2010年7月16日金曜日

Vol.3 出会い -1-1

「ねえ 神山さん 一昨日って歓送迎会でしたでしょ」
「うん よく知っているね」
「勿論ですよ 神山さんの事はなんでも分かりますよ」
神山は久保祥子が言っている意味が分からなかった
(銀座店の内情がなぜ分かるんだろう、、、)
暫く考えていると 先ほどのスタッフが生ビールとおつまみを
運んできて 各人の前にジョッキを置いた
「さあ 上野のお山に乾杯しましょう かんぱーい」
神山の音頭で乾杯しみんなのジョッキがカチンと響いた
「さあ 遠慮しないでガンガン呑んでね」
「わぁー 嬉しいけれど おトイレが近くなるし ねぇ先輩」
「そうよ 呑むのはいいけれど おトイレはね」
「まあ そう言わずにガンガン行きましょうよ」
神山たち4人は すぐに生ビールを呑みほすと焼酎を頼んだ

今度は可愛い女の子が焼酎1本と氷と水 グレープフルーツを
運んできて 大きなグラスをテーブルに置いて戻っていった
グレープフルーツは半分にカットされていて
自分たちで絞ってグラスに入れるようになっていた
「だから ここはいいのよね 天然だから」
「そうそう 他のお店だと何を入れられているか分からないもの」
浜野由貴と林恵美が口を揃えて 神山に話していた
神山が浜野と林の分を絞ってグラスに入れると
「神山さんって 優しいんですね」
林が目をキラキラさせて 神山を見ながら言った
「いやいや このぐらい ほら多少でも力仕事でしょ」
隣に座っている久保祥子はクスクス笑いながら
「多少は力仕事でも 私たちだって出来ますよ ふふふ」
そう言うと 久保祥子は神山の為に果実を絞り
大きなグラスに焼酎と氷を入れて 果実を注いだ
「はい どうぞ」
「いやぁー 参った 女性でも出来るんだ これまた失礼」
3人の女性は神山龍巳のおどけた仕草に大笑いした   

グレープフルーツが無くなると神山は可愛い女の子を呼んで
「これが無くなったから もう少し持ってきてくれるかな」
「お幾つ持って来ればよろしいですか?」
「うーん そうしたらあと4切れ持ってきてくれるかな」
「はい かしこまりました 少々お待ちくださいませ」
そう言うと 丁寧にお辞儀をして 厨房へ戻っていった
「随分と訓練されているね 気持ちがいいね」
「そうですね 普段接客をしているから余計に感じますね」
久保祥子は神山の横顔をじっと見つめて話していた
神山が焼酎を呑み終わると グレープフルーツの果実を絞り
自分のグラスに注いでいると浜野由貴が
「あのー神山さん グレープフルーツって酸が 
強いから程ほどにされたほうがいいですよ」
「ほぉー そうなんだ」
「ええ 私 大学の時 フランスへ留学した時に
アルバイトで グレープフルーツを売っていたんですよ
ほら 色々と勉強するのにお金が足りないでしょ だから、、、」
「偉いね 留学してアルバイトか それで」
「ええ 毎日グレープフルーツの果実を絞っていると手が
ツルツルになってきたんです」
「へぇーそんなに強いのか でもお肌に良いと言われているよね」
「それでも毎日顔にじかに付けていると 肌荒れを起こしますよ」
「そうなんだ いやぁー 初耳だよ 気をつけよう」
「だから余り大量に飲まないほうがいいですよ」
「そうだね ありがとう」
神山は浜野に言われてからは 果実を半分にして焼酎を呑んだ

おつまみも半分くらい食べると林恵美がおトイレに行った
それを合図に浜野由貴も一緒におトイレに向かった
「ははは 女性のつれしょんか」
「まあ 神山さんたら 変な事言わないでくださいよ ふふふ」
神山は時計を見ると 22時を回っていたが
最終電車にはまだ充分に時間があるのでゆっくりしていた

「いかがですか 銀座の催事課は」
「ええ 上野より楽しいですよ なにしろ宣伝課と仲がいいし」
「そうですね 上野より銀座のほうが連絡が取れていますし
私たちも銀座のほうが お仕事はしやすいですよ」
「そうですか では機会があったらそれとなく上野に話しますよ」