2010年7月22日木曜日

Vol.11 出会い -2-2

4月1日 水曜日 快晴

「倉さん すみません お時間作って頂いて」
「おう 筒井ちゃん水臭いな いいよ 困っている時はお互い様さ」

二人は銀座築地にある寿司屋いせ丸の奥座敷で話をしていた
倉さんこと倉元達也は 鈴や銀座店の催事課専門部長で
神山龍巳の上司になる
筒井は筒井健一といい ニーナ・ニーナジャパン東京本社の
ゼネラルマネージャーでニーナ・ニーナ東京支店の副社長を務める
久保祥子はこの筒井の下で勤務している

「どうでしょうか 神山君を少しの間 我が社に貸して頂けませんか」
「うーん で 上原の現場が終わったら銀座に戻れるんだね」
「ええ そのように考えていますが ただ来年のアウトレットの
話も持ち上がっているんですが なにしろ予算が少ないもので
パリ本社がお金を渋っているんです」
「おう あの御殿場の話か まだ先だろう」
「ええ 第3セクターで造る事になった話です」
「おう そうすると 上原が終わって暫くは銀座で その後は」
「そこなんですが 上原の後も引き続き見てもらいたいんです」
「おう 大変な話だな うーん どうしたものかな」
「それで考えているんですが 神山君の住まいを移したらどうかと」
「えっ だって横浜だろ 移しても時間的に変わらないだろ」
「今 うちの久保祥子が住んでいるマンシャンで空き部屋が
ありまして そこに神山君に住んで貰えば会社と現場に近いし
どうかなと思っているんです」
「おう そうすると二束の草鞋か、、、」
「ええ 現場まで10分足らずで 銀座にも30分です
今の横浜より全然通勤環境は良くなりますよ」       
「おう そんなに近いのか そうすると緊急時には来れるな」
「ええ 大丈夫です」
「部屋は押さえてあるのか」
「ええ 日割りで押さえてあります」
「上原の施工業者はどこだ」
「ええ 株式会社アルタです 御殿場もアルタでお願いしています」
「そうか そうするとアルタにも一枚噛んでもらった方がいいかな」 
「一応 佐藤部長には話はしてあるんですよ」
「おうおう 手回しがいいな ははは」
「アルタでも 横浜の件があるので助かる話なんです」
「おう そうか 横浜も駅前が進んでいるからな うーん」

「おじゃまします」
ここいせ丸の特徴は 注文ききが無くお客のペースで
料理や呑み物が運ばれてくるようになっている
一見のお客は 入り口に近いテーブル席で食事をいただき
座敷は女将が許した人物だけしか利用できない
「少し 早かったかしら」
「おう 構わないよ そうだ日本酒をくれ」
「いいんですか まだお昼ですよ」
「おう 今日は構わない どうせ客も少ないし ははは」
「ねえ 4月1日で水曜日で営業ですものね ははは」
「おう 休めないよ まったく」
「はいはい お持ちいたしますよ」
女将は盆から鮮魚の握りを置いていくと 丁寧に襖を閉めた

「ははは エイプリルフールで営業だよ筒井ちゃん 参っちゃうな」
「人事発令でしょ 仕方ないですね お祭りですから」
「おう 今年は山ちゃんが専門9等級かと思ったけれどなんなかった」
「来年でしょ でも抜群に早いですよ 同期でトップでしょ」
「おう そうらしいな 俺たちはデザインしてなんぼの世界だが
かといって同期でどんけつじゃ嫌だしな
でも 山ちゃんのデザインはいつも目を見張るものがあるよ」
「そうでしょ 私も以前話しをしたときに 感じましたよ
こちらの要望を的確に表現してくれましたからね」
「おう だから 余計に銀座店が出すかどうかだ」
「そうか うーん 何とかして貰わないと 潰れますよ」
「おう その久保祥子って子は あの可愛いお嬢さんだろ」
「ええ 社内でぴか一の女性ですよ」
「その子は図面とか 読めないのか」
「ええ 数字とか外国語とかは大丈夫ですが 図面は無理ですね」
「そうか、、、」
「倉さん それにニーナ・ニーナの店舗は今まで店内ばかりですが
今回の上原は外光が差し込むところなんですよ





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