「まぁ いいですよ ごめんなさい 余計な事をお話をして」
「いいじゃないですか 改善できるところは 改善しないと
そのうちに置いてきぼりになりますからね」
久保祥子と神山が話していると浜野と林が戻ってきて
「チーフ 私たちこれで失礼します」
「おや まだ呑めるでしょ」
「ええ でも明日のお仕事もあるし 神山さん ごちそうさま」
「うん 気をつけて帰ってね 今夜は楽しかったよ」
「次回は銀座で呑みましょうね ではチーフ失礼します」
「はーい 気をつけて帰ってね 明日お願いね」
浜野由貴と林恵美は神山と久保に深々とお辞儀をして
受付に向かい浜野は下駄箱の手前で神山に手を振った
神山もそれに答えて 両手を振った
「さあ これからカラオケが出来るしゃれたお店に行きますか」
「わぁー カラオケですか いいんですか?」
「大丈夫ですよ」
「嬉しい ご一緒しま~す」
神山が精算を済ませると 混み合っているエレベーターに乗った
アルコールで熱くなった久保祥子と体が触れ合いどきりとした
エレベーターの扉が開くと 涼しい風が気持ちよかった
広小路通りにでると神山は高いビルを指差しながら
「ほら見えるでしょ あのビルの最上階ですよ」
「へぇー あんなところにカラオケですか?」
「ええ もっともカラオケはおまけみたいなもので
大抵のお客さんは 外を眺めながらチビリチビリやっています」
「そうしたら カラオケ出来ないですね」
「大丈夫ですよ 安心してください」
神山はビルの最上階を見ている久保祥子の横顔を見ていた
(綺麗な女性だ お付き合い出来たらいいな)
「ねえ 神山さん 本当にいいんですか?」
「ははは 大丈夫ですよ」
「ごめんなさい 私 今夜はあまり持ち合わせが無い物ですから」
「心配無用です さあ行きましょう」
少し安心したのか 久保祥子の顔が明るくなった
4月だというのにまだ肌寒いのに 今夜は少し暖かかった
濃紺のジャケットに白いブラウスが素敵で
生暖かい優しい風が 久保祥子の髪の毛を撫でていた
「今夜は普段より すこし暖かいですね」
「ええ 僕もそう感じていたんですよ ちょうどいい具合ですね」
「お酒も入っているし このぐらいが気持ちいいですね」
「久保さんって お酒いけるほうですね」
「そんな事ないですよ もう一杯です」
「だって 足元もしっかりしているし 本当は強いんでしょ」
「だって男性が居るところで フラフラ出来ないでしょ」
「うーん そうか そうすると 家に帰るとバタンキューですか」
「その前にお風呂に入りますよ ちゃんと」
「僕はバタンキューで 翌日シャワーですね」
話しながら歩いているとしゃれた造りのビルに着いた
エレベーターで最上階に降りると 目の前にガラスがあり
そこからの眺めは目を見張った
「ここって 少し怖いですね ほら下まで見えているし」
「そうですね エレベーターの前側 この広小路側が
全面ガラス張りに成っているので なれないと怖いかも」
「それで下から見上げた時に 人影が動いていたんですね」
「そうですよ よく見えるから スカートの格好で
このガラスのところに居ると 下から覗かれますよ ははは」
「まあ そうなんですか」
久保祥子はそう言うと ガラスから離れて神山の顔を見た
「大丈夫ですよ 夜だし 見えないですよ」
「まあ 神山さんの意地悪 ふふふ」
床にはタイルの張り分けでお店の名前が書かれていた
「神山さん『ビーンズ』って素敵なお店ですね」
「でも 豆類のことでしょ うーんって感じです」
「可愛らしくて いい名前よ」
「そうですか それでかな 女性客が多いのは」
「うーん あと美味しくてリーズナブルじゃないかしら」
「そうですね 確かにそんなに高くは無いですよ」
エントランス右側に店の入り口があり 神山が二人と伝えると
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