだ
「祥子 ビール呑もう」
「は~い 用意します」
クローゼットからカメラバッグを取り出し 
先日ホテル『ブティック「モテリコ」』で買った
バングルを取り出した
祥子が テーブルにビールとチーズを並べたので
「祥子 お疲れ様でした とにかく今夜はお目でたですね」
「そうね あなたは素晴らしいわ 改めて惚れました」
「そお でもね 今夜は祥子に渡したい物があるんだ」
「な~に?」
「なんでしょう」
「分らないわ じらさないで」
神山は 包装紙のままバングルをテーブルに置いた
「さあ 開けてみて」
「な~に」
祥子は包装紙を見て驚いた
「これ 銀座のブティックでしょ えっ そんな」
金額的にもっと安い物だと思ったが 『モテリコ』は有名で
祥子の給料でも手が出なかった
そんな期待で包装紙のリボンが上手に解けず ようやく開けると
「ふぁ 凄い この石 アメジスト ふぁ~ ほんと?」
祥子は夢を見ているようだった
「実はね 先週かな もう少し前だったと思うの
色々と他店を見て調査してみなければいけないでしょ」
「うん」
「その時 モテリコで発見したの だけど高くて諦めたの
だから すごく嬉しいわ ほんと ふぁ~」
祥子は箱から取り出し腕にはめてみた
「どう 似合う?」
「うん 今日の色にぴったし カンカンだ」
祥子は神山に抱きつき唇を合わせた
「ねぇ 明日からこれ付けて行っていい?」
「うん」
「ふぁ~ ほんとありがとうございます 大事にします」
「そうしたら 寝ようか 遅いし あっ別々でいいよ」
「ごめんなさい そうしますね」
「明日は どうなっているの?」
「オープンご招待のDMはOKでしょ だから銀座直行です」
「そうしたら 僕は上原によってから 銀座に行く」
「は~い ではおやすみなさい」
祥子は嬉しそうに神山の部屋を出て行った 

4月22日 水曜日 
携帯電話の音がけたたましく鳴った    
どこで鳴っているのか うるさいと思った
「神山さん 起きてください 神山さん」
田代の呼びかけで ようやく目を覚ました
「誰かの携帯電話 鳴った 今?」
「ええ 神山さんの携帯ですよ」
言われて着信を見てみると 亜矢子からだった
急いで 電話をすると
「神山ですが どうされました?」
「私です ごめんなさい 1時間くらい遅れます ごめんなさい」
「うん わかった また電話ください 待っています」
神山は突然の出来事で考えたが 亜矢子の事だから
よほどの事情で 遅れるのだろうと考えた
確か以前逢っている時も 暗い表情していた事を思い出した
「大丈夫でしたか 連絡は」
田代が心配そうに聞いてきた
「うん 普通の連絡だよ」
「それは良かったですね 相当長い間鳴っていましたから」
「心配かけてすまない ごめんごめん あとどの位で着きますか?」
「そうですね  あと10分位でしょうか 
着いたら 起こしますから ごゆっくりしてください」
「わかった ありがとう お言葉に甘えま~す」
「はい」
神山は亜矢子の事を考えていると また睡魔が襲ってきた





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2011年2月14日月曜日

Vol.219 青葉 -3-17


「おいおい 山ちゃん もっと頑張ってくれよ 
来年もその次の年も永遠に ねぇ 久保君」
「そうですよ 毎年 受賞しちゃってください 私も、、、」
「うん?私も、、、 どうした 久保君」
「ええ 私も 凄く嬉しいですよ」
「それはそうですよね 銀座一のデザイナー 神山部長と一緒に
仕事が出来て そして設計を聞かれた時 胸を張れますよね
実は アルタでも山ちゃんの仕事をしていると 一目置かれるんです
その位 凄い人ですよ 山ちゃんは」
「おいおい 誉めすぎだよ そんな事ないから 久保さん」
「いえ 本当の話です 例えば今度の什器搬入の配車にしても
普通考えられないんですよ」
筒井と祥子 神山は高橋の話を聞きながら箸を進めていた
「だって 配車先がライバル会社の専属ですよ
普通考えたって どう転んでも協力はしてくれないでしょ」
筒井も祥子も そこまでの事情は知らなかった
ただ 25日の什器搬入がアルタの手配したトラックだと
夕方になってしまうが 神山が何処かに頼んだ事によって
24日の夕方に搬入され 一日早くなったと
ニーナ・ニーナでは そこまでしか知らなかった
改めて 筒井と祥子が神山を見て
「そう言う事情は知らなかった 恩にきる ありがとう」
「そうでしょ そこを山ちゃんの顔で 出来ちゃんですよ
だから 私は今 会社でも一目置かれていますよ」
「なんだよ 孝ちゃん その事で一目置かれてんの?」
「いやいや ごめん 例えですよ 山ちゃんの仕事の」
「なんだ例えなら 一目置かれていないんだ」
「もう どうしたの 今日は 一目置かれています」
「まあまあ 山ちゃんは そんなに凄いんだ そうすると
これからは 気軽に『山ちゃん』と呼べないな ねぇ 久保君」
「ええ しかし、、、私は神山さんと呼んでいますよ」
「ははは そうだったね ごめんごめん」
「いやだぁ ご自分の事 私にふって~」
笑い声が店中に分るくらい大きな笑い声だった
この駅前寿司屋は最終電車が終っても安くて美味しいと評判で
家路に着く前 軽く呑み直しをする客が居るので
客を見ながら少しの間営業している
逆に給料日前など客足が悪い時は早めに閉めてしまう
今日は給料が出た後で 金曜日と重なりお客は結構多い
雑談を済ませると 筒井が
「そうすると あと1週間で出来上がりですね 楽しみです」
「はい 少し余裕があります 任せてください」
「分りました そうしたら 私はここで失礼するよ」
「えっ まだいいでしょ 筒井さん」
「いや 神山部長のように若くないから」
「そんな ねぇ 久保さん」
「いやいや ほんと帰ります では高橋さん 頑張ってください」
「あっ それでしたら この券 使ってください
内藤から 指示されていますから お疲れ様でした」
筒井はタクシー券を受け取ると 立ち上がる祥子を制して明日の
スケジュールを確認し 神山や高橋に 挨拶をして出て行った

「神山さん そんなご苦労があったなんて知りませんでした」
「いや 今までのお付き合いで お願いしただけさ」
「へぇー お顔が広いんですね」
「そうでしょ 久保さん だから凄いの 山ちゃんは」
「まあ それはそれとして オープンは4月26日で何時?」
「それは11時です 変更はありませんよ」
「そうか そうしたら 少し余裕が出来たんだ」
「ええ 25日の引渡しを先日伺った時
商品陳列などで徹夜の作業を覚悟していました」
「すみませんでした 早くできると言っておきながら、、、」
「いいよ 孝ちゃん 済んだ事だからさ」
神山と祥子は鮮魚のおつまみを食べていたが
高橋が食事をしていない事に 気が付き
「孝ちゃん 何も食べなくていいの?」
「うん もう直ぐ終るし それに夕食が遅かったから 大丈夫です」
「遠慮しないで食べてよ 今夜は僕がごちそうするから」
「そんな 内藤に怒られます だめです」
高橋は内藤から言われているのか ご馳走にならないと言い張った
「わかった そしたら ご馳走になります」
神山が仕事以外の事を話しすると
祥子も時々参加して楽しい時間が過ぎた
高橋がジャケットの袖口に 真奈美からプレゼントされたものと





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2011年2月13日日曜日

Vol.218 青葉 -3-17


高橋も早め早めに手を打っているのだろうと考えた
高橋が奥から出てきて神山に
「遅くなりましたが 受賞おめでとうございます」
ペコリと お辞儀をした
「いや 大変だった みなに振り回されたよ」
「どうですか 駅前で」
「僕はOKだけど 筒井さん行きましょう」
「うん そうだね 久保君もいいだろ」
祥子はにこにこして 筒井にではなく神山に 
「ええ お願いします」
「そうしたら 少しだけ時間下さい 大工に段取り話しますから」
「悪いね 邪魔して」
「大工も夜食だからさ 待ってて それとも先に行ってて」
「ああ 先に行ってます」
「了解です 直ぐ行きます」
筒井に話し先に駅前寿司屋に行く事にした
歩き出すと筒井が 神山に
「しかし タイミングよく3人で出られたものだ」
「えっ、、、」
「そうだろ 君たちが同じマンションなんて知っているのは
アルタの内藤社長と私だけだからね」
「そうそう 出るとき斉藤さんに理由を話していて気が付きました」
「別に皆ばらばらでも良かったが 二人一緒にタクシーに乗ると
久保君だけではなく 山ちゃんにも迷惑が掛かるからね」
「そうですね ありがとうございます 気を使ってくださり」
「ええ 私もどうしようか考えたんです 現場に夜遅く神山さんと
タクシー利用だとどうかなてぇ 社長からお話された時
本当に助かりました やましい事がなくても 由香里さんや
ご夫人もいらっしゃたし、、、
あっ それで内藤ご夫妻は早めにご退席されたんですね」
「うん 君たちが話しに夢中になっている時 社長と
段取りを決めたのさ だから内藤社長は最初から早く帰るつもりで
受付の女性を呼んでいたんだ」
「そうか 最後の清算をしなくてはいけないし そうか、、、」
「まあ あと女性の人数が少なく斉藤さんと久保君にも配慮した訳さ」
「そうですね 私も清算の事までは気がつきませんでしたが
確かに 由香里さんと私だけでは 可哀相ですよね」
筒井と神山は 祥子の肩を叩きながら笑った  


「さあ 倉さん 主役が消えたところで 別の所行きますか?」
「おう そうだな ここからだと近いよな」
「ええ そうしたら 由香里姫 清算してきてください」
「あの ここの清算は私が内藤から指示されていますから、、、」
「いいのかな ねえ 倉さん」
「おう 内藤社長がそうおしゃっているなら そうしよう」
「小谷さん 私たちもう一軒行きますが 来られますか?」
「ええ 行きたいんですが 明日早いので失礼させて頂きます」 
「おう 残念だな べっぴんさんとご一緒したかったな」
「また倉さん 少し酔ってきたわね」
由香里が大丈夫と聞いている時 杉田が2階に上がってきた
「おう 翔 もう一軒いくぞ」
「えっ もう出るんですか」
杉田はここで小谷ともっと話をしたかった
場所を変えるという事は 小谷とここでお別れを感じていた
清算を済ませ2階に上がってきた小谷に
「またお話ししませんか?」
「ええ 私 杉田さんのお話好きですよ 誘ってください」
「はい わかりました 必ず、、、」
二人が話し込んでいると由香里が
「はい若者 良かったね 小谷さん
この子はまだ半人前だから鍛えてね」
小谷はくすっと笑いながら 杉田を見ていた
「おい 翔 いつまでお見合いしているんだ 行くぞ」
「おう おいてくぞ」
「私 お見送りさせて頂きます」
お店を出てタクシーを待っている間 小谷は由香里と雑談をし
時々笑っていた 笑い顔が照明の灯りで一段と美しくした
車が来ると 前の座席に杉田が乗り 窓を開け小谷を見ていた
小谷も車が出るまで杉田を見て 杉田が手を振ると同じ様に答え
タクシーのテールランプが見えなくなるまで 手を振っていた


「え~ 何度も聞いて飽きたでしょが
受賞おめでとうございます 乾杯!」                             
「そんな 何度聞いても嬉しいですよ 一生に一回だろうから」





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2011年2月12日土曜日

Vol.217 青葉 -3-17


「あっ ごめんなさい 冗談ですよ皆さん
ここに居る お美しい女性達に取られてしまうのが怖いから
でも 本当のプレゼントはコレよ」
真奈美はバッグの中から小さい箱を取り出した
「さあ 開けてみて」
神山は包装紙を開けるとロレックスの箱が出てきたので驚いた
「ふぁ~ ロレックスの時計 凄い」
テーブルの皆が立ち上がって見に来た
今度のロレックスは皮ベルトでカジュアルな時似合いそうだった
「すみません 先日頂いたばかりなのに、、、」
「いいのよ お似合いね 今日の麻のジャケットにぴったりだわ」
「ありがとうございます」
神山は深々とお辞儀をした
「おう 山ちゃん 凄いな 腕にはめて見せてよ」
「そうそう はめて見せて」
神山は腕にはめると 顔の前に持って来てポーズをすると
「ふぁ~ ほんと ぴったりお似合いです」
「奥様 それではこの時計も使わせて頂きます
本当に素敵な時計を ありがとうございます」
神山の話が済むと内藤夫妻は出て行く時
小谷を呼び何か指示をしていた
ロレックスを見てみると23時を指していたが 誰も動かなかった
暫くすると筒井が化粧室に行く時 神山が呼ばれた
「これから帰宅するが 山ちゃんはどうする」
「ええ 私も帰宅します その前に現場に立ち寄りますが」
「そうか そうしたら 私と久保君と3人で車に乗ろう」
「ええ お任せします」
神山が席に着くと由香里が不安げな顔で
「どうしたの? 何かあったの?」
と 聞いてきたので 
「ナンでもないよ そろそろ出るけどどうするかって事だよ」
「ふ~ん それで」
「うん これから上原の現場に立ち寄る事にした
僕は最初からそのつもりだったがね」
「えっ これから行くの 大変ね 久保さんも」
「うん 筒井さんが一緒だし 久保さんのプランだし、、、」
「おう 山ちゃん大変だな しかしオープン近いしな、、、」
神山は皆に報告していて 気づく事があった
(そうか 祥子と隣りを知っているのは 内藤社長と筒井さんだ)
筒井が化粧室から出てくると みなの前で
「済みません 神山さんをお借りします これで失礼します
本日は 本当にありがとうございました」
お辞儀が終ると祥子も皆に挨拶をして筒井の後についた
「では そう言う事ですので 私もおさらばします
今日は 祝賀会 とても嬉しいです ありがとうございます」
神山は抱えきれない荷物を持って出口に行こうとしたが
杉田が荷物を半分もって出口まで来てくれた
外に出てみるともう直ぐ5月だがまだ肌寒かった
この麻のジャケットがまだまだ必要だなと感じていた
「先輩 僕はもう少し倉さんにお供します」
「うん 頼んだよ」
言い終わると丁度タクシーが着たので 筒井が前に乗り
荷物の多い祥子と神山は後ろに乗り込んだ

筒井達が乗ったタクシーは上原の現場に着いた
現場では24日の午前中に仕上がるよう遅くまで作業していた
この上原では通常天井工事は行わないが
今回のブティックの性格上行われた
今夜は壁面が出来ている事だと思った そうすれば片付き次第
バックヤードに商品を納品する事は可能だが 果たしてどうか
「やあ 夜遅くいらっしゃい こんばんわ 山ちゃん 
あっ筒井さんも 久保さんも」
3人を見た高橋は揃ってきたので多少驚いた
「山ちゃんが来る事は 内藤から聞いています」
「えっ 話していないけどな まあ 現場見ないとな」
「山ちゃん だいぶ出来てきたね」
「そうですね このような現場を見ると 昔を思い出しませんか」
「うん 上野店ではお世話になったよな いや今もだけど」
二人は顔を見合わせ笑ったが祥子も一緒に笑った
「孝ちゃん 天井の穴あけは予定通り?」
「ええ 少し早めになり 明日午前中から入ります」
「助かるね どんどん早くなるね」
「そんな でもその位しないと間に合わないですよ」
バックヤードの事を考えれば早く進め残骸を搬出した方がいいので





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2011年2月11日金曜日

Vol.216 青葉 -3-17


「では 行きましょう 久保君がご一緒しますが よろしいですか」
「ええ 大歓迎ですよ」
「よかったら 私がご案内しましょうか」
「ええ 内藤社長にお任せします」
(まいった~ 二人一緒か~)
話がまとまり 奥村が課員に
「これから内藤さんと食事だが みな大丈夫か?」
すると市川が
「僕は呑めないので ここで失礼します」
「おう そうか わるいな」
「じゃあ 由香里姫と倉さん 翔と山ちゃんと僕か 5名だな」
内藤が奥村に近寄ってきて
「今 車2台用意しました 暫く待っていて下さい」
「そんな ありがとうございます」
車が付くまでみんなてんでんばらばらに話をしていたが
祥子と由香里の会話はなかった
暫く話し込んでいると 
黒塗りのハイヤー2台が車付けに着たので分乗した
神山は内藤 筒井 祥子 と一緒の車に乗った
内藤は運転手に青山のお店を告げると手帳を取り出し
会社に電話していた
真中に座った神山は祥子とは話さず筒井と話すよう心がけた
祥子もなるべく話さないようしているが それでも内藤から神山の
仕事内容とか色々と言われると
筒井を意識しながらぎこちない応答をした
そんなぎこちない話をしていると 青山のイタリヤ料理店に着いた

先日3丁目の『イタリアンレストラン スパ』を利用したが
ここ2丁目の『ざ いたりあん』も良く女性週刊誌などに
取上げられている有名店だった
外観から内装まで全て木を使っているので ログハウスの感もあり
中に入ると 飾り付けがなくシンプルで落ち着くお店だった
内藤が入り口を入るとマスターと話し 2階へと案内された
簡単な仕切りの奥には 内藤夫人と若い女性が座っていたが
内藤を見ると立ち上がり 神山などを迎えた
一同が席に座るとビールが運ばれ 内藤が改めて立ち上がり
「え~ 本日は祝賀会 皆様ご苦労様でした
改めましてここで 祝賀会の2次会とニーナ・ニーナの完成祈願と
言う事で席を設けさせて頂きました
どうぞ心置きなくごゆっくりと楽しんで下さい
今夜は神山部長の祝賀会に出席できなかった妻と本社受付の
小谷 美佳も みなさまのお仲間に加えさせて頂きました
宜しくお願いします」
内藤の挨拶が終ると今度は奥村が立ち上がりお礼を述べ 
その後に 内藤 真奈美が立ち上がり
「神山部長 受賞おめでとうございます 今後も鈴やさんと
ニーナ・ニーナさん そしてアルタと頑張って行きましょう
神山部長受賞祝賀とニーナ・ニーナさん完成祈願でかんぱ~い」
全員が立ち上がり 乾杯の儀式を行った
10人掛けの円形テーブルに料理が運ばれてきた
隣に座っている内藤社長のところに真奈美が割って入ってきて
「ねえ 社長 お席を替わってくださいな」とおどけた
神山の右側に祥子が 左側に真奈美が座る事になった
真奈美が早速神山に乾杯をして
「久保さん 良かったわね こんな素晴らしい方に会社の仕事を
見て頂いて 安心してお仕事を任せられるわね」
「ええ 上原も順調に いえそれ以上のスピードで進んでいます」
真奈美と祥子の話が続いているので祥子と席を入れ替わろうとした時
一瞬であったが真奈美の顔が寂しそうな暗い表情になった
向かい側でも 女性同士が真中を占めて話していた
神山は隣りの杉田と色々と話をしたが 祥子や由香里
真奈美の事が気になり うわのそらで返事をしていると時々
ちゃんと聞いていますかと 怒られた
神山に時々小谷や由香里から厳しい話を振られると 
隣りの翔も話題に割り込んできて 楽しく盛り上げ神山を助けた
小谷も杉田の話が上手なので何回も笑いこけて
笑い涙が出ている時も有った
祥子と真奈美は先日会ったばかりなので 話が弾んでいる様子だった
内藤も筒井と話が弾んでいたし 奥村と倉元も話が弾んでいた

宴酣なった頃 内藤夫妻が退場する事になった 真奈美が
「部長 おめでとう わたしからの気持ちです」
と 言うと神山のほほに軽くキスをした
みな あっけに取られていると





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2011年2月10日木曜日

Vol.215 青葉 -3-17


細川社長や池上店長など順調に勝ち進んだ
次に祥子と由香里が対戦した
このゲームばかりは 会場の雑談が少なくなり静まりかえった
二人とも美貌と知性を兼ね備えた女性同士という事が
会場の皆も分っているのだろう
スタートしたが お互いタイミングを見ているのか
なかなかお尻を 突き出そうとしないのをみて 市川が
「さあ ご両人 ご遠慮なく美しいお尻を 突き出してくださ~い」
この言葉の後由香里がお尻を出した瞬間に祥子が下から突き上げた
この一撃で祥子の勝利となった
由香里がニコッと笑みを浮かべると祥子も笑みで返した
会場はこの時になって拍手で沸いた
2回戦も終わり3回戦では祥子と筒井の対戦になった
今回 祥子はハンデを使う事が出来るが 筒井に負けた
4回戦では細川社長など勝ちあがったが
池上店長は浜野に負けてしまった
5回戦準決勝だが ここで奥村と細川が戦う事になった
もう一つは催事課の杉田とニーナ・ニーナの浜野の戦いになった
まず奥村の戦いはやはりハンデの有る細川が勝利した
杉田のほうは上手に腰を使い浜野に勝った
「それでは決勝戦です 赤コーナー体重150ポンド 細川社長
青コーナー体重75ポンド 杉田翔君 さあ両名 お願いします
皆様 拍手でお迎えください」
細川はアナウンスされると拍手の中円座の真中に登場したが
杉田の姿がまだ現れないので ざわざわしてきた
「杉田さん 負けと分って出て来れないのかしら、、、」
などと 周りからもそんな言葉が出て来たときに
杉田はいつ用意したのか
キンキラのガウンを羽織り部屋に入って来たが
しかし少しどころではなく太った格好で登場した
「みなさ~ん 杉田選手の体重を間違っていました 訂正します
青コーナー杉田翔君250ポンド 杉田選手 どうぞこちらへ」
市川に勧められ杉田が真中に来ると
「では ガウンを脱いで 最後の戦いで~す」
杉田はガウンを脱ぐと
その格好は相撲取りのぬいぐるみを着ていた
杉田の格好を見た会場はやんややんやの大喝采で
片付け準備で待機している 仲居さんたちも 大笑いをした
勝負は簡単についた
ぬいぐるみで身動き取れない杉田があっけなく負けた
しかし会場は勝負より盛り上げた杉田に拍手をしていた
神山は商品の授与があるのでまた市川や杉田そして由香里と
一緒に並びお手伝いをする事になった
1位から4位まで参加賞とは別に商品が用意されていた
順番に授与を済ませると
「では次にナイスプレイヤーですが 4名居ます」
その中に 由香里と祥子が含まれていて 神山が手渡した
「え~ 今作ったんですが、、、」
「おいおい 商品が余ったら オレにくれ」
「そうよ わたしもがんばったのよ」
などとやじが飛んできたが 市川が一呼吸おいて
「ベストドレッサー賞 杉田 翔選手 どうぞ~」
市川は隣りに居る杉田に目配せし
神山のところで商品を受け取った
「皆さん 盛り上って下さいまして ありがとうございます」
皆に向かい商品を高く上げ 最後はお辞儀をした
「さて 最後の賞です
今回 罰ゲームを2回も受けた 神山部長で~す」
会場は神山の仕草を思い出したのか 大笑いに包まれた
全てのショーが終って 奥村が挨拶をして〆を行った    

『日本料理 四季』が有るホテル禅の出口では 催事課の面々が
取引先に対しお礼の挨拶をし見送ったが ロビーでは
アルタの内藤と筒井が話し ニーナ・ニーナの祥子も残っていた
殆ど見送ったので 奥村と神山が2人に近寄り
「今夜は本当にお忙しい所ご出席頂きまして ありがとうございます
祝賀会も無事終る事が出来ました」
神山と奥村は深々と御礼をした
「いやいや そんなに言われると困りますよ ねぇ筒井さん」
「そうですよ これからも山ちゃんには頑張ってもらわないと」
「ありがとうございます ところでまだ9時半なので、、、」
「そうですね 筒井さんも大丈夫でしょ」
「ええ 私の方は、、、」
筒井は残っている女性軍に聞いてみたが 祥子以外は帰ると言った





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2011年2月9日水曜日

Vol.214 青葉 -3-17


これでまた会場は沸いた
「では 第一組目から行きます」
市川が対戦両名を呼び出し 二人を立たせ試合開始
進行も順調に進み池上店長とスーパーデコの山崎愛の戦いになった
店長がんばれの声援より愛ちゃんの声援のほうが多かったが
結果は 店長が粘り腰で勝ってしまった
「ふぁ~ 店長 かちゃったよ」
みな愛ちゃんを応援していたものだからブーイングが出た
しかし 珍しく酒に酔った状態では 戦えなかった
次は神山の出番だった 対戦相手は細川社長だった
今度の声援は 主役の神山と 女性の細川と言う事で半々だった
「こら 大輔 仕組んだな もう」
「そんな事ないよ なあ 翔」
「ええ 先輩の事 そんな事する訳ないでしょ」
二人は顔を見合わせ 笑って答えた
(まいった 仕組まれた)
「さあ ご両人 お立会いお願いします」
神山は大事なお金が入っているジャケットを着たまま
細川と背中合わせをした
「さあ ご両人準備はよろしいですか?」
神山は少し腰を落とし 細川の攻撃に備えていたが
合図の笛がした途端 細川の腰が神山のそれより下から突き出し
あっけなく動いてしまい 負けてしまった
丁度 正面には祥子が居て
円座の人を飛び越え抱きついてしまった
祥子もびっくりし
「大丈夫ですか?」
としか 言いようがなかった
円座で座っている人達は演技でない神山を見て 細川を恐れた
「は~い 細川さんのかち~ え~ 神山部長は土俵から出て
女性に抱きついたので ここで罰ゲームです」
(おいおい それはないだろ わざとじゃないんだから)
市川を睨み付けながらも仕方なく 罰ゲームを受けた
「では 罰ゲーム いきま~す」
神山はもう何でも来いとあきらめ 真中にたった
「はい 右手を挙げて 左足挙げて 右手を下げて、、、、、、、」
(そうか その手か だったら両足上げた時に派手に転べばいいや)
その通り 右足挙げて 左足挙げてが来たので 派手に転んだ
会場はやんややんやの喝采と拍手で賑わった
「神山部長 ありがとうございます
どうぞルールですから恨まないでね」
この言葉で又会場は沸いた
神山は仕事を解かれたので円座の後ろで立っていると
3人の取引先が寄ってきてお辞儀をした
「遅くなりましたが 私、、、、」
始めてみる顔だが 何時も使っている各会社の常務だった
各常務は懐から封筒を取り出し 祝辞のあと手渡しをしていった
神山も 各会社は良く知っているので 的確な言葉で誉め受け取った
ゲームが進み 祥子の出番がやってきた 対する相手は田丸だった
スタートの笛が吹かれたその後は 田丸が簡単に負けてしまった
あのがっしりした田丸が負けと番狂わせがでたので会場は賑わった
次は由香里の出番だった
由香里はハンデを上手に利用し勝ち上がった
最後にスーパーデコの佐々木艶子が出てきた
この時 神山は円座の直ぐ後ろで見ていた
佐々木艶子は ハンデを利用しないで男性と互角に戦ったが
目の前に 神山が居る事を発見すると
「ふぁ~ あっ」
と言いながら 動いてしまい 神山に抱きついてしまった
「は~い 佐々木さんの負けですが 女性に抱きつかれた
神山部長 済みませんが またまた罰ゲームです」
神山は佐々木を組み解き また真中に立った
「罰ゲームは先ほどといっしょで~す お願いしま~す」
先ほどと同じ様に 両足を挙げる事になったら
派手に転ぼうと思ったが
今度はなかなか 転ばしてくれない 
だんだんと頭も廻らなくなり 疲れてきた時に関係なく床に転んだ
その転び方が良かったのか否か 大喝采を浴びた
それからは 円座の直ぐ後ろではなくもう少し後ろで見る事にした
そうしていると 良く顔を合わせている取引先が寄ってきて
祝辞を述べた後に お祝い金を渡していったのは10社だった
神山はありがたいが貰いすぎではないかと少し怖くなった

ゲームも2回戦に入り白熱してきた





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2011年2月8日火曜日

Vol.213 青葉 -3-17


「おう」
「由香里姫のライバル 増えましたね」
「おう そうだな しかし愛ちゃんだが
山ちゃんが昨年銀座に着ただろ」
「ええ」
「その前から 知っていたそうだ」
「上野時代からですか?」
「おう 何でも 愛ちゃん自身は上野担当ではないが
人が少なくて 応援で手伝いに行った時に困っていると
優しく適切なアドバイスで 仕事が早く済んだ事を言っていた」
「ほぉ~ そうするとほんと 由香里姫のライバルですね」
そんな話をしていると
ニーナ・ニーナの祥子が化粧室から戻ってきた
「しかし 奥ちゃん 大本命は彼女だろう」
「そうですね 上手く行けば筒井さんも喜びますしね」
「おう その通り」
そんな話をしている処へ神山がお酌をしにきた
「倉さん 課長 ありがとうございます 盛大にして頂きまして」
「おう がんばれよ」
「そうだよ 来年もがんばれよ」
「はい 来年はニーナ・ニーナやアルタが有るみたいで、、、」
「おう そうだったな まあ来年はオレに任せろ」
「はい そうします」
「おう しかし よくやった 嬉しいぞ なぁ奥ちゃん」
「ええ 私も鼻が高いですよ」
「ありがとうございます
ところで 実は店長を始め 皆様からご祝儀を頂きました」
「おう 良かったな 貯金しておけ なぁ奥ちゃん」
「ええ 将来の為に貯金しておきなさい」
神山は二人に対し 額が畳に付く位お辞儀をし
「これからも 頑張りますのでお願いします」
と 言うと 脇から内藤や店長 細川 筒井なども次々に
「こちらこそ 頼んだよ 山ちゃん」
激励の言葉を掛けられ 胸が熱くなった

宴たけなわそろそろお酒が廻ってきたのか 顔を真っ赤にし
男性も女性もアルコールのせいで熱くなったのか上着を脱いでいた
神山は大事なお金が入っているので我慢をして
ジャケットは着用したままだった
会場の顔色を見てタイミングよく市川が
「それでは 恒例の『お尻合いゲーム』を行います
真中のテーブルは片付けますので
お土産の方は仲居さんに申し出て下さい
くれぐれも ご自分の分だけでお願いしまーす」
(市川のスピーチは大した物だと何時も感心させられる
  今回もこのようにざわざわしているのに タイミングがいい)
「尚 準備の為 少しお時間を頂きます
商品はこちらにございますので お好きなのを選んで下さい」
市川の案内が終ると 仲井達が一斉にテーブルを片付け始め
中には お土産にするからと申し出ている様子もうかがえた
この後は〆を行うだけなので
化粧室を利用する人が部屋から出て行った
ルールは簡単
くじ引きで決まった二人が背中合わせになり お尻を突き出し
相手の足を動かせば勝だが
女性にはハンデが有り2歩動いてもOKと
とんでもないハンデがあった しかし女性同士の場合はハンデなし
昨年の親睦会ではスーパーデコの細川社長が優勝している
勝ち抜き戦だが 女性のハンデは有効だ 
「それでは テーブルも片付きましたので
対戦相手の抽選会を行います」
神山はこの時ばかりは 催事課の一員として動いた
杉田も大きな模造紙に対戦相手を書き入れていった
女性同士が当らぬよう抽選箱をわけ 
神山は女性用の抽選箱を持って
皆の所を廻り 細川女史のところに来た
「どうしようかしら私 参加 やめようかしら」
「えっ どうしてですか」
「だって これ以上勝っちゃうとお嫁に行けないでしょ」
「大丈夫ですよ 尻に敷かれる良い旦那さんが見つかりますよ」
そんなやり取りを聞いていた廻りは 笑い出してしまった

全ての抽選が終ると
「今回は 不参加者なしです 皆さん凄い元を取るため必死です」





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2011年2月7日月曜日

Vol.212 青葉 -3-17


話をしていると 化粧室についた
ここは各部屋に仕切られていて 個室になっている
早速小用を済ませ手を洗うと 頂いた封筒を覗いてみた
最初はアルタの内藤10万円 スーパーデコの細川5万円
七変化の田丸5万円 店長5万円
(えっ~ 凄い 25万も、、、しかし、、、)
少し貰いすぎだと感じながらも悪い気はしなかった
神山はスーパーデコの
山崎愛からの封筒が気になったので開けてみた
びっくりした コンドームが入っていて メッセージには
【時間を作ります 素敵な夜を楽しみましょう
  受賞 本当に本当に おめでとうございますわたし嬉しいです】
神山はこれは他人に見られると絶対にまずいと思い
パンツの後ろポケットにしまい
 同じくスーパーデコの佐々木艶子から貰った封筒も開けた
【受賞 おめでとうございます 空いた時間で楽しいひと時を
あなたと過ごしたいですわ お返事をお待ちしています】
同封されていたのは 北海道の無料旅行券だった
(わぁー これも絶対にまずいな もう、、、)
神山は同じくパンツの後ろポケットにしまった
スーパーデコのあと2名も同じ内容だとまずいと思い
パンツの後ろポケットにしまった
余り長居をしていると 変に思われるので出てみると
取引先の面々も化粧室に入っていった

部屋に入る時 丁度清算を終え部屋に入る由香里をつかまえ
「ねえ ご祝儀を一杯貰ったけど 全部課長に報告しようか」
「大丈夫よ 課長はそんな事気にしないから 納めておきなさい」
「ほんと 報告なしで?」
「ええ 今までも倉さん そんことした事ないわ
ただ『取引先からご祝儀を頂きました』の報告でいいわよ」
「うん そうする 今夜分かれる時にでも」
「そうね しかしほんと凄いわ 奥座敷まで一杯になるのって
私 初めての経験よ それに初参加の取引さんも結構きているし」
「そうなんだ さっき店長も驚かれていたよ」
「さあ 部屋に入って 皆さんのお相手しなさい」
由香里がお尻を押したのでつまずきそうになると
「凄い お尻のポケットまで 一杯」
「違うよ これは、、、ちょっと、、、手紙さ、、、」
うそは言いたくなかったが しかし怪しい手紙は手紙だった
由香里はきつい眼差しで
「貴方は私のものよ わかっているでしょ」
神山はここで言い争いをしたくないので
「分っているよ さあ 部屋に入ろう 由香里先に入って」
「ええ」
今度は神山が由香里のお尻を優しくなでた
「ば~か 何するの 後ろで見られるわよ」
神山に振り向き少し口を尖らせ小声で言った

今日の由香里は淡い黄緑のワンピース姿だった
白いベルトがアクセントになっていてとても爽やかな感じがした
普段見かける事のない姿だったので見とれながら入ると
すれ違いに祥子が部屋から出ようとしていた
神山は言葉を発しないで居ると お辞儀をしながら
「今夜 お部屋で待っています 何時でも構いません」
と 小声で伝え化粧室に向かった
席に戻ると 取引さの人達が溢れていたが
今度は自分から 席に座っている取引先にお酌をして廻った
「なあ 倉さん 山ちゃん 出来ているな」
「ええ ちゃんと弁えていますね 出来てますね」
「倉さんも確かそうしていたね」
「店長も良く覚えていらっしゃいますね」
「ははは それは銀座の顔 倉さんの事だもんな」
「いやぁ 恐れ入ります」
池上と倉元はもっと話そうとしたが取引先に裂かれた
神山が順番にお酌をしていると スーパーデコの山崎愛の席に来た
「ね~え ぶちょ~お さっきの手紙読んでくれた ぶちょ~う」
普段 酒に強い山崎だが
今日はこの雰囲気で酔ってしまったのだろう
「うん まだだ 自宅でゆっくり見るよ」
そう言ってこれ以上突っ込まれたくないので
隣りにお酌をして離れた
それを見ていた倉元と奥村は
「倉さん」





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2011年2月6日日曜日

Vol.211 青葉 -3-17


全店プロモーションで使用した会社だった
池上社長の席に行き
「先日は 本当にご迷惑をお掛けしました
申し訳ございませんでした
以後気をつけますので 宜しくお願いします」
田丸はがっしりした体格だがお辞儀をすると小さく見えた
「うん 頼むよ」
店長への挨拶が終ると販促部長や奥村課長 倉元と進み
「神山部長 今回の受賞 おめでとうございます
先日の件も色々とご配慮頂きありがとうございます」
「うん ありがとう これから間違わないよう頼むね」
「はい 分りました ありがとうございます」
社長の挨拶が終ると社員のデコレーター飯星茜が
真っ赤なバラを差し出し
「神山部長 受賞おめでとうございます
これからもご期待に添うよう頑張りますので ご指導お願いします」
飯星は祝辞を終るとバラを手渡し 真剣な眼差しで神山を見据えた
神山も何時も打ち合わせに来る飯星を知っているが
今日は綺麗だと感じ
「うん これからも鈴やの為にがんばってね ありがとう」
社長が奥村をちらっと見て 封筒を差し出し奥村にサインを送った
奥村は承知のサインで頷き返した
「神山部長 これはお祝いです 納めてください」
差し出された封筒を受け取る前に奥村を見ると頷いているので
「はい ありがとうございます」
丁寧にお辞儀をして受け取った その後 細川が
「ねえ 茜ちゃん どう 私の所に来ない?
私 何時も貴方の仕事振り見ているけど どう?」
細川社長から何時も誘われているのだろう 茜は
「はい ありがとうございます しかし田丸も優しいし、、、」
「そう 残念ね~」
「細川社長 そんな苛めないでくださいよ
今 飯星君に出て行かれては うちはつぶれてしまいます」
お互い造花屋とファッションデコレーションと業種こそ違うが
中味は共通している所が多いので 業界では移籍がよくある
特にデコレーター集団『スーパーデコ』は銀座の美味しい所に
全て入っているので 人手不足になっていて新しいデコレーターを
何時も採用している事情があった
七変化のメンバーも挨拶を済ませると
空いている席にばらばらに座った
会場内はみなの笑い声が混じる声で 宴たけなわになった
由香里を探すが先ほどから見当たらないので 倉元に聞いてみると
「おう 多分会計で部屋の外で計算しているのだろう」
この催事課が行うこのような祝賀会 親睦会では一人あたりの
参加費用が決まっていて その他に『気持ち』を参加費に上乗せし
みな親睦会 祝賀会に参加している

「すみません ちょっと中座します ビールばかりで」
隣に座っている池上店長に断り席を立った
「そうだな ワシも中座しよう」
二人は群がっている取引先に断り席を立った
部屋を出たところで由香里と合い 仲居と料理の清算をしていたが
「どうしたの お二人で なにか有ったの?」
「いやいや たまたま一緒さ なっ 山ちゃん」
「はい 漏らさないでね」
由香里は神山を心配していた
「しかし 山ちゃん 凄いな ご祝儀」
「いえいえ 皆さんのお力ですから 後で催事課に行きますよ」
「そうか しかし催事課はちゃんと貰っているので納めておけば」
「そうなんですか?」
「うん 昔からの慣例ですよ 大丈夫だよ」
「はい でも一応奥村課長には報告しておきます」
「うん そうだな」
「親睦会のノリは体験しているんですが 祝賀会は凄いですね」
「うん しかしこんなに集まったのは初めてじゃないかな」
「そうなんですか?」
「うん いつもここで行われるけど 
奥座敷まで利用したのは初めてだよ」
「へぇー そうなんですか」
「みな 山ちゃんに期待しているんだよ 頑張ってな
そうだ これはワシからのお祝い金じゃ」
「えっ そんな」
「いいんだよ 気持ちじゃ 少ないけどな ははは」
「それでは ありがとうございます 頂きます」





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2011年2月5日土曜日

Vol.210 青葉 -3-17


開催してから30分が過ぎただろうか 市川が
「皆様 大変お待たせしました 最後のお客様が御付きになりました
お客様がご着席後 神山部長からのご挨拶を頂きます
もう暫く お待ちください」
会場は静寂し 誰が来るのだとひそひそ話が始まった
暫くして筒井社長を先頭にニーナ・ニーナの面々が現れた
神山は驚きを隠せず 池上社長に尋ねた
「うん ニーナ・ニーナの仕事をしている事を
ここに来ている取引先の人達に認知してもらいたいし
山ちゃんの仕事振りを 披露するつもりだよ」
「えっ そんな 聞いていないですよ そんなぁ、、、」
「大丈夫ですよ 私が殆ど代弁しますから」
右脇に座っているアルタの内藤が助太刀をしてくれた
筒井達は立ったままで神山に挨拶しようとしたので
慌てて神山も立ち上がると
「そのままでいいですよ」
「いえ そんな事はないですよ」
「おう そうだそうだ 起立したほうが絵になるぞ~」
倉元の言葉で社員はもとより取引先全員が起立した
「今回の受賞は鈴やだけではなく 銀座に新風を吹き込み
刺激活性剤となられた功績は 大変意義があるところです
私どもニーナ・ニーナにもお力を貸して頂き 
大変喜んでいる次第です
上原の、、、、、、、、、、、、、、、、、、、です
以上 簡単ですが 今後も鈴や そしてニーナ・ニーナを
今まで以上に可愛がってくださる事を
お願いし祝辞に変えさせて頂きます」
「ありがとうございました
次にニーナ・ニーナからお祝いの花が贈呈されます」
 案内されると筒井の後ろにいた久保が
大きなバラの花束を持って来て
「神山部長 受賞おめでとうございます
 そして ニーナ・ニーナのお力になって頂き
ありがとうございます
 このバラはニーナ・ニーナの気持ちです
本当におめでとうございます」
 久保が神山に花束を手渡すと 会場から一斉に大きな拍手が沸いた
「えー それでは神山部長に 受賞の感想を伺いたいと思います
神山部長 準備のほうは、、、」
(なんだよ 聞いていないぞ 突然に)
「はい OK」
「では 神山部長 お願いします」
「えー 今回の受賞で ご多忙の中 皆様にこのような盛大な
祝賀会を開催して頂き驚いています 御礼を申し上げます
受賞の感想を一言で言い表せば 嬉しいの一言ですが
しかしこのコンテストは、、、、、、、、、、、、、、、です
今後も 私自身も頑張りますので 鈴やを そして
ニーナ・ニーナを宜しくお願いします」
神山の挨拶が終わり お辞儀をすると銀座中に聞こえるような
大きな拍手が鳴り止まなかった
 
祝辞は続いた
神山の左側 池上店長 右側内藤社長 最後に細川社長
細川社長の祝辞が終った処で 本格的に料理が運ばれてきた
この時 市川が立ち上がって
「えー お取引の皆様にお願いがございます 出来るだけ
男女仲良く交互に座って頂けると 親睦が深まると思いますので
我こそは と 思われる方 私はとアピールされたい方
どうぞこの機会に席替えをお願いしま~す
そして お食事の後は 簡単な嬉しいゲームがございます」
市川の号令で
慣れている取引先面々は自由に席を替わっていった
 
神山は会場を見てみると 
男性のほうが多く女性は3割程度だった
みなの席替えが終った時に
造花屋の社長がデコレーターを連れ現れた
市川が早速
「皆様 すみませんでした 最後の最後お取引様がお越しです」
「市川さん すみません 遅くなりまして」
「うん しょがないよ 上座のご挨拶と奥村さんに挨拶してね
席は人数分用意してあるからさ 大丈夫だよ」
「本当に わがまま言いましてすみません」
最後に現れた造花屋『七変化』の社長 田丸昭二は先日の





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2011年2月4日金曜日

Vol.209 青葉 -3-17


私ども鈴やの神山部長が最優秀賞を受賞されました
そこで お取引の方々との親睦を深める事も兼ね
神山部長の祝賀会を開催させて頂きたいと思います
それでは 倉元部長 お言葉をお願いします」
「おう え~ 山ちゃん 受賞おめでとう 私も参加していたが
今回はだめだったよ なにしろ一位になられたのは
素晴らしい事だと思うし 普段から積極的に仕事に取り組む姿勢が
この様な結果に現れた結果です 今後も精進してください 以上」
「倉元部長 ありがとうございました
尚 今回 倉元部長は僅差で2位との事です
どうぞ来年は ご遠慮なさらずに1位をとって下さい
そして この様な盛大な祝賀会が開けることを期待しています」

「神山部長 おめでとうございます」
取引先の面々が挨拶に来た
「ありがとうございます しかし私一人の力では有りません
それよりこれからも鈴やの為にお力添え お願いします」
「はい こちらこそ宜しくお願いしますね」
倉元を見てみると取引先とわいわい楽しく呑んでいた
(両脇 だれが来るのかな 座布団が用意してあるし)
そう考えていた時 池上店長が内藤社長と現れた
神山は立ち上がって両名にお辞儀をすると
「いや やったね山ちゃん おめでとう」
池上はそう言うと奥村の勧めで神山の左側に内藤は右側に座った
「ほんと 山ちゃんおめでとう」
内藤が祝辞を述べながら握手を求めてきた
そして皆に分らぬ様
テーブルの下に手を導き反対の手で茶封筒を手渡し
「これ お祝いです 皆には内緒ですよ」
「はい いつもありがとうございます」
気になり左脇の店長を見てみると
知ってか知らぬかそ知らぬ顔をしていた
店長が脇に座った事でまた取引先が挨拶に来た
「おいおい 今日の主役はワシじゃないぞ 山ちゃんだよ」
と 言いながらも勧められるビールを美味しそうに呑んだ
池上店長やアルタ内藤社長と話していると
「え~ 皆様 今回の受賞で大変お世話になられた方が
来られましたので拍手でお迎えお願いします」
市川の案内でみな拍手で迎えた
デコレーター集団『スーパーデコ』の面々だった
社長の細川女史は名前負けしたのか 3Lサイズの体型だ
ゆっさゆっさと体をゆすりながら内藤の右に座り
「山ちゃん おめでとうございます 良かったわ1位で」
「いえいえ 社長のおかげです ありがとうございます」
「一位は一位よ それも倉さんを抜いたんだから ねぇ倉さん」
「おう そうだ 一番は一番さ」
そう言うとまた取引先の面々と面白おかしく話しこんだ
細川社長が内藤の背中越しに 小さい声で白い封筒を差し出し
「これ お祝いよ 納めて」
これにはどう対処し様か迷ったが 廻りもあるので
「はい ありがとうございます こちらこそお願いします」
そう伝え ジャケットの内ポケットに納めた
神山の席にデコレーター達が寄ってきて ビールを勧めた
「凄いわ 初参加で1番なんて 私こんな経験初めてよ
良かったわ これからも神山さんの仕事頑張るわね」
「おう オレを忘れないでくれよ 年寄りを大切にな」
「そうですよ 僕なんかより 倉さんが銀座の顔ですから」
「おいおい なにもでないぞ そんなに誉めても ハハハ」
そんな話をしていると 奥の襖が開けられ 更に会場が広がった
市川や由香里が奥村に相談したり 慌しくなた
倉元にどうしたのか聞いてみると
「おう 参加人数オーバーだと ハハハ いいことだよ」
それを聞いていた池上店長は倉元に
「倉さん そろそろ世代交代ですかね ねぇ」
「おう またまた まだまだ現役ですよ 店長」
みなで笑っていると細川社長が
「はい 皆さん 席に戻ってね 山ちゃんを独占してはだめよ」
そう言われるとデコレター達4名が先ほど開かれた奥座敷に戻ったが
残った中で 山崎 愛が封筒を差し出し
「おめでとうございます 私のメッセージが入っています」
こちらの顔を見つめながら神山に手渡した
それを機に他の3名も同じ様に ラブレターだと言って差し出した
この4名は今回のウインドー制作で特に神山の力となり支えてくれた
アルタの内藤と細川は仕事の話だけではなく冗談も話していた





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2011年2月3日木曜日

Vol.208 青葉 -3-17


「ええ 筒井から話が行っていると思いますけれど、、、」
神山は奥村課長が居たので尋ねてみると
「ああ ごめん 山ちゃんにはまだ伝えていなかった?ごめん
店長は出席してくださるそうだ 先ほど連絡があった」
(そうゆう肝心な事 早く知らせてよ 本当に、、、)
「ごめん 今 奥村課長に確認したら OKです 良かったね」
「そうですか 念のため筒井に報告しておきますね」
「分りました お願いしますね ところで今夜の予定は?」
「ええ もうすぐ宛名書きが終るわ その後筒井も一緒にご飯です」
「そうか そうすると一人で食べるね」
「はい分りました 余り呑まないでね
多分遅くならないで帰宅できるわ ごめんなさい、、、」
「うん 分った 連絡を下さい」

神山は夕飯をどうしようか考えながらタバコを弄んでいると
「先輩 今夜皆で行きましょうよ 久しぶりだし」
祥子との会話を聞いていたのかタイミングよく翔が話し掛けてきた
「そうだな この頃御無沙汰だしな」
「え~ 皆さん 神山部長 今夜OKで~す」
(なんだ おい なにやっているんだ???)
「おう 山ちゃん そうと決まったら 早く出よう」
「そうよ 待っていたんだから 分らない?」
「えっ なんですか?全然わかりませ~んが、、、」
「よし 早く出よう みんな」
「どうしたんですか 課長まで、、、」
「いいんだ 翔 早速連絡をしてくれ」
「はい 今OK貰いました」
「では 出よう」
今夜はどうした事か 催事課全員が揃っていた
部屋の出口で市川に
「なんなんだ これは、、、」
「秘密だよ もう直ぐ分るよ」
と言いながら ニヤニヤしていた
(なんだ 市川 ニヤニヤするな 教えろよ)
 
奥村課長の先導で『ホテル禅地下 日本料理 四季』に入った
一番奥の部屋に案内されるが 靴が何足か置かれていた
奥村が襖を開けながら中に入ると 取引先会社の社長が並んでいた
「山ちゃんは あそこの真ん中ね ちゃんと座っててな」
杉田や由香里 市川などに頼んだぞと言った
神山自身 このお店は何回か利用したが 大広間は初めてだった
訳が分らぬまま『まな板の鯉』状態で居ると 倉元が
「この間のウインドーコンテストの件だよ」
「ああ そうですね すっかり忘れていました」
「おう それで本人に早く楯を渡そうという事でこうなったんだ」
「はぁ」
「だから今夜しか空いていなかったんだよ
山ちゃんの仕事を考えると それで皆待っていたわけさ」
「はぁ そうすると今夜は空いていると推測された訳ですね」
「まあ そんなところだ」
「しかし 店を早く出て上原に行ったら、、、」
「そこもきちんと考え 手を打ってある」
「はぁ 凄いですね 参りました、、、」
「おう 今夜の為に 皆で根回したんだ 挨拶だけは頼むな」
「はい わかりました 倉さん いつもありがとうございます」
「おう 若いもんはいいな なぁ奥ちゃん」
「何言っているんですか 一回りも違わないじゃないですか」
「どう言う事 それ」
「だから 倉さんもまだまだ若いですよ」
話題で盛り上がっているとビールや食べ物が運ばれてきた
由香里や杉田も仲居さんに混じって運んできた
川の字型に配列されたテーブルの上にどんどんと
料理が並べられていく
ざっと勘定をすると40名から50名位入りそうだった
由香里がこれから来る人達の事を考え
「すみませんが ご自分の靴は出来るだけ下駄箱にお入れください」
(そうか まだ20名位しか来ていないから
これからまだ来るんだ 由香里 ありがとう)
「さあ 準備も出来たし 皆さんお待ちかねなのではじめましょ」
奥村課長が祝賀会を仕切った
「え~ 今夜はお忙しいところご出席頂きまして
ありがとうございます 心より御礼申し上げます
ここに居られる方々にはお話をさせて頂いていますが
今回 ぎんざ通り連合会 ウインドーコンテストにおいて





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2011年2月2日水曜日

Vol.207 青葉 -3-17


茶封筒に『神山様』と内藤の字で書かれた物を渡された
「はい分りました なんだろう?また仕事かな?」
裏にはしっかりとセロハンテープで止めてあり
「ここで破いて見てはだめなのですね」
「ええ 内藤からもその様に指示されていますので、、、」
神山はカメラバッグの中にしまった
表玄関に着くと社員達が見送りに来ていて
先ほどカフェで挨拶をした若者達も参加していた
「やあ 先ほどはありがとう これからもお願いしますね」
「はい 任せてください だいじょう~ぶです なぁみんな!」
「は~い 任せてください 大丈夫ですよ~」
神山は見送りの人達に深々とお辞儀をし車に乗った

田代が運転する車は小田原駅に向かわず山の中に入っていった
間もなく山を下ると西湘バイパス風祭ICに出た
「そうか 先ほど赤坂さんから地形を説明されたけど
箱根登山鉄道の風祭に近かったんですね」
「そうなんですよ 熱海に行く時はいつも 小田原に出ないで
この道を来るんです 近いし 信号がないし」
「なるほど さすが田代さん」
「神山さん 少しだけ飛ばします」
「はい 分りました」
神山は赤坂から受け取った内藤の茶封筒を破って手紙を出した
【山ちゃん お疲れ様でした 小田原工場は如何でしたか
  特に社員達の態度には驚かれたと思います
実はあの工場は職業訓練校も兼ねて運営をしている
  関係で礼儀正しさが自然と身に付くのだと思います
  現在200名くらい居る社員の40名位はまだ訓練生ですが
  しかし技術はどの子をとっても社員と変らない技術力でしょう
  今後も、、、、、、、、、、
  最後になりましたが 私の気持ちお納めください
  今まで休み無しで働いてくださったお礼です
  緊急時には赤坂なり私に電話くださいね
それでは気をつけて 楽しい旅行をしてください】
読み終えた神山は(なんだ 全部バレバレか、、、)と思った
茶封筒には現金20万円と何軒かホテルの無料宿泊券が入っていた
今回は予約せずに来てしまったので どこに行こうか迷っていたが
これだけ宿泊候補があると逆に行き先に悩んでしまう
当初 網代の清碧旅館でゆっくりとしようかと考えたが
まだ10日も経っていないのでどうしたものか思案していた
 (まあ 熱海で亜矢子と逢ってから決めても良いか)などと
安心すると あくびを出してしまった
一生懸命運転している田代に悪いと思ったが 遅かった
「神山さん どうぞゆっくりしてください
熱海駅につきましたら起こしますから」
「ごめんごめん ではお願いします」

4月17日 金曜日 夜
「ごめんね 返事が遅くなって」
神山は銀座の店を退社する時 祥子に連絡をとった
「大丈夫よ それでバックヤードに置く事OK?」
「うん 大丈夫だよ アルタから先ほど最終的に返事が来た」
「ふぁ~ 嬉しいわ これで準備も本格的に進められるわ」
「良かったね 本当に」
「ええ 貴方のおかげよ 助かったわ」
「しかしオープニングセレモニーの件だけど印刷物は間に合った?」
「ええ なんとか大丈夫よ 本当は見切り発車していたの、、、」
「えっ?」
「実は14日の夜にアルタの高橋さんと食事に行ったの」
「うん」
「その席上で私が筒井に招待状の件を話をしていたの」
「うん」
「そうしたら 高橋さんが25日には引渡しが出来ますと
仰ってくださり4月26日日曜日オープンで筒井も喜んでいたの」
 (そうか 14日には話していたんだ
だから16日のうなぎ屋で困っていたんだ だけど全てOKだ)
「ねえ 聞いている ごめんなさい 勝手に走って」
「ううん 違うよ 全て良い方向で進んだから良かったと
考えていた所だ」
「それでね 先ほど届いたDMを皆で宛名書きしているの」
「そうか 手伝いに行こうか うちにも居るよ達筆な人が」
「ううん 大丈夫よ
それより店長さんはご出席してくださるかしら?」
「伝えてある? だれかに?」





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2011年2月1日火曜日

Vol.206 青葉 -3-17


今後もお時間が空きましたら 是非小田原に遊びに来てください」
そう言うと若者皆で再び深々とお辞儀をしてカフェを出て行った
「赤坂さん 今時珍しく礼儀正しい若者達ですね」
「そうですね 私も驚いています」
「そんな 赤坂さんのご指導の賜物ではないですか」
「私なんかより 課長達がしっかりしているのですよ
私は飾り物です ははは」
二人は顔を見合わせ笑っているところへ
「わ~あ この方が鈴やの神山様ですか」
振り向くと今度は若い女性達がこちらに来ていた
「常務 紹介してくださいよ お願いします」
彼女達は私が最初と言わんばかり 部長にせがんだ
「はいはい 分ったから 整列してちょうだいな」
「は~い」
と言いながら何とか並んだので 赤坂が左から紹介して行った
「ありがとうございます 神山様 また小田原にお越しください
その時は 赤坂ではなく私達をご指名してくださいね
カラオケやテニスも出来ますよ お待ちしていますね」
伝えたい事を言い終えると
先ほどの若者達同様深々とお辞儀をして出て行った
「彼女達もしっかりしていますね 本当に」
「ええ やはり課長達がしっかりと教育しているのでしょう」
先ほどの若者達や彼女達を見ていると若さが羨ましかった
もう一度20代に戻ってみるのもいいかなと感じていた
カフェにはまだ10人位居るが 作業服や事務服の姿がまざり
夢中になって話し合っていた
4月の初夏に向かう陽射しが窓から差込み
若者達を更に元気にしているように見えた

神山はどうしても喫煙をしたくなり赤坂に申し出ると
「それでしたら テーブルのボタンを押してください
そうすると ファンが廻りますよ」
神山は言われた通りすると 
テーブルのセンターにある虫かごみたいなネットの中で
ファンが『ゴォーン』と唸り声をあげ回転した
「皆さんは吸われないんですか?」
「そんな事無いですよ 
吸うのも居ますがたまたま今は居ないだけでしょう」
「しかし 参りましたね 何故私の事が分ったのですか?」
「それは やはり知名度が高いからですよ
 私達の工場でも若い者は皆知っていますよ」
「そうなんですか、、、」
「どうされたんですか?」
「いえね そんなに有名だと
小田原では悪い事出来ないな~と思いまして」
赤坂と神山は顔を見合わせ笑った

ロレックスを覗くと2時を少し廻っていた
「それでは赤坂さん ありがとうございました
そろそろ お邪魔します」
「そうですか もうそんな時間ですか
こちらこそ 田舎までお越し頂きありがとうございました
熱海のお時間は何時でしょうか?」
「えっ 3時ですが、、、」
神山は高橋から連絡を受け知っているのだと確信した
「それでしたら 熱海まで車で行ってください
丁度 田代君がそちらに用件があるものですから」
「はい 分りました お願いします」
赤坂はカフェのカウンターにある電話で連絡をとり席に戻ると
「本当にお忙しい処お越しくださいましてありがとうございます
表玄関に車を用意しましたので行きましょう」
「こちらこそ 色々と勉強しました ありがとうございます
それから ニーナ・ニーナの件ですがお願いします
24日の朝一番には第二貨物が来る予定になっています」
「はい お任せてください 昨日 第二貨物さんと
連絡を取り合い 上原には夕方ごろつきます」
二人はエレベーターを使わずに階段で下る時
「神山様 これは私の携帯番号とメアドです」
赤坂は今回の秘密を共有している声で伝えメモを手渡した
「何かございましたら 遠慮なくご連絡ください」
神山はどう答えていいか分らず
「はい ありがとうございます」
と言い メモを受け取った
「それから これは内藤からの連絡です 車の中でどうぞ」





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